春の桜めぐり第3弾! って、

mike-cat2006-04-19

考えてみたら桜は春に決まってるんだが、それはともかく第3弾は大本命の奈良は吉野山に行く。
世界遺産だ、世界一だ、とかねてより評判だけは聞いていた、いつか行かねば、の必須スポット。
奥千本がまだ咲き始めくらいとのことだが、心を浮き立たせ、やや早起きして吉野への長い行程に臨む。


近鉄あべの橋から特急に揺られること約1時間半。
とちゅう「くず(葛)」だの「むだ(六田)」だのという、
珍駅名に失笑を浮かべつつ、はるか吉野を目指す。

途中、幾度もの単線行き違いに待たされつつ、ようやく吉野駅に到着。
だが、改札を通り抜けると、そこには大行列が待っていた。


一応、定番のルートとしてはまずロープウェイらしいが、もちろん大行列。
予定していたバスで「中千本公園」というルートも、大行列ができている。
係員に訊くと、どうもピストン輸送してるということなので、
待ってみると、10分ほど待ってバスに乗り込める。もちろんギュウ詰め…


中千本公園に到着し、そのまま奥千本口行きのバス乗り場へ。
一応桜は目に入ってくるが、どうにも散り際っぽい感じでやや無念…
こちらはマイクロバスでのピストン輸送。約30分ほど待ってバスに乗り込む。
運良く一番前の席だったため、桜の大パノラマ! と思ったら、
杉林の中(そういえば吉野杉は有名だった…)を抜けて行くのみ。
景色はよかったんだが、「あのう、桜は…」的な戸惑いを抱きつつのドライブとなった。


奥千本口に到着すると、近くのオバちゃんが「もう、あんまり歩きたくないわ…」。
そうだよなあ…、ここまで来るだけでも一苦労だもの。
平日でこの混雑具合だから、日曜とかは考えただけでゾッとする。
ここから西行庵までは長い長い上り坂。
舗装された坂道をえんえんと上り、その後は山道が続く。
この舗装された坂道がなかなかくせ者で、登りつめるともうけっこう息が上がる。
それでも山道に入るとちょっとした森林浴気分でなかなかナイス♪
険しい山道を抜けると、奥千本にたどり着く。


しかし、なのである。
西行庵のショボさはともかく、桜が少ない。それも圧倒的に…
千本は絶対にない。どう見積もっても百数十本。

これ、たとえ満開でも〝千本〟の絶景にはほど遠いのでは?
花自体に関しては、開花情報で「咲き始め」とあったので、
満開を期待していたわけじゃないが、それにしても期待外れが過ぎる。


がっかりしつつ、苔清水を回って金峰神社経由で高城山展望休憩所へ。
またも長々と舗装された坂道を上り、たどり着くと、そこには桜が十数本。
あれ? また騙されたかも…
全然桜が見えない、ただの山からの眺望。
登ってきた人が口々に文句を垂れる。「絶景かもしれないけど、桜がない!!」
そうだよ、みんな桜見に来たのに、奥千本から戻るルートだと、まだ桜20本くらいしか…
確か吉野の桜は3万本のはずだから、まだ1500分の1だけ、という計算になる。


失意にまみれ、坂道を下る。
途中、登る人に「あとどれくらいですか?」と訊かれる。
「あと半分もないですよ」と答えるが、「桜はないですよ」とは言えなかった。
言ってあげるべきだったかしら…、としばし悩みながら、水分神社へ向かう。


狭い道をたらたらと下っていくと、赤い鳥居が見えてくる。
山の中に現れるその姿、なかなかの風情だ。
この水分神社分水嶺を意味する水分(みくまり)が訛り、
身籠もり、子宝を意味する御子守(みこもり)の神様ということだ。
社殿は豊臣秀頼の時代に再建された桃山建築、ということになるらしい。
境内に入ると(無料よ♪)、そこにはしだれ桜が咲き誇る。

これは見事のひとことと言っていい。
花の色合いも美しいピンクで、シロヤマザクラの白とは違う風情に溢れている。

しかし、横でオバちゃんらが(いや、とにかく至るところオバちゃんだらけなのだ)
「ここ、〝みまくり〟神社よね」「そう、そう」「読みにくいわね」などと話してる。
えーっと、〝みまくり〟ではなく…、と心の中でだけ突っ込み、神社を後にする。


水分神社を越えると、間もなく花矢倉らしき場所に到着。
しかし、「名物椎茸ご飯」の食堂が、どんと座敷を構えている。
椎茸ご飯にあまり魅力も感じないため、とりあえず座敷の合間から眺め見る。

おう♪ ここはかなりナイスな眺望だ。
一面桜がバーンという感じはないが、山肌に桜が映えて、とても美しい。


ここから上千本の中を通って下へ降りていく。
もうだいぶ散り際とあって、桜吹雪は見事だが、近目で見る桜はちょっと…
桜の中を通り抜けたところでちょっと休憩。
坂の途中のお茶屋さんで、葛切り&くずもちをいただく。
ぬれ縁でいただく甘味は、もう最高にご機嫌だ。
葛切りののど越し、くずもちのプルプルとした食感がたまらない。
黒蜜の甘みも、疲れた体にジュジュジュ〜と染み込んでくる。
お土産に葛切りや、吉野葛などを買い込み、中千本へ向かう。


中千本公園のビューポイントは五郎兵衛茶屋という高台。
ここは上千本と中千本を臨む眺望がウリだ。
見事といえば見事なんだが、かなり遠めなので、絶景とまでは言いかねる。
近くから見るより、遠めに見る方がここの桜はいいのかもしれないけど…


高台をくだり、こんどは参道の料理茶屋「坂本屋」で、葛うどんをいただく。

中千本の光景が楽しめるはずだが、ここも眺望はいまいち。
で、料理はあんかけの山菜うどんに、柿の葉寿司のセット。
うどんの生地そのものに葛が入っているので、うどんはツルツル…
のはずなんだが、まあ何というか、可もなく不可もなくのレベルか。
観光地なんだからしかたない、と納得して店を出る。


参道の土産物店はまずまずのにぎわい。
吉野葛と葛切りがメインだが、たまに草もちとか桜もち、桜ソフトなんかもある。
一応参拝のメイン蔵王堂&仁王門を眺めた後、
作りたての草もちや花見団子などもぱくついてみる。
こちらはさすが作りたてとあって、なかなかイケる感じだ。


ここからは銅の鳥居、黒門、大橋と定番のコースを経て、
最後は七曲がりのハイキングコースを駅の方へ向かって下っていく。
そういえば、ここらへんから下千本が臨めるはずだが、
どうも何というかその、どう見積もっても千本あるとは思えない。

思えば、奥に始まり、上、中、下と、どれも千本に満たないのでは…、
という思いがふつふつとわき上がってくるのは、人として自然な感情だろう。


そういえば、雑誌などで見た吉野の風景も、
山一面に広がる壮麗な桜、というわけではなかったような気もしてきた。
人の手が入らない、自然な桜の風景が特徴というのは理解できるが、
「世界一」「世界遺産」という看板には、少々オーバーな気がする。
確かに、山そのものの風景や眺望はすごい。それは間違いない。
ハイキングコースとしても、十分過ぎるくらい楽しめるスポットになっている。
だが、「桜スポット」としてだけ見た場合、「世界一」とはとても思えない。


少なくとも、マイベスト桜スポットでもある、千鳥ケ淵には遠く及ばないし、
過去ベスト5を考えてみても、(開花状況もあろうが…)ちょっと微妙だ。
総体的には楽しかったので、あまり悪くいうつもりもないが、
桜に期待して吉野を訪れた場合、失望するのは僕だけではないと思う。
期待しすぎたかな、というのが正直な感想。
まあ一度は訪れるべきとも思うが、二度三度ということはなさそうだ。
「楽しかったけど、もっと桜が見たかったな…」。
そんなわがままな思いを胸に、急行(特急は満席)であべの橋に向かうのだった。