道頓堀東映パラスで「ディック&ジェーン 復讐は最高!」

mike-cat2005-12-31



ことしの映画おさめ♪ ちょっと小品っぽいけど、
「エース・ベンチュラ」以来のジム・キャリーのファンを自認する僕としては、
まあ、1年の締めくくりに悪くないチョイスじゃないかな、と。
原題は〝FUN WITH DICK AND JANE〟
77年にジョージ・シーゲル×ジェーン・フォンダで製作されたコメディ、
「おかしな泥棒ディック&ジェーン」のリメイクだ。といっても、オリジナル版は観てないが。


IT企業グローバダインに務めるディック・ハーパー=キャリーは、
妻のジェーン=ティア・レオーニと、長男ビルとともに郊外で幸せな暮らしを送っていた。
そんなある日突然、ディックは広報本部長への昇進を告げられる。
ジェーンはこれを契機に仕事を辞め、家事に専念、
自宅のプール工事も発注を終え、何もかもが順調そのものとなっていた。
ディックの初仕事はTV番組「マネーライフ」のへの出演。
しかし、そこで告げられた真実は、マカリスター社長の重大な裏切りだった。
会社は倒産、再就職もままならないディックたちが、最後に選んだ道は何と…


こうやって書いてみると悲惨そのものの話なのだが、もちろんこれはコメディ。
もちろん、いかにものジム・キャリー映画に仕上がっている。
で、ティア・レオーニなんて、もうまともなロマンスできないだろうな、と思うくらい。
まじめに状況を考え直すと、洒落にならないはずなのに、
〝最後の選択〟にいたるまでの、ふたりのいじめられっぷりは、ひたすら笑える。
ここらへん、大袈裟な表情、絶妙に間の抜けたタイミングなど、
ジム・キャリーの真骨頂が発揮されてるな、という気がする。


くだらない、バカげている、と指摘もあるだろうとは思う。
よくふたごのオカマの片割れが書いてる、「品がなくて、私はこういうの嫌い」とかいうやつ。
しかし、ベン・スティラーとか、アダム・サンドラーとか、ジム・キャリーのコメディに
「バカバカしい」とか、「くだらない」という指摘そのものが見当外れなのは、言うまでもない。
嫌いなら観なければいいだけの話なのだ。
(ちなみに、映画評論家の場合は、好き嫌いで判断すること自体おかしい)
「くだらなくて」「バカバカしい」映画を観にくる人のために作った映画なのだから。
スプラッタ映画観ておいて、「ドバドバ血が出てくるからダメな映画」というのと同じだ。


というわけで、このテの映画で一番大事なのは、
どれだけ徹底して「バカバカしく」作り上げるか、という部分にかかってくると思う。
で、この映画はどないだ、というと、最初に書いた通り、これがなかなか徹底している。
字幕で訳されないギャグもやたらとたくさんあったようだし、
本当に英語がぺらぺらで、アメリカ大衆文化に通じてるヒトなら、笑い通しのはずだ。


そのギャグの嵐をキレよくまとめ上げたのは、ディーン・パリソット。
あのSFコメディの大傑作「ギャラクシー・クエスト」の監督と聞けば、納得だ。
ストーリーの縦軸をテンポよく流れさせることで、作品としてのまとまりも出ている。
最後のオチに使われる企業名なんかも、なかなか皮肉が効いているし、
オリジナル版を知るヒトがどう思うかは分からないが、少なくとも僕にとっては満足の出来だった。


惜しむらくは、登場人物の「勝ち組」へのこだわりが、微妙に過剰なところか。
成功だけが人生、みたいな部分を、あくまでギャグとして見られるかどうか、ここは微妙だと思う。
たとえば、ブルーカラーの仕事を明快に〝転落〟とする価値観をどう取るか。
お話の世界、として現実から切り離して考えるには、多少重くもある。
かといって、その部分をきっちり考えると、コメディとして成立しにくい部分もあるから、
まあ、それはそれ、他愛のないコメディと割り切って考えるのもひとつの手ではあると思う。
あくまで、ちょっと気になっただけなので、あんまり文句をいってもしかたないが…


それはともかく、1年を締めくくるには悪くない1本。
お正月の大作に疲れたら、こういうチョイスもありじゃないかな、と。
かといって「キング・コング」よりもこちらを先に、という気にはならないのだけど。