シネリーブル梅田で「ハード・キャンディ」

mike-cat2006-10-04



赤ずきんが仕掛けるオオカミへのゲーム〟
オヤジ狩りに着想を得たという、話題の〝痛い〟映画が、
大阪では約2カ月遅れでようやく公開となった。
題名は〝硬くなったアレ〟のスラングだとか。
下半身を膨らませたロリコンの援交オヤジが、
少女の罠に嵌められる、という、何とも情けない設定で送る作品だ。


監督はCM、MTV系で活躍してきたデヴィッド・スレイドが初メガホン。
主演の〝赤ずきんちゃん〟には、
「X-MEN:ファイナル ディシジョン」 でキティ・プライドを演じたエレン・ペイジ
赤ずきんに狩られる〝オオカミ〟には、
「アラモ」「オペラ座の怪人 」のパトリック・ウィルソンを配した。


主人公は、インターネットの出会い系で知り合った2人。
ヘイリーは、好奇心旺盛な14歳の少女。
ジェフは、少女モデルを手がける32歳の新進気鋭のフォトグラファー。
チャットでひとしきり盛り上がり、実際に会うことになった2人。
積極的なヘイリーにうながされるように、自宅へと連れ込んだジェフは、
そこで人生そのものを揺るがす、最大の悪夢に見舞われることになる−


ということで観てみたわけだが、
例の××切除の去勢シーンの強烈さはともかく、
全体的に、どうも消化不良の感が強い映画になってしまった。
挙げ出すと、けっこうあるのだが、
まずは、全体的なテンポというか、ストーリーが間延びしているように思えたこと。
設定としては、まずまず突飛で面白いとは思うのだが、どうもひねりが足りない。
いうならば、短編でサラッとゾクッとさせるようなネタを、
特にもう一工夫することなく、無理矢理長編にしてしまったような感じだろうか。
それも赤ずきんちゃんのピンチもろくに描かないまま、ネタに突入するので、
何とも緊迫感というか、ストーリーをグイグイと引っ張っていく力に欠けるのだ。


ネタはひとしきり明らかにはなっていると思うので、
多少ネタバレは承知で書いてしまうのだが、ジェフの抱えるある疑惑も余分だと思う。
14歳以下の少女とのいわゆる淫行だけでなく、
ある少女の失踪にも疑いがかかっている、ということで、
この映画のパッと見のイメージでもある、ロリコン援交オヤジをどう裁くべきか、ではなく、
むしろまったく別次元の犯罪がらみでの、裁きが加わるのか、否か、という部分が交じる。
ロリコン許すまじ、なのか、それとも…
違う種類の疑惑が挿入されることによって、完全に物語の焦点がぼやけてしまうのだ。


それは、〝赤ずきんちゃん〟ヘイリーの行動にも表れている。
予定外の出来事や、紆余曲折があって、最後の結末にたどり着くのだが、
最初からどこを目指していたのか、もし、順調にことが運んだらどうしていたのか、
ストーリーを振り返ってみると、どこか矛盾を孕んでいるようにも思える。
ジェフが長年執着しているという、ジャネルの扱いも、やや微妙に思えた。
ジャネルに秘密を知られることをなぜ、〝そこまで〟嫌がるのか。
これほどのことをしでかす男が〝そこまで〟して、
ジャネルからその事実を遠ざけようとする部分の理由がいまいち弱い気もするのだ。


こうした気がかりが積み重ねられることで、
サスペンスとしての緊迫感や恐ろしさが削がれていったことは、残念でならない。
そんな部分もあって、映画としての出来そのものには首を傾げる一方で、
ロリコン問題にしぼって考えてみると、やはり何とも複雑な想いがよぎる。


無論、小児性愛そのものに関しては議論の余地はないと思う。
この映画のエレン・ペイジなんかを見ても、
一目で法律的にも道徳的にも「これはいかんだろ」と、文句なしで思う。
しかし、「X−MEN」のキティ・プライドの時のエレンを思い起こしてみると、まずいことになる。
そこには、ちょっとかわいいな、と思ってしまった自分がいる。
イタしてしまえるなら、と想定したら、たぶんイタしてしまいたいと思うはずだ。
そう考えてしまうと、ロリコンでない自分自身にも降りかかってくる問題となる。


強調しておくが、別にロリコンではない(ムキになると怪しまれるか…)。
あくまで上下にストライクゾーンが広いだけなので、若いコも好きというだけだ。
たぶん、アメリカと違ってそういう嗜好に厳しくない日本では、
間違いなく標準的な区分に属するであろうと、自分では思っている。
この映画でも、ヘイリーが半裸でジェフを誘う場面があるが、
ブラ一枚のセミヌードを見ても、とてもじゃないが、欲情することはできない。
だが、この映画が微妙に胸に突き刺さる部分も、正直なところだ。
とことん痛めつけられたジェフが、ヘイリーに訊ねる。
「おまえは誰なんだ」
「あなたが欲情したすべての少女よ」
心のレベルまで問われてしまえば、100%の無罪はとてもじゃないが主張できない。


この映画はたまたま、見た目もそのまま14歳(もしくはそれ以下)の、
明らかに〝ガール〟という少女だから、距離を置いてみることができるが、
これが17歳、18歳という少女だったら…、と想定すると、法律的な部分はともかく、
道徳的な部分での制約がだいぶ弱くなってしまうような気がするのだ。


もちろん、ロリコンを擁護する気はまったくない。
個人的には14、15歳未満の少女に悪戯するような男に限らず、
性犯罪者は全員去勢して、ICタグをつけ、地域住民にも変質者情報を流すべきと考えている。
この映画のジェフだって、ほかのぎわくがなくても、去勢はされて然るべきと思う。
でも、もっと微妙なケースに自分が陥ったら、と思うと(もちろん独身という想定で)、
果たしてその〝ライン〟を守り通すことができるのか、やや心配になってしまうのだ。


レディズデーということもあって、やたらと女性だらけの客席で、
何となく居心地の悪さを覚えてしまったのも、
映画の出来への不満だけでなく、そんな部分が影響したのかもしれない。
ついに思いを遂げ、赤いフードを被ってジェフの家を後にするヘイリーの顔も何とも切ない。
様々な意味で、何ともいたたまれない気持ち、といったらいいだろうか。
そんな複雑な余韻を残して、エンドクレジットは流れていったのだった。