梅田ブルク7で「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」

mike-cat2006-01-24



混雑を避けるため、公開2カ月でようやく観に行く。
しかし、それでもそこそこは入っている。
何はともあれ、たいしたものだな、とまずはひたすら感心する。


今回のメインイベントはホグワーツ魔法学校が主催する「3大魔法学校対抗戦」。
その代表に、思いがけず選ばれたハリーは、
ドラゴンに、魔物の棲む沼、そして巨大迷路と、厳しい課題に挑んでいく。
求めるのは永遠の栄光。しかし、その先に待っていたのは、さらなる試練だった−。


ついに英国人監督がメガホンを取ったシリーズ第4作だ。
前作「アズカバンの囚人」では、アルフォンソ・キュアロン監督がさえていたので、
マイク・ニューウェル監督へのバトンタッチに違和感を覚えていたのだが、
実際出来上がった作品を観て、納得がいった気がする。
157分の長尺でも収まりきらない様々な要素をかなりいいテンポでまとめている。
もちろん、まるで不満がない、とはいわない。
最初のクイディッチ(この表記でよかったっけ?)のワールドカップの場面や、
各代表とドラゴンとの対決場面など、端折りすぎの面もある。
それでも、おとぎ話チックな場面とダークな部分との切り替えは悪くないし、
ドラマ部分とスペクタクル部分の配分も、ちょうどいい塩梅に思える。


英国のカントリーサイドを情感たっぷりに描いたホグワーツの光景も、とても印象深い。
美しさの中に潜む、おどろおどろしい闇の部分との対比も美しく、
シリーズ中でもある意味転換点となる作品であることが、よく伝わってくる。
もっとも、最後のハーマイオニーの「みんな変わっていくのね」のセリフは蛇足なのだが…


で、映画のスペクタクル部分は、相も変わらず文句なし。
よくぞこれだけの映像世界を作り出したな、と感心するばかりだ。
冒頭のクイディッチのワールドカップ会場の壮大な光景には、いきなりグッと引き込まれ、
あとは、ひたすらその圧倒的な映像に目を見張るばかり。
とても冷静に考えると、対抗戦とか自体はゲームとして破綻している気がするが、
それも気にならないほどの、魅力に溢れたファンタジーワールドが広がる。


ドラマの部分にはややもの足りない部分は感じられる。
ハリーとロンの友情、またハリーとハーマイオニー、ロンとハーマイオニーの淡いロマンスに、
微妙な変化が出てきたり、ハリーが中国系の女の子にドキッとしてみたり…、と、
やたらと盛りだくさんに様々な青春ストーリーを詰め込んでいる。
よく言えば、次回作にうまくつないだ、ともいえるが、
この作品だけ取ってみると、かなり中途半端な印象が強いかもしれない。


特に、ダンスパーティをめぐるハリーとロンの無礼ぶりは、
「まだ、14歳だから」では看過できないイヤな気持ちを抱かせる。
ハーマイオニーらに相手にしてもらえなかった2人が、
インド系双子を誘っておきながら、乗り気でない態度を見え見えにする。
いかにも貴族階級を描いた映画でありながら、紳士として許されざる態度だ。
子どもが観る映画で、こういう場面を描くのであれば、
映画の中でこの2人に対して、もっともっとペナルティを与えないといけない。
何でも道徳的にしろとはいわないが、ハリー&ロンには
こういう部分では少なくともロールモデルであって欲しいな、と。


あとはもろもろ、そうかハリーの好みは中国系か、とか、
ハリー役のダニエル・ラドクリフはだいぶトウが立ってきたな、とか
ロン君を演じるルパート・グリントと、
ハーマイオニーエマ・ワトソンはますますいい感じに成長してきたな、とか、
相も変わらず豪華すぎるキャストを、
よく言えば惜しげもなく、悪くいえば雑に使っているな、とか、
さすがに157分もあると、余計なことを考えながら観てしまった面も。
とりあえず、悪の帝王とやらを、レイフ・ファインズが演じているのに衝撃。
何も、こんな役使わなくてもいいのに…、ととても複雑な想いが残った。


ただ、映画そのものは、
単体の作品としても、先にも書いた大きな物語の中の転換点としても、
かなりの高水準で仕上がっているのではないか、と思う。
原作を読んでいない以上、その判断がどこまで正しいかはわからないが、
少なくとも次回作品も観てみようかな、と思わせるだけでも、大したものだと思う。


一方で、気がかりなのは、原作はあと2、3作だったと思うが、
ラドクリフ君がどこまで保つのか、という点だろうか。
どう見てもロン君の方が存在感があるだけに、どこまでうまくまとめるのか。
ハーマイオニーちゃんが、フツーのおネエちゃんいなってしまわないか、の不安も含め、
まるで親のような気持ちで、次回作を待つことになりそう。
いや、もちろん原作の熱烈なファンにしてみれば、
お前なんかが余計な心配を、ということになってしまうのだろうけど、ね。