渋谷シネマライズで「こま撮りえいが こまねこ」

mike-cat2006-12-11



同劇場で予告編とともに上映されていた、
こまねこが、ついに映画として登場!
〝おもちゃ箱につまった
 大切なおもちゃのような5つのお話〟
どーもくん合田経郎による、こま撮り映画。
「はじめのいっぽ」「こまとラジボー」
「ほんとうのともだち」の3編に、
半立体アニメーションの「カメラのれんしゅう」
「ラジボーのたたかい」の計5編。
くまみたいな容貌のねこ〝こまねこ〟の愛くるしい日常が描かれる。


ひとこまで1/124秒。それをこつこつと積み上げ、
1日で数秒分しか撮影できないというストップ・モーションの世界。
手作りのぬいぐるみで作りあげるその世界は、温もりのある質感を醸し出し、
優しい手触りに包まれた世界に観るものを誘い出す。
お気に入りの毛布に包まれた、不思議な安堵感、
もう戻れない、子供の頃のあの日に帰ったかのような郷愁を感じる作品だ。

「はじめのいっぽ」では、お気に入りのお手製ぬいぐるみで、
こま撮りえいがを撮るこまねこ、という劇中劇的な楽しさも味わえる。
人形ちゃんたちの見つめる瞳の優しさ、ちょっと困った表情のかわいさ…
お気に入りの絵本「くまくまちゃん (のほほん絵本館)」みたいに、
子供の頃に大事にしていた絵本を思い出すようで、懐かしい涙が自然とこぼれる。


ちょきちょきと工作する姿や、お絵描き、
そして、おともだちと作り出した、ぬいぐるみたちの王国、
かばんを抱えてお外に飛び出し、無邪気に遊ぶこまちゃん…
何で涙が出るんだろう。
すべてが純真無垢だったわけではないけど、
何だか幸福感に満ちていたあの頃へ、幼児退行してしまうような感覚になる。


「ものづくりの楽しさ」もテーマにした作品には、
遊び心と童心に満ちたギミックもあふれている。
メガネねこのラジボーが取り出すロボットや、
ラジオの修理に訪れたラジボーパパのドライバーセット。
映画監督らしい、おじいの傍らにあるオスカー像もどき(ニャカデミー賞!?)。
どれもが、〝昭和の時代〟のてづくり感を存分に味わわせてくれる。
ある場面で、そっと〝うさじい〟も登場するので、お見逃しなく。


日本語は話さない、こまねこの「にゃー!」も最高だ。
「にゃにゃ?」「にゃー!」「にゃっ、にゃっ」
こんなねこ語の中には、たくさんの感情が込められている。
オーディションで選ばれた、瀧澤京香ちゃんという子役によるものだとか。
いわゆる声優による演技には、決して出せない味である。
(アニメの世界においては、それはそれでいいのだが…)


ぬいぐるみによる3編だけでなく、
ガラス板の上で展開される、半立体アニメーションの2編もこれまた味わい深い。
何でも、ヨーロッパではよく使われる手法らしい。
立体と半立体で多少イメージは異なるが、世界観は同じ。
こまねこやラジボーの活躍が、ほのぼのと、そしてちょっと可笑しく楽しめる。


そんなわけで、ほのぼの&ほぼ泣き通しの60分間。
完全にツボに入ってしまった感がある。
こころの琴線に触れるか触れないかは、人によってかなり違うだろうが、
この懐かしさや温もりは、誰もが感じるんじゃないだろうか。
DVDが出ても、間違いなく〝買い〟の1本。

劇場の階段に飾られた「こまねこinクリスマス」
に再び癒やされながら、劇場を後にしたのだった。