北尾トロ「裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)」

mike-cat2006-10-20



裁判員制度前に必読!〟
「裏モノJAPAN」連載の「人生劇場」をまとめた、
ちょっぴり不謹慎な、興味本位の裁判傍聴記。
〝離婚、DV、強姦、詐欺、殺人、強制わいせつ…
 真にリアルな人間ドラマは、裁判所にある〟
名もない事件が裁かれる、その現場で垣間見る人生模様にうなる1冊だ。


裁判とは無縁の人生を送ってきたライターがふと耳にした、裁判傍聴のおもしろさ。
ナマナマしい人間ドラマをこの目で見てみたい、とばかりに東京地裁に足を運ぶと、
そこにはさまざまな人生ドラマが凝縮された形で展開されていた。
したり顔で裁判を語るマニアたちも含めた、知られざる世界−


できることなら、原告としても被告としても関わりたくないのが裁判だが、
あくまで傍観者として見た場合、やはり〝おもしろい〟ということになるのだろう。
女子高生の傍聴に力がこもる裁判官に、あきらかにやる気のない国選弁護人、
ダレまくりのオウム裁判の様子や、調停では解決できなかった離婚裁判の泥沼、
再犯間違いなし、が手に取るようにわかる性犯罪者たちの〝反省ぶり〟…
どうしようもない被告たちの、どうしようもない言い訳に情けない思いをしてみたり、
被告たちの顔つきから、事件の真相を想像してみたり、と、興味は尽きない。


裁判、と聞いて常に思うのは、現在の刑法制度の無力さである。
殺人を犯したって、5年やそこらで仮出所されてしまう、訳のわからない量刑や、
再犯防止にはまったく役に立っていない刑罰のあり方、
たとえ裁判で死刑判決が出ても、
事大主義の法務相が判を押さなければ執行されない、なし崩し的な事実上の減刑
やたらと時間とカネばかりがかかり、貧乏人にはとても勝ちが見込めないシステムなど、
笑ってばかりいられない問題を抱えているのが、何とも悲しくなる。
そうやって考えてみると、こういう興味本位の形でも、
〝国民の権利〟たる傍聴を実際に体験し、
裁判が抱える問題点を考えるのは大事なことかもしれない。


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裁判長!ここは懲役4年でどうすか
北尾 トロ著
文芸春秋 (2006.7)
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