シネマート心斎橋で「2番目のキス」

mike-cat2006-11-06



東京より約4カ月遅れで、ようやっとの大阪公開。
ウェディング・シンガー」のドリュー・バリモア最新作、である。
仕事中毒の女と、スポーツ狂の男による、ラブ・コメディ。
まさにドリューの独壇場ともいえるような、そんなジャンルだろう。


物語の舞台は、東部ボストン。
コンサルタント業で頭角を現しているリンジー=バリモアは、
数学教師のベン=ジミー・ファロン(TAXY NY)と、出会った。
稼ぎは少ないけど、チャーミングなベンに惹かれ、交際を始めるふたり。
だが、ベンにはとんでもない秘密があった。
実はこのベン、熱狂的なボストン・レッドソックスのファンだったのだ−


原作は「アバウト・ア・ボーイ」「ハイ・フィデリティ」と、
どれも質の高い作品の原作を手がけたニック・ホーンビィ
コリン・ファース主演でも映画化された、「ぼくのプレミア・ライフ (新潮文庫)」だ。
原作では、サッカーのイングランド・プレミアリーグアーセナルだが、
こちらは、自虐的で熱狂的なファンが多いことで知られる、米大リーグの名門チーム。
バンビーノ(ベーブ・ルース)の呪いに取りつかれ、
一世紀近くもワールド・シリーズ制覇から遠ざかっていた、
そんなダメチームの86年ぶりの栄冠に隠された、ふたりの恋愛模様が描かれていく。


スポーツ・ファンは洋の東西を問わず、
寝ても覚めても、みたいな手合いも多いのだが、ベンもその典型。
原作のアーセナルなら、まだ週にだいたい1試合だが、
野球ファンとなれば、夏場はほぼ毎日ゲームが行われてしまう。
揚げ句の果てにこのベンときたら、プラチナ中のプラチナでもある、
フェンウェイ・パークのシーズン・チケットを持っているのだから、ある意味始末が悪い。


パーティーのお誘いでも、家族との集いでも、
まずは試合スケジュールとにらめっこしてから、という次第。
宿敵のヤンキース戦にいたっては、はずせないことが前提となっているのだ。
そんな男とつき合うには、相当な覚悟がいるはずだが、
リンジーは最初、安請け合いして「熱中できるあなたが好き」なんていってしまう。
そこから、リンジーの果てしない苦悩は始まっていく。


物語は、そんなスポーツ・ファンの熱さと滑稽さが、
恋愛と両立していくのか、なかなか興味深いテーマに沿って進んでいく。
アメリカン・フットボールのシーズンになると、
毎週末〝フットボール・ウィドウ(未亡人)〟が生まれるというお国柄だけあって、
そんな苦悩は女性ならお馴染みなのだろう、
さまざまな「そうそう、そうなのよ」的なエピソードが、笑いを誘うのだ。


監督は「メリーに首ったけ」「愛しのローズマリー」のファレリー兄弟
いわゆるバカ映画でお馴染みの監督だが、今回はコメディ色はやや抑えめ。
要所要所に笑いを挟みながらも、ストーリー重視でふたりの恋を描いていく。
とはいっても、当代一のコメディエンヌ、土流親方と、
おバカなスポーツ・ファンの恋だから、真面目にやっててもおかしいことが多いのだが…


脚本は「シティ・スリッカーズ」「プリティ・リーグ」などを手がけた、
ローウェル・ガンツとババルー・マンデルのコンビ。
ストーリーそのものは、ありがちといえばありがちだが、
野球へのスタンスのバランス加減といい、
ふたりの関係を描いていくていねいな作りといい、なかなかに見せる作品だ。
ちょっと意外なラストの見せ場も気が利いていて、想像以上にお気に入り。
2004年のレッドソックスを覚えているファンなら、
それだけで熱くなるような場面も数多くあって、これまた泣かせる作品に仕上がっている。
もう12月にはDVDリリースというのが、
どうもふ腑に落ちない部分もあるのだが、それでもちょっと欲しい1本かも。