道頓堀東映パラスで「森のリトルギャング」

mike-cat2006-08-05



シュレック」のドリームワークスによる最新作アニメ。
ブルース・ウィリスら豪華声優陣で送る今回の作品は、
突然住宅地に取り囲まれた森の動物たちが主役。
消費社会への強烈な皮肉も込め、観客を爆笑の渦に巻き込む。
いかにもなお子さまアニメでありながら、大人の鑑賞にも十分耐えうる。
というか、大人にしかわからないようなギャグも散りばめた、
本当の意味で〝家族みんなが楽しめる〟作品に仕上がっている。


冷静沈着な亀のヴァーンをリーダーとする森の家族たちが、
冬眠から目覚めると、森は高い垣根に取り囲まれていた。
お調子者の闖入者、アライグマのRJの言うがままに、
人間社会から食料調達を始めたヴァーンたちだったが…


原作はRJとヴァーンを主役にした同名コミック。
いきなりの森林破壊、というテーマが強烈だ。
食料調達の術を奪われた動物たちが、住宅地に出没する。
どこかの国でもよく見られる構図が、そこには展開される。
整然とした、いや整然とし過ぎた郊外の住宅地に現れる野生動物、
ヒステリックなまでに反応し、排除を求める住民代表…
この笑えないシチュエーションを逆手に取るあたり、さすがドリームワークスだ。


そして、人間社会に踏み入った動物たちの反応も、
洒落にならないブラックな笑いをもたらしてくれる。
リスが化合物と添加物にまみれたナチョ・チーズのフレーバーに恍惚とし、
〝食べ出したら止まらない〟を地でいく溺れっぷりを見せたかと思えば、
ヤマアラシの子どもたちが、ゲーム中毒になってみせたりする。
突如まぎれ込んできた文明が、
凄まじいまでの伝播力で原始社会の価値観を破壊していく様は強烈そのものだ。
ただ、消費社会の一方的な批判という感じはない。
それでも、(ジャンキーでも)美味しいものは美味しいんだから、
という、半ばあきらめ、半ばなし崩し的な称賛もあって、微妙に笑えてしまう。


アニメならではのドタバタに少々どぎついジョーク、
ところどころに、お馴染み映画のパロディも交え、
84分間にわたる物語は、圧倒的なパワーで進行していく。
ピクサーなどのアニメと比べ、〝感動風味〟はややあっさりめだが、
笑いに徹したその姿勢は、むしろ観ていて好感が持てる気がする。


ドリームワークス恒例の、豪華声優陣ももちろん魅力たっぷりだ。
落ち着きのないリスのハミーには、
「40歳の童貞男」のスティーヴ・カレル
家族のリーダー、ヴァーンには、
サタデー・ナイト・ライブ」のホスト役で知られるギャリー・シャンドリング。
ちょっと世を拗ねたスカンクのステラには、
「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」のワンダ・サイクス。


ヤマアラシの夫婦は、
夫のルーに、「アメリカン・パイ」のゲジまゆおじさん、ユージーン・レヴィ、
妻のペニーに「ホーム・アローン」のキャスリーン・オハラ。
死んだふりが得意のオポッサムのオジーには、
あの「スター・トレック」のウィリアム・シャトナー、その娘にはアヴリル・ラヴィーン
クマのヴィンセントには「48時間」のニック・ノルティと、
もう並べ上げただけでもため息が出そうなキャストたちが、ノリノリで演じている。


前作「マダガスカル」より、さらに質感が向上した毛皮の描写や、
おそらく非常に高度な技術が用いられている超スローモーション場面など、
目立たないところを含めた随所に、作り手の本気が感じられる意欲作。
子ども映画、と思って敬遠している人にも、
百聞は一見にしかず、ということでぜひ見てほしい逸品なのだった。