道頓堀東映パラスで「ウルトラヴァイオレット」

mike-cat2006-06-27



時は近未来、アメリカ政府が謝って開発したウイルスは、
瞬く間に感染し、世界の在り方を変えてしまった。
ウイルス感染した人間は、頭脳、体力ともに超人的に進化、
一方で、その余命は12年という宿命を背負う。
<ファージ>と呼ばれる、その超人類は、
人間から恐れられ、隔離され、そして駆除されていく。
生き残ったファージと、人類の血で血を洗う争いの中、
人類とファージの運命を握る少年<シックス>が誕生する。
シックスの謎を探るため、人間政府に潜入した、
ファージの女戦士ウルトラヴァイオレットだが、
いつしかシックスを守るため、孤独な戦いを始めることとなった−


ミラ・ジョヴォヴィッチによる近未来SFアクション、
と聞くと誰しも思い出すのは「バイオハザード」だろう。
バカバカしさを超越した、超現実的設定に、
ミラの現実離れしたスタイルから繰り出されるアクションがマッチ、
これがポール・アンダーソンのテンポのいい演出とはまって、
いかにもB級映画らしい、B級映画の傑作に仕立てられていた。
となれば、近未来SF、ウイルス感染、と同じネタが詰まったこの作品も、
オリジナリティとか、ストーリーの深みは別として、
B級映画らしい楽しさを味わわせてくれるもの、と期待していたわけだ。


しかし、なのである。
ひとことでいうと、これはかなりの駄作といっていいだろう。
ことし公開の映画でいうと、シャーリーズ・セロン主演の「イーオン・フラックス」が、
まるまる同じような系統の作品なのだが、あれよりさらに落ちるかもしれない。
まずは別に期待もしていないけど、ストーリーの貧弱さではいい勝負。
だが、こちらはさらにテンポが悪い。
アクションの間に差し挟まれるドラマがあまりに平坦で、
87分という短い尺にもかかわらず、とにかく眠気とあくびが止まらない。


一番大事なアクションも、正直言って近年屈指のハズレといっていい。
まずは、予告ではけっこうイケていた、
いくつかのアクションシーン以上にクールな場面は一切ない。
さらに、予告ではブツ切れでよくわからなかったのだが、
そのアクションシーンのショボさといったら、もう言葉を失う。


まずは殺陣そのものがどうにも切れがないし、
まるでスラップスティックのアニメの見るような、安直な動きには目を覆いたくなる。
さらに、デジタルエフェクトの処理が甘すぎるせいで、まったく迫力がない。
技術的には最新のものを用いているはずが、
まるで10数年前のB級映画を観ているように、やたらとアラが目立つのだ。


加えて、ミラの顔にもなぜか常にデジタルエフェクトがかかっていて、
まるで〝大女優のソフトフォーカス〟のように、違和感が常に漂う。
さらに、だ。ここが一番大事。
ミラといえば、のお色気がまったくといっていいほど、活きていない。
ボンテージ系の衣装が多いにも関わらず、
露出が少なすぎる上、ボディラインが十分に出ていないのだ。


いや、スケベ心だけでいっているのではない。
(もちろん、スケベ心がほとんどであるのも確かだが…)
バイオハザード」シリーズでは、
ムダに短いスカートやムダなスリットで、お色気を強調するとともに、
アクションシーンでの体の切れそのものも、うまく強調できていた。
だがこの作品では、そうしたお色気の出し惜しみで、
どうにもミラらしいカッコよさ、というのが感じられないのだ。


さらに、こうした近未来SFならではの、ギミックもかなり貧弱だし、
悪役連中のショボさ、子役の魅力不足も手伝って、ほめるところはほとんどない。
それなりにメッセージ性を持たせようとしているのも、
おぼろげに伝わってはくるが、どれも言いっ放しに過ぎず、むしろ白けてしまう。
「M:I:Ⅲ」でもやってた、最近流行りの上海ロケも、
中途半端にきれいなトコだけ撮っているから、印象希薄で無意味に感じる。


もしかすると、というか、もしかしなくても、
ことし上半期のトップ3に入る、〝観ると損する〟映画だと思う。
ちなみにあと2つは「イーオン・フラックス」と「ポセイドン」。
ミラ・ジョヴォヴィッチだけを目当てに観に行ったとしても、後悔すること請け合い。
「いや、まさかここまでとは…」と、無念の涙を呑んだのだった。