MOVIX京都で「モンスター・ハウス」(字幕版)
化け物屋敷を舞台にした、フルCGのアドベンチャー。
だが予告は、製作総指揮を務める、
ロバート・ゼメキス、スティーヴン・スピルバーグが
延々とこの映画の魅力を語る、という異色の構成。
驚きの映像アドベンチャーをあえて隠したのか、
それとも、このビッグネーム2人しか魅力がないのか…
ちょっと不安を抱えつつ、劇場に向かう。
郊外の住宅地に住む12歳のDJの日課は、
立ち入ったものを恐怖に陥れる、向かいのネバークラッカー家の監視。
ある日、親友チャウダーと遊んでいたDJは、
トラブルの果てに、ネバークラッカー氏を病院送りにしてしまう。
だが、主を失った屋敷には、何か奇妙な秘密が隠されていた−
正直言って、ことし最初の(といってもまだ3本目だが…)駄作だ。
街のお化け屋敷に挑む少年少女の物語は、
子どもたちの勇気や成長といったポジティブな内容以上に、
子供特有の邪悪さ、無神経さが際立つ、バランスの悪い作品に思えた。
何がいけないって、中途半端に哀切のドラマを詰め込んだ点だ。
ネバークラッカー、そしてお化け屋敷のサイドストーリーは、
かなりキツめで、切ない話題にも関わらず、
子どもたちは無邪気なぐらいに無神経に、その繊細な問題を踏みにじる。
当然のように描かれる無理矢理なハッピーエンドは、
安堵感よりむしろ、独り善がりな正義や道徳観を押しつけられる感覚だ。
おどろおどろしさ、という点でいうと、
お化け屋敷、化け物屋敷ならではの不気味さを漂わせる序盤は悪くない。
だが、問題は中盤以降、クライマックスまでの大雑把な展開だ。
大がかりなクライマックスをすべて否定する気はないが、
序盤で積み上げた雰囲気はぶち壊し、最後のオチには、失笑を禁じ得ない
子ども向け映画にそうムキにならなくても、という意見もあるだろう。
だが、子供向け映画だからこそ、もっともっと繊細に、ていねいに作って欲しい。
近年のアニメの例にもれず、声の出演陣はなかなか豪華だ。
「ゴーストワールド」「ファーゴ」のスティーヴ・ブシェーミ、
「ワールドトレードセンター」「セクレタリー」のマギー・ギレンホール、
「あの頃ペニー・レインと」「オトコのキモチ♂」のジェイソン・リー、
「女と男の名誉」「ペギー・スーの結婚」のキャスリーン・ターナーに
「ホーム・アローン」シリーズ「ドッグ・ショウ」キャスリーン・オハラ…
ただ、どれも脇を固める大人たちとあって、あくまで添え物的な部分は否定できない。
CGについても、リアルな動き、そして質感は、これまでにないレベルだ。
何でも、モーションキャプチャーを用いて、実際の動きをアニメで再現したとか。
しかし、それって本当に必要だろうか?
ただ単に、現実をCGに転換しただけのリアルさを追求したいなら、実写で十分。
アニメならでは、のオリジナルな表現が観たいからこそ、アニメを観るのだ。
もちろん、モーションキャプチャーを否定する気はないが、
それだけに頼ったような作品では、作品そのものの必然性も問われることになる。
アニメならではの洒落っ気も少々不足気味で、
たった90分がこれほど退屈に感じられるのも珍しい。
白けた気持ちで時間が過ぎるのを待つだけだった。
スピルバーグ、ゼメキスの名前に惹かれて観に行くと、とんだ失望を味わうことになる。