道頓堀松竹角座で「スーパーマン リターンズ」

mike-cat2006-08-24



実に19年ぶりのシリーズ最新作。
とはいえ、「スーパーマン III/電子の要塞」「スーパーマン4/最強の敵 」
はなかったことにして、「スーパーマン II/冒険篇」の続編ということになるらしい。
ただ、2作目までは観たはずなのだが、全然中身を覚えていない。
残像として頭の中に残っているのは、ただただ、
クリストファー・リーヴのスーパーマンクラーク・ケントの強烈なイメージのみ。
ということで、前々日にDVDにて予習(おさらい?)の上、劇場へ向かう。


シリーズ第1作は、あの「リーサル・ウェポン」シリーズのリチャード・ドナーが監督。
ゴッドファーザー」のマリオ・プーゾが脚本を手がけ、
出演陣にはマーロン・ブランドジーン・ハックマンが顔を揃える豪華布陣だった。
いまあらためて観ても、そのスケールの大きさには圧倒されるばかり。
ただ、お話自体はまあ何ともいえないのどかさに加え、
とんでもない反則技(スーパーマンならいいんだろうか…)も飛び出す、
なかなかのB級テイストも醸し出していて、それはそれで愛すべき作品だったりする。
そういえば、こんな感じだったのかな、と思いつつも、
子供の頃はそんなに疑問も持たなかったような気もして、なかなか不思議だ。


で、「リターンズ」は、爆発したはずの故郷クリプトン星の残骸を探し、
宇宙へと消えたスーパーマンが、5年ぶりに地球に戻ってくる場面から始まる。
スーパーマンのいない地球には犯罪が急増、
宿敵レックス・ルーサーは仮釈放を認められ、野に放たれた。
そして再会したかつての恋人ロイス・レインには、婚約者と子供がいた−


故郷と家族を失い、孤独に苦しむスーパーマンが、
実りのない流浪の旅を終え、戻ってきた第2の故郷・地球でも大事な人を失う。
アメリカの正義の象徴にして、太陽のような存在であるスーパーマンですら。
バットマン」や「スパイダーマン」、「ハルク」同様、哀しみを背負って悪に対峙する。
何とも現代的というか、9・11以後の世界を象徴するような設定である。
もちろん、シリーズ第1作でも哀しみとは無縁だったわけではない。
故郷の星と家族は失われているし、育ててくれた父も失っている。
だが、第1作のスーパーマンは、その哀しみを打ち消す力を持っていた。
今回の哀しみは、スーパーマンの力を持ってしても、何ともならないのだ。


そんなロイスとの恋の行方や、お馴染みレックス・ルーサーとの対決、
そしてさまざまな場面場面で、シリーズ第1作をなぞらえ、
この難しい時代にスーパーマンを甦らす、ブライアン・シンガーの手腕はさすがだ。
ユージュアル・サスペクツ」でサスペンス映画好きをうならせ、
「X−メン」を大人の鑑賞にも耐えうる上質なSFアクションに仕立てた名匠が、
「X-MEN:ファイナル ディシジョン」のメガホンをブレット・ラトナーに譲ってまで、
この作品に意欲を燃やした、という理由が、スクリーンからも伝わってくる。


問題は、新シリーズを見すえた〝新しい要素〟をどう判断するか。
今回でもすでに説明過多っぽくて、次作に持ち込むにはやや微妙な感もあるし、
ヘタな扱いをすると、それこそ作品そのものがバカバカしくなってしまう、取扱注意ネタだろう。
この要素をもう少しサラッとやってしまえば、
154分という長尺は回避されただろうし、次へのお楽しみもできたんじゃないかと。


スーパーマンの〝帰還〟にとって、
もっともネックだった、キャストについては、文句なしに近い出来だと思う。
何と、ニコラス・ケイジの噂もあった(はずだったが…)スーパーマンには、
何の手垢もついていない新鋭、ブランドン・ラウスが選ばれた。
あの、ある意味で完璧すぎたクリストファー・リーヴの後任としては、
やや若すぎる感も微妙にあるが、間違いなく合格点だと思う。
クラーク・ケント時のメガネが、ちょっと今風過ぎるのがやや残念な気もするが…


前回シリーズではジーン・ハックマンが務めたレックス・ルーサーは、
ブライアン・シンガー監督とは「ユージュアル・サスペクツ」以来となるケビン・スペイシー
こちらは、神経質な感じがハックマン=ルーサーとは違う感じでなかなか面白い。
スーパーマンの恋人、ロイス・レインは、
前シリーズではよくも悪くもがさつな感じだったマーゴット・キダーから、
「ブルー・クラッシュ」「ビヨンド the シー」のケイト・ボスワースへとバトンタッチした。
個人的な好みでいくと、もう文句なしでいいのだが、女性記者のタフな印象がやや薄いかも。


「X−メン」のサイクロプス役のジェイムズ・マーズデンも出演。
ちなみにロイス・レインの子供役を務めていたのがトリスタン・リーブ。
おっ、クリストファー・リーヴの孫とか何かかも、と思いきや、
スペルはChristopher ReeveとTristan Lake Leabuで、リーブ違い…
版権にうるさいスーパーマンらしく、パンフレットの中にも〝TM〟マークがあふれていたり、
(何しろ、マーサ・ケントや、デイリー・プラネット編集長のペリー・ホワイトにまでついている)
そういう意味でも、このシリーズの偉大さが伝わってきたりして、いろいろ興味深い。


もちろん、映画的なカタルシスでいけば、
冒頭のスペースシャトル×旅客機の場面から、もうドキドキしっぱなし。
前シリーズへのオマージュみたいな部分での、熱さも十分だし、
アメコミ史上最大のヒーロー、「スーパーマン」にふさわしいクオリティの傑作だ。
前シリーズのおさらいをしなくても十分楽しめるはずだが、
1作だけでも観ておくと、面白さも倍増すること請け合いだ。
膨大な製作費の関係で、次作はやや難航気配らしいが、
とりあえず、もう1作ぐらいは続編が観たいな、と思える、楽しい1本だった。