アメリカ村はシネマート心斎橋で「サイレントヒル」

mike-cat2006-07-12



全米震撼! 2006年夏! 最大の衝撃作!
コナミの人気ホラーゲームを、
ジェヴォーダンの獣」のクリストフ・ガンズ監督が映画化。
娘を救うべく闇に立ち向かう母、ローズには、
メリンダとメリンダ」「ネバーランド」のラダ・ミッチェル
闇にとらわれた少女に「ローズ・イン・タイドランド」のジョデル・フェルランド
助演にショーン・ビーンデボラ・カーラ・アンガーらを取りそろえた話題作だ。


オハイオ在住のローズとクリスの夫妻は、
9歳になる養女シャロン夢遊病に悩まされていた。
苦痛に満ちた表情で口にする言葉は「サイレントヒルに帰らなきゃ」
それは、シャロンの出身地ウェスト・ヴァージニアのゴーストタウンだった。
シャロンのため、周囲の反対を押し切ってサイレントヒルに向かう、ローズとシャロン
真っ白な灰に覆われたその街には、恐怖と哀しみに取り憑いていた。
サイレンの音が街を包むとき、闇にとらわれた何かが襲いかかる−。


いわゆる夏の風物詩的なホラー映画だと思っていたのだが、なかなか侮れない佳作だ。
ゲームの世界観はまったく知らないのだが、
クリストフ・ガンズが描き出す作品世界は、一種独特なおどろおどろしさを創り出している。
表裏一体となった冥界と現世、単純な図式で割り切れない邪悪さ…
それは、数え上げればきりがない論理的な破綻を差し引いても、
十分な魅力に溢れたホラー的世界である。


闇に包まれた冥界のサイレントヒルに蠢く、クリーチャーたちもいい。
ギクシャクと動く「早く人間になりたい!!」(妖怪人間ベム?)的な怪物たち、
魔女狩り、狂信者集団、レッドピラミッドの怪物、そして蟲、蟲、蟲…
背筋も凍る、というのとは微妙に違うが、思わずゾワゾワしてしまうクリーピーさだ。
正直、フナムシが嫌いな人は絶対に観ない方がいいかもしれない。


どちらかといえば、文芸作品系に思えるラダ・ミッチェルも、魅力的だ。
押し寄せる恐怖に叫びまくるスクリーミング・クイーンぶりに加え、
幼き娘への深い愛もうまく表現できていて、なかなかに好感が持てる。
昨日「ローズ・イン・タイドランド」で酷評したジョデル・フェルランドも、
この作品ではさほど子役臭に悩まされずにすんだ。


ホラーにしてはやや複雑なプロット、ホラーにしてはやや長尺な126分の上映時間も、
クリストフ・ガンズのテンポのいい演出が効いているのか、さほど気にならない。
前述した論理的な破綻であったり、
まるで役に立たないショーン・ビーン演じる夫であったり、
そんな部分も、映画のもたらすカタルシスの前には、そう大きな障害にはならない。
微妙な含みを残したラストの余韻は、いかにも続編をにおわすが、
それはそれで、うまいこと1本取られたような、爽快さも感じてしまう。


最大の衝撃作!のオビを盲信するのは問題だし、
過剰な期待をするのは禁物だが、観て損はない1本。
もちろん、ゲームを知らなくてもまったく問題はない。
細かい部分を気にせず、その世界に浸れば、暑い暑い夏を忘れること請け合いだろう。