道頓堀東映パラスで「16ブロック」

mike-cat2006-10-19



〝わずか16ブロック(区画)先に証人を護送する─。
  それは簡単な任務のはずだった…。〟
ダイ・ハード」「アルマゲドン」のブルース・ウィリスに、
リーサル・ウェポン」のリチャード・ドナー監督という、豪華な顔合わせで送る、
いかにも映画らしい楽しさにあふれる、正統派のアクション・エンタテインメント。


NY市警(NYPD)の刑事ジャック・モーズリーは夜勤明けのある朝、
ちょっとした手違いから、帰りがけに仕事を1つ、押しつけられる。
とはいっても、仕事は簡単そのもの。
署に収監されていた囚人エディを、16ブロック先の裁判所まで届けるだけ。
だが、警察の違法行為の証人でもあるエディは、密かに命を狙われていた。
エディをかばったジャックはいつしか、NYPDすべてを敵に回してしまう−


たった16ブロック先までの護送、しかし−、
というプロット以外は、比較的シンプルな作りの映画といっていい。
しかし、そこはさすが「オーメン(76年版)」「スーパーマン」などなど、
数々の傑作を生み出したベテラン・ヒットメイカー、リチャード・ドナーだ。
そこかしこに仕組まれる、ちょっとしたツイストを駆使し、
絶妙のアイデアに基づく物語を、小気味のいいテンポで展開させつつ、
人間ドラマをうまく織り込んでくる、という職人技的なテクニックを見せつける。


ブルース・ウィリス演じるジャック・モーズリーも、これまた絶妙だ。
すっかりくたびれ、アル中寸前という、ショボい中年刑事が、
事件を通じて、もう一度人生を見つめ直す、というまことに古典的な展開を、
ありふれたものに見せない、その演技力と存在感にはひたすら脱帽。
エディには「ミニミニ大作戦」「銀河ヒッチハイクガイド」のモス・デフ
悪徳刑事の親玉には近年ますます悪役がはまってきたデヴィッド・モース
こちらもある意味典型的な役柄のキャラクターたちを、
着実な演技で演じ上げ、物語の味わいをうまく深めてくれる。


いかにもなハッピーエンドも、
こうやって〝ちゃんと作った映画〟だと、思わず胸が熱くなってしまう。
映画への、そして作品への情熱が感じられる、上質の娯楽作品といえるだろう。
リチャード・ドナーブルース・ウィリスと聞いて、
「ちょっと時代遅れ?」と感じた人にも、ぜひに観て欲しい一本だと思う。
オールドファッションなことは間違いないが、
気の利いた逸品なら、それもよし、と思えること、請け合いの傑作だから…