敷島シネポップで「カーズ」

mike-cat2006-07-03



お待ちかね、「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」の
ピクサーアニメーションスタジオ最新作。
今回ジョン・ラセターの創り出すのは、自動車が主役の夢の世界。
モータリゼーション文化、そしてアメリカのスモール・タウンへの、
深い愛情がひしひしと感じられる、笑いと感動のストーリーだ。


ライトニング・マックイーンは、レースの最高峰ピストン・カップを争う新人レースカー。
スピードはピカイチだが、ひとりよがりな〝ミスター・ワンマンショー〟だ。
LAでの決勝レースへと向かう途中、トレーラーとはぐれたライトニングは、
ラジエーター・スプリングスという、小さな田舎町に迷い込む。
そこは、インターステート<州間道路>から外れ、地図から消えた、忘れられた町。
ひょんなことからそこに滞在を余儀なくされたライトニングだが、
陽気なメーターや町の車たちとの交流で、いつしか大事なことを学んでいく。


話はごくシンプルだ。才能ある、傲慢な若い車が、
〝車のいい〟スモール・タウンの車たちと出会い、成長していく。
初めてできた親友、町のマドンナとのほのかな恋、
かつての伝説との出会い、そして最後のレース…
ストーリー展開そのものには、意外性はそうない。


だが、圧倒的な迫力で展開するレース場面から始まり、エンドクレジットまで、
映画の中で退屈するような場面はまったくないといっていい。
細かい部分にも最大限〝楽しさ〟盛り込んだ描写、
気の利いたジョーク、思わずキュンとなるオマージュの数々…
物語のすべてが、小さな驚きに満ちている。
「よもやハエまで…」と驚き、思わず笑ってしまう場面もある。
アニメにしかできない、センス・オブ・ワンダーを詰め込んだ122分間。
そこには「面白い映画を作りたい」という愛情が満ちあふれているのだ。


中でも、随所に盛り込まれた自動車文化への深い愛情、
消えゆくアメリカのスモールタウンへのノスタルジーには、
思わず目頭が熱くなること、数えきれず…
そして迎えるラストには、思わず涙がこぼれ出す。
単純だっていい。
丁寧に、丁寧に愛情込めて作られた単純な物語は、本当にグッとくるのだ。


そして、声優陣の豪華さたるや、ため息が出るほどだ。
ライトニング・マックイーンには、
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ズーランダー」のオーウェン・ウィルソン
伝説のレースカー、ドック・ハドソンには、
ハスラー2」「明日に向って撃て!」の名優ポール・ニューマン
イカれたおんぼろレッカー車で、ライトニングの親友メーターには、
「Blue Collar Comedy Tour」のラリー・ザ・ケイブル・ガイ。
都会に疲れ、ラジエーター・スプリングにたどり着いた弁護士サリーに、
ザ・エージェント」「グリーンマイル」のボニー・ハント


ピストン・カップを争う卑怯なライバル、チック・ヒックスには、
バットマン」「マイ・ライフ」のマイケル・キートン
フェラーリマニアのタイヤ店主、ルイジには、
ギャラクシー・クエスト」「モンク」のトニー・シャルーブ
カスタムメイド&ペイントショップを経営するラモーンには、
デスペラード」「スパイキッズ」のチーチ・マリン
ラブ&ピース&ドラッグのオーガニック燃料店主、フィルモアには、
「ドグマ」「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」のジョージ・カーリン。


そして、ピクサー映画の名物的存在、ジョン・ラッツェンバーガーは、
ライトニング専属のトレーラー、マック役で登場、
思わぬ大活躍をするので、こちらも思わず笑顔がこぼれてしまう。


洒落たジョークにイカしたギミック、ノスタルジー、圧倒的な迫力…と、
映画のすべてが詰まったこの作品。
アニメだから、のひと言で見逃すようでは、あまりにもったいない。
ピクサー映画のファンならずとも、必見といっていい、保証付きの大傑作だ。
満ち足りた気持ちで、劇場を後にする。
「もう一度、観に来てもいい」。そんな思いすら、頭をよぎったのだった。


そうそう、ピクサー次回作の予告も登場する。
レミーのお気に入り(おいしい?)レストラン」とかいう邦題だった。
パリに住むグルメ・ネズミが主人公。
何でも悩みは、グルメに生きるのも大変だ、みたいなお話。
なかなかネズミがブサイク可愛くって、笑えそうな感じだ。
原題は〝RATATOUILLE〟(ラタトゥイユ)。
公式サイトはこちら↓
 http://disney.go.com/disneypictures/ratatouille/
ちなみに「トイ・ストーリー3」はまたその次らしい。