梅田・三番街シネマで「オープン・シーズン」

mike-cat2006-12-19



〝この森が、ボクを大人にしてくれた。
 ペットのクマ、ブーグが繰り広げる、愛と友情と感動の物語。〟
ソニー・ピクチャーズが贈る初のフルCGアニメーションが登場。
と思ったら、ほとんどの劇場が公開1週目で字幕版打ち切り。
2週目で字幕版やってるのは、大阪ではここだけ、という体たらくだ。
評判の方も、どうにもその…、のようだが、まあ観てみることにする。


ブーグは幼い頃から、パークレンジャーのベスに育てられたペットの熊。
ショーで芸を見せながら、楽しく過ごす毎日に満足していたブーグだったが、
ある日出会ったお調子者の鹿、エリオットにそそのかされ、町で羽目を外してしまう。
森に帰されてしまったブーグは、ベスのもとへ帰るべく、町を目指す。
だが、森にはオープン・シーズン(狩猟解禁期)が迫っていた−


温もりに包まれたベスのもとから、厳しい自然に森へ。
人間界での暮らしに慣れたブーグが悪戦苦闘する姿や、
ベスとブーグの親離れ、子離れといった要素に加え、
トラブルメーカーのエリオットとのバディ・ムービーの側面を持つ作品だ。
予告で観る限りは、なかなかシンプルだが、ひょっとすると…の予感もあった。


しかし、この作品の印象はひとことでいうと〝習作〟。
マーティン・ローレンス(「バッド・ボーイズ」)が声を演じるブーグと、
アシュトン・カッチャー(「バタフライ・エフェクト」)のエリオットの掛け合いや、
ゲイリー・シニーズ(「フォレスト・ガンプ」)らの声の演技はなかなか楽しい。
そんな、ひとつひとつの場面だけを取り上げてみれば、そう悪くないのだが、
作品全体で観てみると、とりあえず作ってみました、という域を越えない。
こんな要素とこんな要素にこんな味つけしたら映画になるだろ? みたいな、
ある意味やっつけ仕事的な部分が、ところどころにかいま見えてしまうのだ。


ウサギやビーバー、リスなど、いわゆる小動物の扱いも微妙。
かわいくないのは、別に構わない。
しかし、小憎らしくもない、えらく平凡な描写には、戸惑いすら感じる。
こういうサブキャラクターこそ、こういったアニメの盛り上がりには不可欠なのに…


森の動物とハンターたちの対決も、通り一遍に過ぎる印象だ。
折しも日本では、自然破壊のために、
熊が人里に下りてきて、トラブルを巻き起こしているケースが増えている。
さまざまな問題があるし、ひとことで片付けられないはずだが、この作品は何も掘り下げない。
同じ題材で「森のリトル・ギャング」がことし公開されたが、
あちらは、無邪気さの中にも一本スジの通った主張があったかと思う。
この映画から見えるのは、〝ハンターは醜悪〟という説明不足な一方的メッセージだけだ。
そんな部分でも、どこか配慮に欠けた作品であると言わざるを得ない。


もちろん、いわゆる実写映画になら、そういう映画は少なくない。
というか、かなり多いといっても、そう語弊はないだろう。
だが、ことアニメに限ってしまうと、
ピクサーやドリームワークスの気合いの入った作品を見慣れているだけに、
この映画のやっつけぶりが、どうにも目立ってしまうのが残念でならない。


ただ、動物のダイナミックな動きや毛の質感、
森や川などの自然描写については、なかなかに見せる作品。
今後、物語のクオリティさえ上げていけば、十分期待はできると思う。
まあ、ピクサーとドリームワークスの牙城に迫るには、まだまだ時間はかかるだろうが…