赤目四十八瀧紅葉めぐり。

mike-cat2006-11-28



ようやく紅葉シーズン到来、と思っていたら、
前週末の雨風で、紅葉的にはだいぶ被害も出ている様子。
Webの情報ではまだ〝見ごろ〟表示も多いが、
早くも色あせや落葉など、刻々と変化はあるようだ。


というわけで、雨もおさまったこの日、
向かったのは赤目四十八滝
そう、車谷長吉の大傑作「赤目四十八瀧心中未遂」のアレである。
世間的には寺島しのぶ主演の映画の方がもちろん有名だし、
赤目滝入り口の土産屋に飾ってある写真も、もちろん女優の方だ。
まあ、あの坊主頭のオッさんの写真を飾るのもかなり微妙だろうが…
ついでにいうと、映画も小説も舞台はほとんど尼崎が中心で、
赤目四十八滝が登場するのは、クライマックスだけだったりもするのだが。
ちなみに四十八滝、というのも四十八手なんかと一緒で本当に48はない。


そんなどうでもいいことはともかく、近鉄上本町から急行で1時間強。
長谷寺室生寺近辺の山々の紅葉を車窓から楽しみつつ、
奈良を越え、ついに三重県名張の手前の「赤目口」で下車。
ホームから望む山並みも見事のひとことだ。
バスに揺られ、約10分で、鄙びた温泉町のような赤目滝入り口に到着する。


入山料300円を払い、否応なく日本サンショウウオセンターへ突入。

そういえば図鑑でしか見た記憶がない大山椒魚の実物に遭遇する。
背中のグロテスクなひだひだに、なかなかの寒けを覚えていよいよ出発だ。


マイナスイオンにあふれた渓谷沿いの道を歩いていく、
地図によればまずは「行者滝」「銚子滝」と登場することになっている。
が、よくわからない。
標識がいまいち投げやりな位置にあったりして、
いくつか判別がおぼつかないのが、何とももどかしくもある。
ちなみに、行者滝だと思い込んで撮った滝は「霊蛇滝」。

〝霊蛇滝の名は白蛇が岩をよじ登る趣があり、
 滝の流れの中に顔を出す岩が竜の爪痕を思わせる〟そうだが、
星座なんかと一緒で微妙にこじつけっぽくて、笑ってしまう部分も否定できない。


険しい岩をよじ登り、ずいずいと進むと、
今度は四十八滝を代表する「赤目五瀑」第1弾の「不動滝」が登場。

高さ15メートル、幅7メートルのダイナミックな滝に思わずほれぼれ。
何でも不動明王に由来するネーミングだとか。これは何となく納得かも。


これまた判別しづらい「乙女滝」「大日滝」などを越えると、

遠い山並みに広がる紅葉や、

一面の黄色いもみじの絨毯など、秋らしい光景も楽しめる。


さて、出ました「赤目五瀑」パート2、「千手滝」だ。

こちらは岩を伝う水がまるで千手観音のように広がるのが特徴。
高さは15メートル、滝つぼは何でも深さ20メートルにも達するとか。


続いての「赤目五瀑」は「布曳滝」。

高さ30メートルから、まるで布をかけたかのような白い流れが落ちていく。
再び岩場を昇り降りすると、上からもその姿が拝めるが、これまた見事である。


布曳滝に流れ込む、龍が住んでいるという「竜ヶ壺」は、
赤目四十八瀧心中未遂」の主人公〝私〟が、死ぬならここ、と見定めた場所。
さらに、名前通り斧に似た形の「斧ヶ渕」を越えると、
「縋藤滝」というのがあるはずだが、どうにも水量の関係かよく判別できず。
陽が滝、影が壺を表すという「陰陽滝」も、それほどダイナミックには見えない。
そして本日の「ガッカリ大賞」が「百畳岩」だろうか。
茶店の俗っぽいムードに呑み込まれ、その迫力も美しさも伝わってこない。


茶店の前を過ぎると、次に見えるのは、
松、樅、楓、桜、赤木、梅もどき、躑躅の7種類が自生するという「七色岩」。
その先には「姉妹滝」「柿窪滝」と続く。
何でもこの滝壺を柿に見立てたらしいが、その創造力たるやあっぱれだ。

「柿窪滝」周辺にきて、確信できたのは、
どうにも紅葉のベストシーズンはもう過ぎてしまったということ。
「紅葉の絨毯もまたオツ」と喜んでみても、負け惜しみ感は否めない。


「横渕」に流れ込む「笄滝」は、角度的に遊歩道からはよく見えない。
気を取り直して進むと、傍らの崖から滴が落ちてくる「雨降滝」が現れる。

何でも夏とかには虹とかも見えるらしい。機会があれば、ぜひ見てみたいものだ。


「骸骨滝」「斜滝」を軽く流し、ひさびさの「赤目五瀑」は「荷担滝」

巨岩をはさんでふたつに分かれる水の流れが、
荷を背負っている様子にたとえ、荷担(にない)と名付けたという。
渓谷随一の景観との評判はもっとも。個人的にも滝・オブ・ザ・デイだ。


どうにも地味っぽい「夫婦滝」に続いて、「雛段滝」が見えてくる。

こちらはなかなか名前の通り。雛壇を思わせる滝の様子がなかなか素敵。


琴の音色が聞こえてくるという「琴滝」に耳を澄まし、
「赤目五瀑」の最後の登場となるのは「琵琶滝」である。

高さは15メートル。絶壁に囲まれた岩風呂のような滝壺が、
琵琶に似ていることからこの名前がついたとか。
こちらもさすが、荷担滝に匹敵する美しさだったりする。


この後、「厳窟滝」というのもあるらしいが、ここまで約1時間半。
この後の道もだいぶ険しそうなのでパスし、来た道を戻ることにする。
微妙にきつい感じはするものの、往路では気付かなかった光景も楽しい。
もみじ狩りも楽しもうと、こんどは足元も注視するが、
なかなかきれいな葉は見つからないのは、やっぱり前週末の雨のせい?


赤目五瀑の見事さに再びうなり、サンショウウオセンターに到着。
お腹も減ってきたので、土産物店でまずは名物「へこきまんじゅう」を購入。

鯛焼き系の生地にサツマ芋とリンゴの餡。
シナモンをほのかに効かせたその味は、
「へこき〜」の名がもったいない美味しさだ。
繊維質に引っ掛けているのはもちろん承知だが、名前は大事にしないと…


ちょっと食べたら余計おなかが減ったので、会席料理の「赤もみじ」へ。

「伊賀牛の白みそ煮込み伊賀流鍋御膳」と、

「伊賀牛の朴葉焼御膳」を頂くことにする。


調理済みが出てくるかと思ったら、どちらも固形燃料で登場。
微妙に火力不足の不安を抱きつつ、箸をつける。
味的にはまずまず、という感じ。
どちらかというと、白みそ煮込みが美味しいかも。
しかし、2800円、2600円という値段を考えると、まあ微妙なところか。
一番左の数字が「1」だったら、満足といいたいところでもあるのだが…


帰りはバスまで時間があるので、タクシーで近鉄赤目口へ向かう。
駅に着いたと同時に、上本町行きの急行が到着する。
再び車窓から、薄闇に包まれた山の紅葉を楽しみつつ大阪へ。
紅葉そのものは見ごろを逃したが、滝だけでも十分楽しいミニトリップとなった。