コンチキチン、と祇園祭の山鉾巡行だ。

mike-cat2006-07-17



祝日の大混雑を避けるため、早めに京都へ向かう。
しかし、この日はあいにくの大雨。
ややまばらな人出の中、御池通沿いの観覧席へ向かう。
荷物をビニール袋に入れ、体には朝コンビニで買ったビニール合羽。
観覧席では傘も差せないらしいので、時間を見計らって、着席する。
指定席は最前列、だったのだ。
晴れてさえいれば、絶好のスポットも、雨の中では微妙な気分。
それでも、せっかく取れた観覧席なので、心して巡行の行列を待つ。


まずは「くじとらず」の異名もある「長刀鉾なぎなたぼこ)」だ。
人形ではない、〝生〟稚児が乗る、唯一の鉾。
16世紀には、疫病を祓ったという伝説もあるらしい。

その迫力は目の前で見ると、本当に「おお」と思わず唸るほど。


続くのは 「郭巨山(かっきょやま)」 。
こちらは母への孝養を謳った中国の史話にまつわる山だとか。
「霰天神山(あられてんじんやま) 」は、
永正年間の大火を消した霰がその謂われ。
社をいただいたそのにぎやかな感じが楽しい山である。


お次は、カマキリを象った「蟷螂山(とうろうやま)」。
しかし、雨のせいでビニールカバーが被せてあり、あまりよく見えず…。
中国古代史話、孟嘗君の故事に基づくという
「函谷鉾(かんこくぼこ)」が、これに続いて登場する。
「油天神山(あぶらてんじんやま)」は朱色の鳥居が見事。
何でも、菅原道真にまつわる山だとか。


「四条傘鉾(しじょうかさぼこ)」はやや地味だが味わい深い鉾。
釣り人を象ったという「占出山(うらでやま) 」は、
色鮮やかな日本三景を描いた胴掛け、が見事らしいが、
これまたビニールカバーでよく形がわからないまま、通り過ぎていく。


ここからしばしご休憩。
どうも、〝大物〟の鉾が進むのには、時間がかかるらしい。
遠めに「鶏鉾(にわとりほこ) 」は見えるのだが、一向に進んでこない。
降り続く雨もあって、ここらへんから観覧席を退散する客がチラホラ…
確かに、安物合羽はそろそろ水も染みてくる頃合い。
ちょっと体を動かすと、体のあちこちにイヤな感触が走り出す。


少し途方に暮れ始めた頃、
待望の「鶏鉾(にわとりほこ)」が、鉾の先をフラフラ揺らしながら登場。

中国古代の伝説に基づくらしいのだが、
とにかく気になるのはその揺れっぷりに尽きるだろう。
あれでよく倒れないな、とひたすら感心してしまう。


続いては宵山ちまきを買わせていただいた「太子山(たいしやま)」。

聖徳太子に由来する、というこれまた由緒正しい山鉾だ。
お次は唐の詩人を謂われに持つ「白楽天山(はくらくてんやま) 」、
世阿弥謡曲木賊」から着想した「木賊山(とくさやま)」が続く。
さらに「月鉾(つきほこ)」 は古事記
「孟宗山(もうそうやま)」は中国の二十四孝の孟宗に由来するとか。
さぞや歴史マニアにはたまらないことなのだろう、と想像する。


前日間近で見た「綾傘鉾(あやがさぼこ)」は棒振りに先導されての登場。

さすが傘とあって、雨でもまずまずその色は映える。


その名の通り、修験道を象った「山伏山(やまぶしやま)」の後は、
鉾の先に菊の紋をあしらった「菊水鉾(きくすいぼこ)」がユラユラと姿を現す。
「伯牙山(はくがやま)」は中国・晋代の琴の名手、伯牙がモデル、
「芦刈山(あしかりやま)」 は山鉾の中でも屈指の古さを誇る重要文化財とか。
「保昌山(ほうしょうやま)」は赤い花が特徴的、
「放下鉾(ほうかぼこ)」は別名「すはま鉾」というらしい。


宵山で登らせてもらった「岩戸山(いわとやま)」がいよいよ登場だ。

モチーフはもちろん「天の岩戸」の神話。
屋根の上には杉と思われる木が祀ってあり、壮観のひと言だ。


続いて、まんま船を象った「船鉾(ふねぼこ)」。

こちらは日本書紀新羅出船に由来するとか。
ミサイルだ、拉致だ、竹島だ、のこのご時世にはやや物騒?


「北観音山(きたかんのんやま)」も、威風堂々の佇まい。
屋根の上に立つ松とのバランスもひたすら見事で、こちらも感心するばかり。
「橋弁慶山(はしべんけいやま) 」は、
五条大橋での牛若丸と弁慶の対決場面がモチーフ。
なのだが、もちろん雨の中なのでビニールカバーが鎮座まします。


ここらへんで、すっかり体は冷えきり、周囲には空席が目立ち始める。
ビニール合羽はすっかり役立たずになり、
まるでおもらしをしたような濡れっぷりに、思わず気が萎える。
しかし、あと6、7体と思えば、と気持ちを建て直し、
再び滞りだした巡行の続きをひたすら、まさにひたすら待ち続ける。


「黒主山(くろぬしやま) 」は、桜と松をあしらった逸品。
八幡山(はちまんやま)」は、石清水八幡宮が祀られているという。
そして「浄妙山(じょうみょうやま)」は、
宇治川の一来法師をあしらった人形が、
毎度のことながらビニールカバーの下で大活躍をしている。


いよいよラストが近づいてきた。
鈴鹿山(すずかやま)」 は、
砂漠の中を歩くラクダが描かれたタペストリーが印象的。
「鯉山(こいやま)」を飾るベルギー製のタペストリーも見事だ。
最大級サイズを誇るという「役行者山(えんのぎょうじゃやま)」は、
鬼の面を被った面々が、山鉾を先導しているのが、なかなかにぎやかだ。


そしていよいよ大トリの「南観音山(みなみかんのんやま) 」。

「北観音山」の観音様が男性なら、こちらは女性だとか。
32体の行列を締めくくるのにふさわしい、堂々たる貫録を見せてくれる。


しかし、その余韻に浸る間もなく、雨の降りしきる観覧席を後にする。
烏丸御池」から地下鉄で「京阪三条」へ。
濡れ鼠のままで電車に乗るのは、やたらと恥ずかしいが、まあ仕方ない。
こんどは晴れの日、
最大の見どころでもある「辻回し」を観に行く楽しみを残し、京都を後にした。