山口は湯田温泉、山口スカラ座で「イーオン・フラックス」

mike-cat2006-03-11



というわけで、山口にまで来て結局映画を観ているのだが、
「モンスター」のオスカー女優、シャーリーズ・セロンの最新作。
タイトル「AEON FLUX」の文字ロゴが、
ジャスコとかを展開するAEONに似ているが、全然関係ない。
たまたまテレビを見てたら、
あの汚いモヒカンの女お笑い芸人を使ったスポットCMやってた。
最近こういうやり口が増えたが、やっぱり感心できないな…


2011年、新種ウイルスによって、人類の99%が死滅した。
トレバー・グッドチャイルドが発見したワクチンで、生き延びた人類は400年後、
高い塀に囲まれ、周囲の自然と隔絶されたコロニーに都市を築いていた。
グッドチャイルドの末裔が支配する、一見、理想郷に見えるその世界。
だが、人々のこころには原因不明の哀しみが蔓延していた。
人民の監視・管理を徹底する政府に抵抗する反乱分子、モニカンの工作員
イーオン・フラックスシャーリーズ・セロンは、政府中枢に侵入。
そこで目にしたものは、驚くべき真実だった−


日本公開作では「モンスター」「スタンドアップ」と、
ブスメイク&小汚いカッコでの熱演が続いていたシャーリーズ。
あれはあれでいいのだが、せっかくの美貌をわざわざ…、の感は否めない。
ポスター、予告を観たら、誰しもが思うだろう。
かつては「ディアボロス」「レインディア・ゲーム」などなど、
ムダ脱ぎの女王として君臨したあのシャーリーズが、久々に帰ってきた…


だが、なのである。
その種の期待は、ほぼ裏切られるのだ。
期待するのは当然だろう。
いつものブロンドではなく、ブルネットのショートヘア。これはこれでそそる。
だって、予告を観る限りでは、お色気ショット満点、という感じだし…
で、雑誌とかで、冒頭の鎖だけネグリジェとかも出ていたし…
しかし、予告で拝見できる以上の「これ!」というサービスショットはなし。
さらに、アクションをこなすには、ちょっとむっちりしすぎのボディラインとあって、
数々のアクションシーンは吹き替え(たぶん)、コマ切れ、スピード感なしの3拍子。
正直シャーリーズのファンとしては、「あちゃちゃちゃちゃ…」と困ってしまうのだ。


SFっぽい設定は、予想していたよりずっと凝っている。
ウイルスでの死滅から、理想郷の創造、そして破綻…
果ては政府とレジスタンスの闘争などなど、
〝きちんと作り込めば〟なかなか渋めのSFドラマができそうな感じだ。
でも、それは、あくまで〝きちんと〟作った場合。
シャーリーズ主演のお色気アクション、という足かせが、
なかなかの設定をぶち壊しにしてしまっている感は否めない。
やたらと急ぎ足のシナリオは、そこかしこに破綻をもたらし、
SFならではの醍醐味の一つである、さまざまな特撮ギミックも不足気味。
未来世界のビジュアルも、どこかで見たような映像ばかりで斬新さに欠ける。


ドラマ性に目を向けても、やはり物足りなさは残る。
「スタンド・アップ」に続いての共演となるフランシス・マクドーマンド
ユージュアル・サスペクツ」「父の祈りを」の名優ピート・ポスルスウェイトと、
脇役にまで豪華布陣をそろえながら、何だか説得力が薄い。
脚本が中途半端だから、ドラマにもキレがなくなるのは当然だが、
この人たちまで使ってこれでは、ちょっといただけない。
ネタバレになるから詳細は省くが、「限りある人生にこそ、価値がある」
という作品メッセージもやたらと押しつけがましくて、どうにも後味が悪いのだ。


終わってみて思うことは、シャーリーズのお色気アクション、文芸風SFドラマの
せめてどちらかに絞り込めなかったのか、ということだ。
監督は「ガールファイト」のカリン・クサマ
脚本はキルステン・ダンストの「クレイジー/ビューティフル」を手がけた、
マット・マンフレディとフィル・ヘイのコンビ。
製作には「ターミネーター」「エイリアン2」などのゲイル・アン・ハードが名を連ねる。
こうして並べてみると、たぶん製作側の責任が大きいのかな、という感じだろうか。
シャーリーズも、たまには息抜きとかしたかったんだろうが、
もう少し作品選びをきちんとしないことには、
ハリー・ベリーの二の舞い(「チョコレート」でオスカー→「キャット・ウーマン」でラジー賞)だ。


シャーリーズの次回作は、
ボーイズ・ドント・クライ」のキンバリー・ピアーズ監督によるドラマ、
〝The Ice at the Bottom of the World〟 。
http://us.imdb.com/title/tt0414141/
プロットはこんな感じだ。
「退役し、チェサピーク湾に戻った海軍の軍人。だが、長い不在の代償は大きかった…」
キャストでクレジットされているのはまだシャーリーズだけで、
シャーリーズがどんな役を演じるのかもわからないのだが、製作にも絡むらしい。


何はともあれ、さあ、巻き返しだ。
「シャーリーズ、君に泣いているヒマはない。」
お後がよろしいようで…