敷島シネポップで「ナチョ・リブレ 覆面の神様」

mike-cat2006-11-04



「愛しのローズマリー」「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラック最新作!
メキシコの南部オアハカの田舎町を舞台に、
孤児たちのため、ルチャ・リブレ(自由への戦い)に上がった、
愛すべきダメオトコの活躍を描く、ハートウォーミング・コメディだ。
監督・脚本は「バス男」(原題=NAPOLEON DYNAMITE)のジャレッド・ヘス
共同脚本は同じく「スクール・オブ・ロック」のマイク・ホワイトに、
バス男」のジェルージャ・ヘスという、組み合わせで送る。


戒律の厳しい修道院で孤児として育てられたイグナシオ〝ナチョ〟は、
成長した現在は修道院の料理番として、孤児たちを見守るファンキーなおデブ。
美貌のシスター、エンカルナシオンが赴任し、俄然やる気を出したナチョは、
修道院の食糧費を稼ぎ出すため、戒律で禁じられたルチャ・リブレに挑戦する。
〝ヤセ〟のスティーヴンとともに、情けない戦いぶりで人気が出たナチョだったが…


予告を観る限り、ドタバタのバカ・コメディという印象が強い作品だ。
「スクール〜」の時をはるかに越える、おバカ路線に期待もしていた。
しかし、肩透かしと言うのか、拍子抜けというのか、
率直にいうと、コメディより、コメディ風味の人情ものといった方が正確だろうか。
ジャック・ブラックの表情や動きはもちろん笑わせるのだが、
全体的には、笑いあり、涙あり、のかなりベタな〝いい話〟に仕上がっている。


正体不明のパートナー、スティーヴンを始め、
「ファーゴ」「アルマゲドン」のピーター・ストーメアや、
ナチョを敬愛するおデブな孤児チャンチョといった面々を見るにつけ、
思い出すのは「あしたのジョー」に登場するドヤ街の人々、という感じだ。
だから、そこかしこに散りばめたドタバタ場面にも、
どこかペーソスといった風情が漂い、何となくバカ笑いにはそぐわないのだ。


ただ、こういった感想はあくまで〝おバカ〟を期待したから感じる部分でもある。
始めからハートウォーミング・コメディ、として了解して観れば、
この作品、なかなかの佳作に仕上がっているんじゃないだろうか、とも思う。
メキシコの田舎町ののどかで猥雑な風景、
〝自由への戦い〟で何かを勝ち取るダメオトコ、ナチョの奮闘、
そしてそんなナチョを温かく見守る人たち…
思わず、涙がうるるとしてしまうような要素に満ちた作品ではあるのだ。


前述の通り、ブラックの豊かな才能もいい感じで発揮されている。
表情ひとつ、動きひとつで笑いが取れる、
天性のコメディアンとしてのジャック・ブラックを堪能するなら、
こうしたシンプルな映画こそが、もっとも適しているような気もする。
いろいろと不満っぽいことを書き並べてはみたが、
終わってみればやっぱり面白い、なかなか悪くない一本だったんじゃないだろうか。