ことしもとうとう、年の瀬を迎えてしまった。

mike-cat2005-12-30

何だかやたらと早い1年だった気がするが(これも毎年言ってるな…)、
特に11月の旅行以降は、ホントあっという間に過ぎてしまった。
特筆事項といえば、たぶん十数年ぶりに、
年賀状を20日前後に発送したことぐらい。
あとは、ただただ日常に引きずられて、ズルズルズルズル…
焦りがあるわけでもないけど、何となく困ってしまう部分もある。


そうなってくると、苦労しながらもつけているこのブログというのも、
忘れっぽい僕にしては、数少ない有為な行動だったりするわけで、
三日坊主どころか、もう1年半にもなろうかという事実には、自分でもけっこう驚きだ。
で、昨年に続いてことし読んだ本の総ざらえ。
ことしはエクセルにメモっていたので、振り返るのがけっこう簡単だ。
よかった、よかった。


読み始めたばかりの「エムズワース卿の受難録 (P・G・ウッドハウス選集 2)
の年内読了は微妙だから、計185冊。
昨年の277冊からはだいぶ減っているが、
月に15冊も読んでおいて、文句をいうのもちょっと大人げないから、よしとする。
うち翻訳ものが60冊。以前は翻訳ものしか読まなかった僕としては、やや少なめかも。
あとは、ハヤカワのノンフィクション・マスターピースのおかげで、
ノンフィクションを読む機会がずいぶん多かった。
シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち」は、
リドリー・スコットが監督に決まったそうで、こちらも楽しみだ。


ことしの収穫としては、やはりロバート・J・ソウヤーかな。
さよならダイノサウルス (ハヤカワ文庫SF)」を読んでから、かなりハマッてしまった。
ことしの刊行だと「ホミニッド-原人 (ハヤカワ文庫SF)」のシリーズ、
刊行を待って3冊まとめて読んだけど、読み応え十分だった。
日本の作家だと黒川博行伊坂幸太郎、そして町田康だろうか。
特に町田康は「告白」を始め、どれも本当に面白い小説だった。
「ロリータ」「冷血」「ソラリス」などの新訳版も相次いだ。
なかなか手の出にくい古典を、いまの言葉で読むことができるのは、ありがたい限りだ。


そんなわけで、まずはことし読んだ本の一覧だ。
ちなみに右の数字は、読んだときに何となくつけた評価。だから、最終的なベスト10とは別。


1 夜のピクニック 恩田陸 新潮社 92
2 USAカニバケツ 町山智浩 洋泉社 90
3 火の粉 雫井脩介 幻冬舎文庫 73
4 となり町戦争 三崎亜記 集英社 83
5 破裂 久坂部羊 幻冬舎 80
6 素敵 大道珠貴 光文社 70
7 赤い長靴 江國香織 文藝春秋 76
8 ブラック・ヴィーナス アンジェラ・カーター 河出書房新社58
9 日暮らし 宮部みゆき 講談社 83
10 私をふった5人の男 スーザン・シャピロ 早川書房 57
11 永遠の仔 天童荒太  幻冬舎文庫 64
12 日の名残り カズオ・イシグロ ハヤカワ文庫 89
13 鎖 乃南アサ 新潮文庫 78
14 あかね空 山本一力  文春文庫 89
15 無間人形 大沢在昌 光文社文庫 66
16 震える岩 宮部みゆき 講談社文庫 75
17 天狗風 宮部みゆき  講談社文庫 79
18 遺失物管理所 ジークフリート・レンツ 新潮社 83
19 損料屋喜八郎始末控え 山本一力 文春文庫 79
20 甘露梅 宇江佐真理  光文社文庫 69
21 さんだらぼっち 宇江佐真理 文春文庫 77
22 すべてを食べつくした男 ジェフリー・スタインガーテン 文春文庫 82
23 暗いところで待ち合わせ 乙一  幻冬舎文庫 79
24 だいこん 山本一力 光文社 82
25 御宿かわせみ 平岩弓枝 文春文庫 63
26 悪徳警官はくたばらない デイヴィッド・ローゼンフェルト 文春文庫 83
27 FOXY 宇佐美游 文藝春秋 62
28 漢方小説 中島たい子 集英社 79
29 逃亡くそたわけ 絲山秋子 中央公論新社81
30 国境 黒川博行  講談社文庫 89
31 むかしのはなし 三浦しをん 幻冬舎 87
32 疫病神 黒川博行 新潮文庫 83
33 最後の願い 光原百合 光文社 83
34 檸檬のころ 豊島ミホ 幻冬舎 94
35 熱帯産の蝶に関する二、三の覚え書き ジョン・マリー ソニー・マガジンズ78
36 しゃぼん 吉川トリコ 新潮社 80
37 文福茶釜 黒川博行 文春文庫 77
38 ソラリス(新訳版) スタニスワフ・レム 国書刊行会 94
39 三度目の正直 浅井柑 マガジンハウス72
40 銭売り賽蔵 山本一力 集英社 78
41 グランド・ミステリー 奥泉光 角川文庫 64
42 雨恋 松尾由美 新潮社 89
43 彼方なる歌に耳を澄ませよ アリステア・マクラウド 新潮社80
44 灰色の北壁 真保裕一 講談社 79
45 ダブルプレー ロバート・B.パーカー 早川書房 86
46 傷口にはウォッカ 大道珠貴 講談社 71
47 スパイク 松尾由美 光文社文庫 75
48 古道具 中野商店 川上弘美 新潮社 89
49 デセプション・ポイント ダン・ブラウン 角川書店 91
50 さくら 西加奈子 小学館 59
51 左手首 黒川博行 新潮文庫 73
52 ヘンリーの悪行リスト ジョン・スコット・シェパード 新潮文庫 81
53 オテルモル 栗田有起 集英社 85
54 ねじの回転 ヘンリー・ジェイムズ 創元推理文庫80
55 オルタード・カーボン リチャード・モーガン アスペクト 83
56 誘拐ラプソディー   荻原浩 双葉社文庫 68
57 ベジタブルハイツ物語 藤野千夜 光文社 81
58 かわうその祭り 出久根達郎 朝日新聞社 86
59 蒼龍 山本一力 文春文庫 81
60 エリザベス・コステロ J・M・クッツェー 早川書房 78
61 優しい音楽 瀬尾まいこ 双葉社 84
62 黒笑小説 東野圭吾  集英社 77
63 魂萌え! 桐野夏生  毎日新聞社 86
64 いつかパラソルの下で 森絵都 角川書店 96
65 白骨 G.M.フォード 三川基好    新潮文庫 74
66 阿修羅ガール 舞城王太郎   新潮文庫 69
67 恐るべき空白 アラン・ムーアヘッド 早川書房 88
68 奇跡の人 真保裕一 新潮文庫 71
69 ザ・ハウス・オブ・グッチ サラ・ゲイ・フォーデン講談社 79
70 未来の息子 揶月美智子 双葉社 72
71 ニューヨーク大聖堂 ネルソン・デミル 講談社文庫 74
72 ベルカ、吠えないのか? 古川日出男 文藝春秋 93
73 枯れ葉の中の青い炎 辻原登 新潮社 83
74 旨い部屋 ミネット・ウォルターズ  創元推理文庫 81
75 くうねるところすむところ 平安寿子 文藝春秋 86
76 てるてるあした 加納朋子 幻冬舎 83
77 賢者はベンチで思索する 近藤史恵 文藝春秋 87
78 風味絶佳 山田詠美 文藝春秋 93
79 怪笑小説 東野圭吾 集英社文庫 74
80 毒笑小説 東野圭吾 集英社文庫 78
81 闇先案内人 大沢在昌 文春文庫 82
82 君たちに明日はない 垣根涼介 新潮社 79
83 ホモセクシャルの世界史 海野弘 文藝春秋 72
84 迅雷 黒川博行 文春文庫 64
85 タイユバンの優雅な食卓 アンドリュー・トッドハンター 文春文庫 76
86 浄土 町田康 講談社 91
87 花まんま 朱川湊人 文藝春秋 86
88 ジーヴスの事件簿 P・G・ウッドハウス 文藝春秋 80
89 告白 町田康 中央公論新社 93
90 コンビニ・ララバイ  池永陽 集英社文庫 74
91 伊勢丹な人々 川島蓉子 日本経済新聞社77
92 権現の踊り子 町田康 講談社 91
93 都市伝説セピア 朱川湊人 文藝春秋 82
94 危ない食卓 フェリシティ・ローレンス河出書房新社86
95 家、家にあらず 松井今朝子 集英社 78
96 人生のちょっとした煩いごと グレイス・ペイリー 文藝春秋 81
97 さよなら、ダイノサウルス ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 88
98 サウスバウンド 奥田英朗 角川書店 90
99 きれぎれ 町田康 文春文庫 88
100 空の中 有川浩 角川書店 83
101 カインの檻 ハーブ・チャップマン 文春文庫 87
102 シャドウ・ダイバー ロバート・カーソン 早川書房 92
103 ロズウェルなんか知らない 櫛田節子 講談社 81
104 スモールトーク 絲山秋子 二玄社 82
105 震度0 横山秀夫 朝日新聞社 78
106 下妻物語・完 嶽本野ばら 小学館 83
107 イリーガル・エイリアン ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 88
108 東京ライオット 戸梶圭太 徳間書店 78
109 死神の精度 伊坂幸太郎 文藝春秋 87
110 マルコの夢 栗田有起 集英社 84
111 孤宿の人 宮部みゆき 新人物往来社90
112 後ろ向きで歩こう 大道珠貴 文藝春秋 53
113 嘘は止まらない 戸梶圭太 双葉社 84
114 死ぬまでにしたい101のアラ技 リチャード・ホーン 早川書房77
115 GOTH 僕の章 乙一 角川文庫 74
116 GOTH 夜の章 乙一 角川文庫 76
117 ジーニアス・ファクトリー デイヴィッド・プロッツ早川書房 91
118 ウォータースライドをのぼれ ドン・ウィンズロウ 創元推理文庫 82
119 陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎 祥伝社 81
120 スーパーマーケットマニア〜アジア編 森井ユカ 講談社 78
121 厭世フレーバー 三羽省吾 文藝春秋 74
122 桃色トワイライト 三浦しをん 太田出版 90
123 私は猫ストーカー 浅生ハルミン 洋泉社 78
124 カウントダウン・ヒロシマティーヴン・ウォーカー 早川書房 91
125 リピート 乾くるみ 文藝春秋 87
126 はなうた日和 山本幸久 集英社 84
127 透明人間の告白 H.F.セインツ 新潮文庫 88
128 おまけのこ 畠中恵 新潮社 82
129 イニシエーション・ラブ 乾くるみ 原書房 89
130 かたみ歌 朱川湊人 新潮社 81
131 カブールの本屋 アスネ・セイエルスタッド イースト・プレス 81
132 退廃姉妹 島田雅彦 文藝春秋 77
133 容疑者Xの献身 東野圭吾 文藝春秋 87
134 ターミナル・エクスペリメント ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 86
135 情夫 藤堂志津子 文藝春秋 81
136 回想のビュイックスティーヴン・キング 新潮文庫 82
137 正午二分前 ノエル・F・ブッシュ 早川書房 84
138 獣たちの庭園 ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫 87
139 女王様と私 歌野晶午 角川書店 85
140 銀河ヒッチハイクガイド ダグラス・アダムス 河出文庫 88
141 コロラドの血戦 クリントン・マッキンジー新潮文庫 78
142 死体まわりのビジネス アラン・エミンズ バジリコ 82
143 星の王子さまの眠る海 エルヴェ・ヴォドワほか ソニー・マガジンズ 77
144 屈辱ポンチ 町田康 文春文庫 82
145 憑神 浅田次郎 新潮社 87
146 フラッシュ・フォワード ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 88
147 耽溺者(ジャンキー) グレッグ・ルッカ 講談社文庫 76
148 七悪魔の旅 マヌエル・ムヒカ=ライネス 中央公論新社 74
149 ララピポ 奥田英朗 幻冬舎 89
150 守護者(キーパー) グレッグ・ルッカ 講談社文庫 72
151 食べるな! 危険 モーガン・スパーロック 角川書店 82
152 未確認家族 戸梶圭太 新潮文庫 82
153 奪回者 グレッグ・ルッカ 講談社文庫 72
154 さよなら、コンスタンス レイ・ブラッドベリ 文藝春秋 82
155 少女には向かない職業 桜庭一樹 東京創元社 81
156 冷血 トルーマン・カポーティ 新潮社 94
157 CHEAP TRIBE-ベイビー、日本の戦後は安かった 戸梶圭太 文藝春秋 81
158 Bランクの恋人 平安寿子 実業之日本社 85
159 カリフォルニア・ガール T・ジェファーソン・パーカー 早川書房83
160 アンボス・ムンドス 桐野夏生 文藝春秋 81
161 自殺自由法 戸梶圭太 中央公論新社 80
162 9・11生死を分けた102分 ジム・ドワイヤー、ケヴィン・フリン 文藝春秋84
163 ブルースカイ 桜庭一樹 ハヤカワ文庫 77
164 魔王 伊坂幸太郎 講談社 88
165 ホミニッド−原人− ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 89
166 ヒューマン−人類− ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 83
167 ハイブリッド−新種 - ロバート・J.ソウヤー ハヤカワ文庫 82
168 凸凹デイズ 山本幸久 文藝春秋 87
169 ニート 絲山秋子 角川書店 90
170 時生 東野圭吾 講談社文庫 84
171 恐竜の発見 エドウィン・H.コルバート早川書房 74
172 メジャーリーグ、メキシコに行く マーク・ワインガードナー 東京創元社 81
173 秋の猫 藤堂志津子 集英社文庫 85
174 暗礁 黒川博行 幻冬舎 88
175 美術モデルのころ 長島はちまき バジリコ 70
176 戦争案内 戸井昌造 平凡社 72
177 幸福ロケット 山本幸久 ポプラ社 81
178 ロリータ(新訳版) ウラジーミル・ナボコフ 新潮社 92
179 バスジャック 三崎亜記 集英社 82
180 脱出記 スラヴォミール・ラウィッツ ソニー・マガジンズ 88
181 砂漠 伊坂幸太郎 実業之日本社 84
182 シャングリ・ラ 池上永一 角川書店 88
183 愛の保存法 平安寿子 光文社 86
184 ブレードランナーの未来世紀 町山智浩 洋泉社 93
185 窓の灯 青山七恵 河出書房新社 77


ことし刊行分で、上半期のベスト5に選んでいたのが、以下5冊。
  森絵都いつかパラソルの下で
  豊島ミホ檸檬のころ
  町田康告白
  山田詠美風味絶佳
  ダン・ブラウンデセプション・ポイント 上」「デセプション・ポイント 下


森絵都「いつか、パラソルの下で」には、もうシビれまくった。
その時のブログにも、至福の一冊、と書いているけど、まさにそのひと言だと思う。
豊島ミホも、その切なくってキュンとなる小説に、
体験したはずのない少女時代を、〝思い出させられた〟ような感覚を覚えた。
町田康はもう圧倒的。〝十人斬り〟の城戸熊太郎の思考に、
思わずシンクロしていくその感覚は、凄まじいとしか言いようがない。
山田詠美はタイトル通り「風味絶佳」な極上の小説。思わず恍惚となる作品だった。
ダン・ブラウンは、エンタテイメント一直線。
映画公開間近の「ダ・ヴィンチ・コード」とまではいかないが、これも面白い一冊だった。
ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版」がちょっと欲しいな、と思う今日この頃でもある。


で、あらためてことしのベスト10となると、これまた悩むわけだ。
下半期で欠かせないのは、まずロバート・カーソン
シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち」だろうか。
傑作が多かったノンフィクションは、
ほかにもデイヴィッド・プロッツ「ジーニアス・ファクトリー」も秀逸。
時代ものでは、宮部みゆき孤宿の人 上」「孤宿の人 下」がベストだろうか。
町田康は、上半期ベスト5から漏れた「浄土」も、やたらと面白い一冊だった。
強烈さで言えば、古川日出男ベルカ、吠えないのか?」が間違いなしのナンバー1だろう。


新訳ものではカポーティの「冷血」がとにかく、すごかった。
めずらしく旧訳版も読んでいた「ロリータ」は、
なるほど、なぜいまさら刊行する意味があるのか、とても強く伝わってくる新訳版だった。
ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)」も文句なしの面白さだったのだが、これは昨年の刊行分…
〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション)
は、タイトルがやたらと長いが、これもまた読み応え十分だった。
遅ればせながら読み始めた伊坂幸太郎は、「死神の精度」「魔王」と傑作続き。
昨年ナンバー1「海の仙人」の絲山秋子は、「ニート」がズンときた一冊。
あとはソウヤーの「ホミニッド-原人 (ハヤカワ文庫SF)」、黒川博行暗礁」、
松尾由美雨恋」、三浦しをんむかしのはなし」、
川上弘美古道具 中野商店」、平安寿子くうねるところすむところ」…


と、挙げだしたらキリがないのだが、
いつまでも悩んでいても仕方ないので、ベスト10にまとめる。
■2005年 ベスト10
1.

いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で

2.
冷血

冷血

3.
ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

4.
風味絶佳

風味絶佳

5.
告白

告白

6.7.
死神の精度

死神の精度

8.
ロリータ

ロリータ

9.
檸檬のころ

檸檬のころ

10.次点 絲山秋子        「ニート


ううん、絲山秋子三浦しをん平安寿子がベスト10から外れるというのは、
複雑な想いもあるけど、過去の作品や、ほかの作品群との対比で、こうなった
で、ザッと振り返ってみると、
1位の森絵都だけは、何があっても譲れないかな、という感じだが、
2−5位は、ほとんど同じといっていいくらい、どれも遜色ない傑作群。
4位「風味絶佳」5位「告白」に関しては、何か申し訳ない気持ちになる。
6位の「ブレードランナーの未来世紀」は、小説以外では間違いのないベスト1。
8位のナボコフ「ロリータ」は、難解さが両刃の剣になったかな、という感じ。
豊島ミホの「檸檬のころ」はもっと上でいいとも思うが、完成度の点でここにおさまる。
絲山秋子は10位に入れようかとも思ったけど、題材の〝ニート〟がやっぱり微妙で、
シャドウ・ダイバー」が10位滑り込みとなった。


で、参考までに各誌のベスト10を引用。
本の雑誌(ノンジャンル)
1.  山田詠美 「風味絶佳」
2.  池上永一 「シャングリ・ラ
3.  スラヴォミール・ラウィッツ 「脱出記」
4.  森絵都 「いつか、パラソルの下で」
5.  奥泉光 「モーダルな事象」
6.  瀬尾まいこ 「優しい音楽」
7.  沢木耕太郎 「凍」
8.  古川日出男 「ベルカ、吠えないのか?」
9.  梨木香歩 「沼地のある森を抜けて」
10. 町田康 「告白」
次点 リチャード・モーガン「オルタード・カーボン」


まあ、このベスト10については、順不同お勧めの10冊っぽいところがあるけど、
1位の「風味絶佳」については、やっぱり文句なしだと思う。(4位にしといて何だが…)
シャングリ・ラ」が2位というのは、半分納得、
半分「7〜10位じゃないの」という気持ち。
瀬尾まいこ優しい音楽」はよかったと思うけど、
図書館の神様」とかと比べると微妙かも…
古川日出男町田康はまあ、そう間口の広い作家じゃないと思うので、
この順位でもやむなし、か? なんて思ってもみた。
梨木香歩沼地のある森を抜けて」は、発売直後から家に積んであるのに、
次に読もうと思っていると、なぜかほかにもっと読みたい本が出てくる、
という感じで、いまだ未読に終わっている。
評判はすこぶるいいので、年が明けたらぜひ、と思っているトコだ。
ああ「オルタード・カーボン」。
これは面白かったけど、どちらかというと映画で観たい作品。
映画のビジュアルを助けにして再読したいので、一刻も早い映画化を願うばかりだ。
(もちろん、信頼できる映画作家にお願いしたいんだが…)


週刊文春(国内部門)
1. 東野圭吾 「容疑者χの献身」
2. 薬丸岳 「天使のナイフ」
3. 横山秀夫 「震度0」
4. 伊坂幸太郎 「死神の精度」
5. 石持浅海 「扉は閉ざされたまま」
6. 加藤廣 「信長の棺
7. 藤原伊織 「シリウスの道」
8. 伊坂幸太郎 「魔王」
9. 北村薫 「ニッポン硬貨の謎」
10. 島田荘司 「摩天楼の怪人」
次点 奥泉光 「モーダルな事象」


ベスト1は、後から書く「このミス」との二冠となる。
僕も夢中で読んだし「ほお!」とひたすら感心したし、傑作ではあると思うんだが、
献身の対象となる人妻・靖子にどうしても感情移入できなかったのが、個人的にマイナス。
たぶん、純粋にミステリーとしての評価なら、確かに満点なんだと思う。
複雑ではあるけど、反則なしのミスリードで読者を欺き、
矛盾のないトリックをわかりやすく説明し、うならせる。
まさに王道の作品ではあったと思う。
震度0」も、本当に面白い小説だったと思う。
ただ、この警察官僚という人種が、どうしても好きになれないので、
何となく僕のベストには入れなかったのだが、納得のいく高ランクだと思う。
シリウスの道」は、気になりつつ手にしていなかった本。
こんど読もうかな、と。


週刊文春(海外部門)
1. マイクル・コナリー 「暗く聖なる夜」
2. ジャック・リッチー 「クライム・マシン」
3. シオドア・スタージョン 「輝く断片」
4. ジェレミー・ドロンフィールド 「サルバドールの復活」
5. ジェフリー・ディーヴァー 「獣たちの庭園」
6. ジャック・カーリイ 「百番目の男」
7. ダン・ブラウン 「デセプション・ポイント」
8. P・G・ウッドハウス 「ジーヴズの事件簿」
9. スタンリイ・エリン 「最後の一壜」
10.トマス・H・クック 「蜘蛛の巣の中へ」
次点 T・ジェファーソン・パーカー 「カリフォルニア・ガール」


1位は、ハリー・ボッシュもののシリーズ第9弾。
シリーズものはえてしてそうだが、早い段階でシリーズに接していないと、
途中から読む気にはなれないし、1巻から読み直す気力も体力も時間もない。
で、1位と聞いても、「さいですか」としかならないのだが、ううむ、読んでみたい気も。
リッチーの「クライム・マシン (晶文社ミステリ)」も、気になりつつ…、の一冊。
このテのやつは当たり外れが激しいので手控えていたのだが、「このミス」でも1位だし…
スタージョン、ドロンフィールドは過去の作品が合わなかったのでパス。
ディーヴァー「獣たちの庭園 (文春文庫)」は歴史物と、ちょっと毛色が変わってたな、と。
デセプション・ポイント 上」「デセプション・ポイント 下」に「カリフォルニア・ガール (ハヤカワ・ノヴェルズ)
ジーヴズの事件簿 (P・G・ウッドハウス選集 1)」も、安直な言い方だが、なるほど納得の順位といった感じ。
蜘蛛の巣のなかへ (文春文庫)」は、
旅先で読もうと思ってたのだが、ヒマなし体力なしで、いまだ未読だ。


■2005「このミステリーがすごい!」(国内編)
1. 東野圭吾 「容疑者χの献身」
2. 石持浅海 「扉は閉ざされたまま」
3. 横山秀夫 「震度0」
4. 原寮 「おろかもの死すべし」
5. 摩耶雄嵩 「神様ゲーム
6. 藤原伊織 「シリウスの道」
7. 古川日出男 「ベルカ、吠えないのか?」
8. 米澤穂信 「犬はどこだ」
   天城一 「島崎警部のアリバイ事件簿」
10.佐々木譲 「うたう警官」
   光原百合 「最後の願い」


東野圭吾については前述の通り、納得の1位。
8位の「犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)」は、
このランキングを見て、さっそく待機・積ん読リストの上位に入れた。
光原百合の「最後の願い」もそういえば、一気読みの面白さだった。
ただ、あまりミステリー仕立てにしなくてもいいところまで、
ミステリーにこだわってしまっていたのが(ミステリーだから仕方ないのだが…)、
僕的にはマイナスポイントだったかも。
読んでいないどころか、全然知らない本も多いので、
つくづく世界は広いな、とヘンな感想も覚えてみた。


■2005「このミステリーがすごい!」(海外編)
1. ジャック・リッチー 「クライム・マシン」
2. マイクル・コナリー 「暗く聖なる夜」
3. ジェイムズ・カルロス・ブレイク 「無頼の掟」
4. シオドア・スタージョン 「輝く断片」
5. ジェフリー・ディーヴァー 「獣たちの庭園」
6. ジャック・カーリイ 「百番目の男」
   T・ジェファーソン・パーカー 「カリフォルニア・ガール」
8. マイクル・イネス 「ストップ・プレス」
9. P・G・ウッドハウス 「ジーヴズの事件簿」
10.スタンリイ・エリン 「最後の一壜」


文春2位の「クライム・マシン (晶文社ミステリ)」が、こちらでは1位。
ううん、やっぱり面白いのか。ヒマ見つけて読もうっと。
で、こちらもコナリー&スタージョン強しなのだが、ブレイクの「無頼の掟 (文春文庫)」。
ジェイムズ・エルロイみたいな感じなんだろうか、こちらも読んでみたい1冊。
そうそう、ジーヴズはこちらでも9位になっている。
ジーヴス〟に先鞭をつけた国書刊行会版は、どちらにも1冊も入っていないけど、
やっぱり1冊にまとめた文藝春秋マーケティングの勝利なんだろうか。
ストップ・プレス 世界探偵小説全集 (38)」もかなり気になるんだが、どうしても難解そうなイメージが…


以上、これでことしの本の総くくり。
ことしも楽しい本に出会えた1年だった、
というまことに平凡な感想で締めるつもりだったが、
「いつか、パラソルの下で」級に3冊ぐらい出会いたかったな、というわがままな気持ちも。
まあ「風味絶佳」とか、そのレベルという気もするが、まあ何となく。
来年の希望としては、絲山秋子三浦しをん平安寿子藤野千夜瀬尾まいこに、
過去最高の傑作を送り出して欲しいな、という、まことに勝手な願望。
あとはネルソン・デミル、ジェイムズ・エルロイの新刊が読みたい。
ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズの新作も読みたいし、
ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」続編にも、ぜひお目にかかりたい。
あとは、新しい〝お気に入り作家〟を5人くらい見つけることができれば、と切に願う。
そして、最大の望みは、
読んでも読んでも疲れないアタマと、読んでも読んでもなくならないヒマな時間。
いや、高望みだとはわかっているのだけれどね…