赤目四十八瀧紅葉めぐり。
ようやく紅葉シーズン到来、と思っていたら、
前週末の雨風で、紅葉的にはだいぶ被害も出ている様子。
Webの情報ではまだ〝見ごろ〟表示も多いが、
早くも色あせや落葉など、刻々と変化はあるようだ。
というわけで、雨もおさまったこの日、
向かったのは赤目四十八滝。
そう、車谷長吉の大傑作「赤目四十八瀧心中未遂」のアレである。
世間的には寺島しのぶ主演の映画の方がもちろん有名だし、
赤目滝入り口の土産屋に飾ってある写真も、もちろん女優の方だ。
まあ、あの坊主頭のオッさんの写真を飾るのもかなり微妙だろうが…
ついでにいうと、映画も小説も舞台はほとんど尼崎が中心で、
赤目四十八滝が登場するのは、クライマックスだけだったりもするのだが。
ちなみに四十八滝、というのも四十八手なんかと一緒で本当に48はない。
そんなどうでもいいことはともかく、近鉄上本町から急行で1時間強。
長谷寺や室生寺近辺の山々の紅葉を車窓から楽しみつつ、
奈良を越え、ついに三重県は名張の手前の「赤目口」で下車。
ホームから望む山並みも見事のひとことだ。
バスに揺られ、約10分で、鄙びた温泉町のような赤目滝入り口に到着する。
入山料300円を払い、否応なく日本サンショウウオセンターへ突入。
そういえば図鑑でしか見た記憶がない大山椒魚の実物に遭遇する。
背中のグロテスクなひだひだに、なかなかの寒けを覚えていよいよ出発だ。
マイナスイオンにあふれた渓谷沿いの道を歩いていく、
地図によればまずは「行者滝」「銚子滝」と登場することになっている。
が、よくわからない。
標識がいまいち投げやりな位置にあったりして、
いくつか判別がおぼつかないのが、何とももどかしくもある。
ちなみに、行者滝だと思い込んで撮った滝は「霊蛇滝」。
〝霊蛇滝の名は白蛇が岩をよじ登る趣があり、
滝の流れの中に顔を出す岩が竜の爪痕を思わせる〟そうだが、
星座なんかと一緒で微妙にこじつけっぽくて、笑ってしまう部分も否定できない。
険しい岩をよじ登り、ずいずいと進むと、
今度は四十八滝を代表する「赤目五瀑」第1弾の「不動滝」が登場。
高さ15メートル、幅7メートルのダイナミックな滝に思わずほれぼれ。
何でも不動明王に由来するネーミングだとか。これは何となく納得かも。
これまた判別しづらい「乙女滝」「大日滝」などを越えると、
遠い山並みに広がる紅葉や、
一面の黄色いもみじの絨毯など、秋らしい光景も楽しめる。
さて、出ました「赤目五瀑」パート2、「千手滝」だ。
こちらは岩を伝う水がまるで千手観音のように広がるのが特徴。
高さは15メートル、滝つぼは何でも深さ20メートルにも達するとか。
続いての「赤目五瀑」は「布曳滝」。
高さ30メートルから、まるで布をかけたかのような白い流れが落ちていく。
再び岩場を昇り降りすると、上からもその姿が拝めるが、これまた見事である。
布曳滝に流れ込む、龍が住んでいるという「竜ヶ壺」は、
「赤目四十八瀧心中未遂」の主人公〝私〟が、死ぬならここ、と見定めた場所。
さらに、名前通り斧に似た形の「斧ヶ渕」を越えると、
「縋藤滝」というのがあるはずだが、どうにも水量の関係かよく判別できず。
陽が滝、影が壺を表すという「陰陽滝」も、それほどダイナミックには見えない。
そして本日の「ガッカリ大賞」が「百畳岩」だろうか。
茶店の俗っぽいムードに呑み込まれ、その迫力も美しさも伝わってこない。
茶店の前を過ぎると、次に見えるのは、
松、樅、楓、桜、赤木、梅もどき、躑躅の7種類が自生するという「七色岩」。
その先には「姉妹滝」「柿窪滝」と続く。
何でもこの滝壺を柿に見立てたらしいが、その創造力たるやあっぱれだ。
「柿窪滝」周辺にきて、確信できたのは、
どうにも紅葉のベストシーズンはもう過ぎてしまったということ。
「紅葉の絨毯もまたオツ」と喜んでみても、負け惜しみ感は否めない。
「横渕」に流れ込む「笄滝」は、角度的に遊歩道からはよく見えない。
気を取り直して進むと、傍らの崖から滴が落ちてくる「雨降滝」が現れる。
何でも夏とかには虹とかも見えるらしい。機会があれば、ぜひ見てみたいものだ。
「骸骨滝」「斜滝」を軽く流し、ひさびさの「赤目五瀑」は「荷担滝」
巨岩をはさんでふたつに分かれる水の流れが、
荷を背負っている様子にたとえ、荷担(にない)と名付けたという。
渓谷随一の景観との評判はもっとも。個人的にも滝・オブ・ザ・デイだ。
どうにも地味っぽい「夫婦滝」に続いて、「雛段滝」が見えてくる。
こちらはなかなか名前の通り。雛壇を思わせる滝の様子がなかなか素敵。
琴の音色が聞こえてくるという「琴滝」に耳を澄まし、
「赤目五瀑」の最後の登場となるのは「琵琶滝」である。
高さは15メートル。絶壁に囲まれた岩風呂のような滝壺が、
琵琶に似ていることからこの名前がついたとか。
こちらもさすが、荷担滝に匹敵する美しさだったりする。
この後、「厳窟滝」というのもあるらしいが、ここまで約1時間半。
この後の道もだいぶ険しそうなのでパスし、来た道を戻ることにする。
微妙にきつい感じはするものの、往路では気付かなかった光景も楽しい。
もみじ狩りも楽しもうと、こんどは足元も注視するが、
なかなかきれいな葉は見つからないのは、やっぱり前週末の雨のせい?
赤目五瀑の見事さに再びうなり、サンショウウオセンターに到着。
お腹も減ってきたので、土産物店でまずは名物「へこきまんじゅう」を購入。
鯛焼き系の生地にサツマ芋とリンゴの餡。
シナモンをほのかに効かせたその味は、
「へこき〜」の名がもったいない美味しさだ。
繊維質に引っ掛けているのはもちろん承知だが、名前は大事にしないと…
ちょっと食べたら余計おなかが減ったので、会席料理の「赤もみじ」へ。
「伊賀牛の白みそ煮込み伊賀流鍋御膳」と、
「伊賀牛の朴葉焼御膳」を頂くことにする。
調理済みが出てくるかと思ったら、どちらも固形燃料で登場。
微妙に火力不足の不安を抱きつつ、箸をつける。
味的にはまずまず、という感じ。
どちらかというと、白みそ煮込みが美味しいかも。
しかし、2800円、2600円という値段を考えると、まあ微妙なところか。
一番左の数字が「1」だったら、満足といいたいところでもあるのだが…
帰りはバスまで時間があるので、タクシーで近鉄赤目口へ向かう。
駅に着いたと同時に、上本町行きの急行が到着する。
再び車窓から、薄闇に包まれた山の紅葉を楽しみつつ大阪へ。
紅葉そのものは見ごろを逃したが、滝だけでも十分楽しいミニトリップとなった。