テアトル梅田で「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?」

mike-cat2006-11-27



〝今世紀最大の
 企業スキャンダルを暴く
 衝撃のドキュメンタリー!!〟
2001年、当時史上最大の負債総額を抱え、破綻した、
エンロンのスキャンダルを取り上げたドキュメンタリー。
社員たちの証言で明らかになる、その驚くべき実態とは?


「赤い航路」のピーター・コヨーテのナレーションで語られる、
エンロンの巧妙にして大胆な手口には、呆れるを通り越してしまう。
スキャンダル発覚以降、批判の矢面に立たされた創業者ケン・レイや、
カリスマCEOのジェフ・スキリング、CFOのアンドリュー・ファストウだけでなない。
倫理観の欠片すら持たないトレーダーや分析能力ゼロのアナリストたち、
不正を承知していながらそれに手を貸した会計事務所、弁護士事務所、そして銀行。
もちろん、親密な関係を築いてたジョージ・W・ブッシュ大統領を含め、
詐欺まがい、ではなく、詐欺そのものの手法で世間を欺き、
さまざまな人たちからカネをかすめ取っていくその姿は、醜悪を通り越している。
もちろん、新時代の旗手としてエンロンを持て囃したメディアも、ある意味共犯だ。


粉飾虚飾にまみれたその企業会計に加え、
遠い将来の利益まで算出した「時価会計」など、
あのライブドアを思わせるさまざまな錬金術に加え、
カリフォルニア電力危機を巻き起こしてまでカネを稼ぐ、そのやり口にはもう絶句。
倫理観のない天才の恐ろしさに、ひたすら感心してしまうほどだ。


そんな連中を描く映画の視点は、日本のマスコミにありがちな、
チャイルディッシュな正義感にあふれたヒステリーとは一線を画している。
インタビューやニュース映像に、ユーモアとウィット、そして皮肉を味つけした構成、
エンロンの宣伝コピー〝Ask Why〟に引っ掛け、
「なぜエンロンはこんなことができたのか?」を追求していく流れは、
メッセージの説得力だけでなく、娯楽作品としてのクオリティの高さも合わせ持つ。


複雑怪奇な金儲けの仕組みや専門用語も、
わかりやすく解説している。(これは翻訳・字幕担当の実力もあるのだろうが…)
エンロンのスキャンダルについてはおぼろげにしか知らなかったが、
それでもまったく戸惑うことなく映画についていけることに、正直驚いてもいる。


レイやスキリングら当事者だけに限らず、
あのブッシュら不当な金儲けに明け暮れた連中が、
相応の報いを受けていないことを考えると、複雑な想いもよぎる。
不当に稼いだはずのカネでやり手の弁護士を雇い、
のらりくらりと司法の追及をかわし、犯した罪の半分も償わない連中の姿を見ると、
何をしたって結局、世の中カネを手にしたヤツが勝ち、という、
当たり前にして虚しい現実をあらためて突きつけられたような気もする。
まあそれは、映画のせいじゃないのだから、責めてみてもしかたがないのだが…