テアトル梅田で「ディセント」

mike-cat2006-08-02



〝ヨーロッパ全土を震撼させた!〟と評判のホラー。
「ドッグ・ソルジャー」で脚光を浴びた、英国の新鋭、
ニール・マーシャル監督が描くのは、
地下数マイルで繰り広げられる〝未体験の絶対恐怖〟だ。


突然の交通事故で夫と幼い娘を失ったサラを励ますため、
冒険好きの女性6人組が企画したのは、
アパラチア山脈奥地のケイビング(洞窟探検)ツアーだった。
リーダーのジュノーを先頭に、洞窟の奥へ進んでいく6人組。
しかし、地下数マイルで待ち構えていたのは、恐怖そのものだった−


以下、なるべくネタバレしないように書くつもりだが、
それでも察しのいい人は「ああ、そういう仕掛けね」
となるかもしれないので、読み進む場合は、どうぞご注意を。


で、率直な感想。
なるべく予備知識を入れないようにして観たせいもあるのだが、
もう少し、心理的な恐怖を描いたホラーだと思っていた。
洞窟ならではの閉塞感でグイグイと押してくるような…
だが、映画が始まって、少し経つと、まったく違うことがわかる。
典型的なショッカー・ホラー、という感じだろうか。
この映画をひと言で表現するなら、
怖いというより、むしろグロい、とか痛い、という方が適当だ。
冒頭の事故から始まり、思わず声がもれそうになる負傷シーン、
この映画最大の〝ネタ〟、そしてラストに至るまでの〝死闘〟…
「ファイナル・ディスティネーション」を思わせる、痛いシーンの連続に、
終始苦笑いを浮かべながら、観ることになってしまった。


夢オチ多用の恐怖シーンについては、正直使いすぎの感もある。
ストーリーを壊さずに〝ホラー場面〟を挿入する、定番のやり口だとは思うのだが、
もともとスーパーナチュラルな要素がないだけに、違和感は否めない。


で、肝腎の〝ネタ〟に関しても、
「ほう、そう来るのか」という感じはあるのだが、
これだけで引っ張り切るだけのパワーはないのが残念だ。
これに続く〝あんなものやこんなもの〟みたいな、合わせ技があればよかったのだが…


怖さ、という意味で言うならむしろ、
〝ネタ〟よりむしろ、この6人組の方がよっぽど怖い。
冷静に考えてみると、どちらが本当に怪物なのか、という思いが強い。
お約束の仲間割れから派生する、数々の事件は、
とんでもなく後味が悪くって、違う意味での恐怖を味わわせてくれる。


ただ、ハリウッド映画にはない、インディっぽさは買いだ。
マグダレンの祈り」のノラ=ジェーン・ヌーンをのぞいては、
ほぼ無名といっていいほどの女優陣は、いい意味で素人感満点だし、
全体的にほの暗い、ヨーロッパ風ホラーの雰囲気が漂っているのもいい。
アメリカのホラー映画名物、お色気ショットがないのは残念だが…


過去に観たホラー映画の、怖さ番付で表現するなら前頭の10枚目前後だが、
あまりホラーを見慣れていない人には、かなりショッキングな映画かもしれない。
ちなみに、横に座っていた若い女性は、
数十回にわたって「ヒッ!」とか「アッ!」とか叫んでいた。お気の毒。


まあ、とにもかくにも過度な期待はせず、
納涼がてらの軽い気持ちで観るのが一番だろう。
そうすれば、ちょっと風合いの違う〝恐怖〟に、
思わぬ収穫を感じることが、できるかもしれない。