梅田ナビオTOHOプレックスで「悪魔の棲む家」

mike-cat2006-02-02



1979年の「悪魔の棲む家」〝THE AMITYVILLE HORROR〟のリメイクだ。
子どもの頃、予告を観てかなり怖い想いをした覚えがある。
本編もたぶん、テレビで観たはずなのだが、記憶なし。
ずいぶん前にネットで見たリメイク版の予告は、抜群の出来だった。
マイケル・ベイが製作、というのにかなりの不安を覚えるが、
予告の印象を信じ、観に行くことにする。もちろん、期待値はさほど高く設定しないが…


1974年、NY・ロングアイランドのアミティビル。
ダッチコロニアル様式の邸宅で深夜、銃声が響く。
長男ロニーによる、一家惨殺事件。
警察の取り調べに対し、ロニーは家の中から聞こえる〝声〟に命じられたと答えた。
1年後、格安物件につられてこの邸宅を購入したのはラッツ夫妻。
しかし、一家は次々と奇っ怪な出来事に遭遇する。
だが、原因はすべて闇の中。やがて、夫のジョージは、〝声〟を聴く。


まずはBASED ON TRUE STORY とクレジット。
一応、実話を基にしているらしい。
といっても、こういう作品は、どこまでどこまでが実話部分か、非常に曖昧だ。
〝見えた〟〝聞こえた〟という怪奇現象はもちろん、
会話部分などのドラマに関しては、だいぶ脚色されているはずなので、
あんまりこの言葉を鵜呑みにして観ると、鼻白んでしまうケースも多い。
オカルトの完全否定派でもないし、
世の中には理屈で説明できないことがたくさんあることは承知しているが、
明らかに電波系の人はもちろん、霊感だの何だのを過剰に訴える人はどうも嫌いだ。


だから、こういう映画に関していえば、
どこまでうまく、その怪奇現象に乗せてくれるか、
もしくは、どこまで開き直って、エンタテイメントとして仕上げてくれるか、
そのバランス感覚に期待する部分は、非常に大きい。
バカ映画なら、バカ映画でいいのだ。
夏休みに、アメリカのティーンがギャアギャア言って観るようなホラーも嫌いじゃない。
ただ、そのショッカー映画ぽさを追求さえしてくれれば。
ついでに、ホラー映画に欠かせないおネエちゃんのサービスショット。
(これのないショッカー・ホラーなんて、許せない!!)
そういう意味では同じくリメイクで、これまた同じくマイケル・ベイが製作に携わった
「テキサウ・チェーンソー」なんかは、ジェシカ・ビールのセクシーさ満載で、ナイスな逸品。
実際、怖さは全然だったけど、
それはそれでキャアキャア逃げ回るジェシカちゃん♪を楽しむものとして、目的が明確だった。


じゃあ、このリメイク版「悪魔の棲む家」はどうか。
予告でも使われていた、ニュースフィルム風の一家惨殺事件の〝その後〟は、
なかなか格調高い、というか雰囲気抜群のムードで描写される。
ところがこのまま、クラッシックなムードで進むのかな、と思うと、
その予想はあっさり裏切られる。
序盤で見せられた、静かな感じの恐怖は、すぐにお手軽なびっくりに取って代わられる。
大きな音とちゃちな幽霊、マイケル・ベイお得意の細かすぎるカット割りで、
ただ、ちょっと驚く程度の恐怖描写が、適当に織り込まれていくのみ。
かといってショッカー・ホラーとしても中途半端で、
思わず体がビクッとなる場面はさほどなし。
予想される展開の中で、予想以上に怖くない幽霊が、だらだらと登場する。


フィリップ・ベイカー・ホール演じる神父が、
エクソシストとして挑む場面なども盛り込まれるが、これもやたらと中途半端。
物も言わずに逃げ帰るやたらと無責任なエクソシズムは、逆に乾いた笑いも起こるだけだ。
プロダクションノートなんかを読むと、
79年版では採用されなかった、原作の要素をできる限り取り込んだと言いうことだが、
どうにも消化不良の感が強い。
もっと〝幽霊屋敷の見えない恐怖〟を、じっくりじわじわと描くとか、
ライアン・レイノルズ演じるジョージの、憑依か狂気か、の微妙な線に焦点を当てるとか、
(それだと、「シャイニング」のジャック・ニコルソンと比べられてしまうが…)
そうじゃなかったら、徹底的にお化け屋敷としてのアトラクションに徹するか。


だが、このリメイク版「悪魔の棲む家」はどこに焦点を当てるでもなく、
安っぽい特殊メイクと視覚効果に頼ったまま、機械的にただただ物語を進めていく。
かといってテンポがいいわけでもなく、物語を追うのにも正直疲労感を覚える。
監督のアンドリュー・ダグラスのセンスには、首を傾げざるを得ない。


収穫は妻役を演じたメリッサ・ジョージ(「マルホランド・ドライブ」)だろうか。
スクリーミング・クイーンとしてはやや年齢高めの設定(30歳前後)ではあるが、
これがまた何というか、いい感じに色っぽい。
たぶん、この妻役の視点で物語を進めていれば、
(つまり、妻が被害を一手に引き受けるのだが…)
もう少し緊迫感とか、艶っぽさなんかも出てきて、面白い映画になっていた気がする。


極端に退屈な映画とはいわない。
だが、もう少し作りようがあったはずだな、という想いを強く感じるホラーだ。
期待値設定が低かったのに、それでも消化不良感は、けっこう強い。
口直しに79年版とか観てみようかな、と想いながら、劇場を後にしたのだった。