梅田ガーデンシネマで「ニュー・シネマ・パラダイス」デジタルリマスター版。

mike-cat2006-01-04



ことしの映画始め♪
ショーシャンクの空に」「ガタカ」と並ぶ、こころのベスト3。
僕に限らず、多くのひとにとって、忘れられない映画のひとつだと思う。
これが正月早々(東京は年末だったみたいだが)リバイバル上映と聞いて、
とてもじゃないが、見逃すわけにはいかない。
上映時はもちろんシネスイッチ銀座に(2度くらい)行ったし、リバイバル上映も観に行った。
家にもかつてはビデオがあったし、いまはDVDに買い替えてはある。
いつでも家で観ることができる、のは確かなのだが、
映画がより生活に密着し、夢への架け橋だった時代を、愛情深く描くこの作品、
可能な限り劇場のスクリーンで観たいのだ。


梅田の駅から〝ほど遠い〟スカイビルまで、寒風吹きすさぶ中を歩く。
ウェスティホテルと映画館以外、ろくに何もないスカイビルの4階は人まみれ…。
この劇場が(韓流映画のオバはんたち以外で)混雑しているのは初めて観た。
東京なら行列必至の作品も、ここではいつもガラガラというのが常だったが、
さすがにこの作品は、人気、実力とも、ちょっと格が違うらしい。


シチリアの小さな村出身の映画監督、サルヴァトーレのもとにある日、訃報が届く。
幼少のころから通い詰めた映画館〝ニュー・シネマ・パラダイス〟の映写技師、アルフレード
30年もの間遠ざかっていた故郷に、サルヴァトーレのこころは舞い戻る。
人生のすべてが映画に詰まっていた、あの時代へ−。


こころのベスト3といいながら、実際観るのは6、7年ぶりとなる。
デジタルリマスター版、ということで、音、映像ともはるかにクリアらしい。
確かに、映像そのものに関して、くすみは感じないが、
やはり見比べてみないと、格別すごい! とまではいかないようだ。
家に帰ってパンフレットの山を探るのもイヤなので、
復刻版のパンフレットを買ってみたのだが、そこで見る限りは、
必ずしもクリアな映像がいい、とは言い切れない気もちょっと…
まあ、「ゴッドファーザー」なども含め、デジタルリマスターがきっかけで、
スクリーンに戻ってくるのは、うれしい限りなので、あまり悪口は言うまい。


さて、映画だ。
アルフレードフィリップ・ノワレの姿を目にし、
エンニオ・モリコーネのお馴染みのテーマミュージックを耳にすると、
相も変わらずパブロフの犬よろしく、条件反射で涙がこぼれてくる。
話はもうほとんど覚えているせいもあって、
それぞれの場面が近づくだけで、胸がグッとこみ上げるという、
まことに冷静さを欠いた鑑賞になってしまうのが困りものだ。
歳取って涙腺がゆるんだせいもあってか、序盤から泣き通し。
終わることには、かなり目の周りが腫れ上がってしまう始末となった。


しかし、映画の印象は歳月を経たワインのように、印象が変わった。
映画が変わっていない以上、僕自身が変わった、ということだが、
あらためて観てみると、かつてよりも、切ない場面の描写が強く印象に残る。
たとえば、戦争で夫を失ったトトの母親の哀しみと苛立ちだったり、
アルフレードの映画技師という職業への誇りと恥じらいだったり、
時代に取り残された、現在の村の様子であったり…


以前観たときも、その光景を見逃したわけではないし、
その場面の記憶、そしてどんな感情が描写されているかは〝理解〟していた。
だが、今回あらためて観たとき、
頭で理解する以上に、より強くこころで感じることが出きた気がする。
もちろん、歳を重ね、経験を積んだ人間ばかりが、
より深く物事を理解できる、というつもりは毛頭ない。
若いころ観たときの方が、もっと前向きな面が印象に強く残った気がする。
たとえば、アルフレードとトトのこころの交流であったり、
たとえば、ひたすら映画に夢をかける、人々の輝く瞳であったり…


そういう意味では、つくづくこの「ニュー・シネマ〜」が、
複雑で多様な輝きを持った作品であることが、よくわかる気もする。
物語としての、王道の素晴らしさだけでなく、
様々な場面の中で光る、細やかな描写の数々が、
様々な視点から鑑賞する人々のツボにはまったからこそ、
この小品ともいえる一見地味な映画が、多くの人の支持を受けている面もあるのだろう。


映画が日本初公開された1989年から、すでに17年の時が経った。
続編、パート2の乱発や、シネコンの登場、DVDの普及など、
映画そのものだけでなく、それを取り巻く環境にも大きな変化がもたらされた。
そして観る側たる僕自身を考えてみても、
ある意味別の人間といっていいほど、いろいろなことが変わった。
そして、再びスクリーンで出会った「ニュー・シネマ・パラダイス」には、
変わらない感動もあり、ちょっと違った感慨もあり…
また10年経って観たとき、どんな感想を覚えるのかが楽しみだ。
可能であれば、またこんな作品にぜひ、そしてもっともっと出会いたいな、と。
新年早々、とても清々しい気持ちで劇場を後にしたのだった。