渋谷円山町・ 渋谷Q-AXシネマで「プラハ!」

mike-cat2006-06-16



せっかく久しぶりの帰京なもので、
渋谷で映画でも、と足を運んでみる。
知らない間に新しい劇場ができたり、
既存の劇場がリニューアルされていたり、
と、相変わらずの東京の移り変わりの速さに驚く。


ということで、ラブホの看板がきらめく横をすりぬけ、劇場へ。
この劇場は初めてだが、スクリーンの大きさ、位置、客席の段差ともかなりいい。
音響も含め、映画好きがゆったりといろいろな作品を楽しめる劇場といえそう。


物語の舞台は1968年のチェコスロヴァキアだ。
社会主義国チェコスロヴァキアに自由化の波が押し寄せた「プラハの春」。
ドイツ国境近くに住むテレザ、ブギナ、ユルチャの3人は、
高校卒業を目前に控え、ロストヴァージンに燃えるお年ごろ。
でも、同級生のオトコはどうにも幼く、イケていないやつらばかり。
そんな時、テレザたちをときめかせたのは、
ワルシャワ条約機構軍から逃亡した3人の兵士との出逢いだった−。


チェコでは20人に1人が観た、という大ヒットだそうだ。
よくある言い回しだが、実際どのくらいか実は見当もつかない感じではある。
まあ、そういうからには本当にヒットしたのだろう。
日本でいうと「千と千尋の神隠し」ぐらい? といったところなのだろうか。


チェコ映画というと、アニメが有名だが、こちらはもちろん実写の青春ミュージカル。
チープでキッチュな舞台セットをバックに、
懐かしのポップスナンバーのチェコ語ヴァージョンがバンバンかかる。
プロデューサーズ」や「シカゴ」のような大仕掛けの作品には、
豪華絢爛さや踊りのレベルなどは遠く及ばないが、
どこか懐かしく、愛すべきミューカルに仕上がっている。


60年代後半から70年代を思わせる衣装デザインも、
流行が回りまわって回帰した現在の視線で見ると、なるほどすごくピンとくる。
(オトコの方はイケてない感もだいぶ強いんだが…)
最近のファッション雑誌で見かける、
シャネルやディオールルイ・ヴィトンなどなど、
どこかエレガントでレトロなドレスを思わせる衣装が、目を楽しませてくれる。


だが、この映画で何よりも光るのは、
テレザ役を演じたズザナ・イリソヴァーだろう。

スロヴァキア生まれの27歳。
高校生を演じるにはややトウも立っているが、
大人と子どもの微妙なラインでの輝きを保ち、新鮮な魅力を振りまく。
ひとつ間違えば、安っぽくもなりえるこの映画が、
このテレザの魅力だけで作品に芯が一本通り、グッと質感が上がっていく。
まあ、単に僕の好み、といってしまえばそこまでではあるのだが…


物語は比較的シンプルだ。
いわゆる典型的なボーイ・ミーツ・ガールに、
そこにあの「プラハの春」の雰囲気が味つけされている。
だが、単純明快だからこそ、そのドラマがグッと伝わってくることもある。
自由化を謳歌し、テレザを温かく見守る父親役が物語に厚みを加えている。
現実の「プラハの春」そのものが迎えた結末が、
作品にも同じような影を差すところが、何とも言えずにビターな感じでもあるが、
そのビターさゆえに、それまでの甘い思い出が輝いて見える、という部分でもあるだろう。


馴染みのないチェコ映画ということで、
僕もいままで二の足を踏んでいたのだが、観て満足のできる作品。
未鑑賞の方は、いまからでも遅くないので、ぜひに観て欲しい1本だ。
ちなみにオフィシャルサイトはここ→http://www.praha-movie.com/index.html