梅田ナビオTOHOプレックスで「ミート・ザ・ペアレンツ2」

mike-cat2005-12-09



結婚を控えたゲイロード・フォッカー=ベン・スティラーが、
婚約者パムの父で元CIAの堅物ジャック=ロバート・デニーロに悩まされる、
傑作コメディ「ミート・ザ・ペアレンツ」の続編だ。
原題は〝Meet the Fockers〟
今回は両家顔合わせのため、フロリダにあるゲイロードの実家を、
ゲイロードとパムの両親が訪問する。
しかし、そのフォッカー家の面々もジャックに負けない変人で…。


前作では、ドジな男性看護師ゲイロードが、
ジャックに取り入ろうとして、逆にドジを繰り返し、ドツボにはまりまくった。
デニーロが「Focker」と呼ぶと、どこか「Fucker」に聞こえる間抜けぶり、
ゲイロードが尋問のプロ、ジャックにうそ発見器まで仕掛けられるという顚末。
デニーロのセルフコメディのような元CIAの父の変人っぷりに加え、
受難コメディをやらせたら天下一品、
というスティラーのいじめられっぷりが、とにかく笑える一本だった。


今回はその「デニーロ→スティラー」の図式に加え、
ダスティン・ホフマンバーブラ・ストライザント演じる、
大変人の両親とジャックの対決も、大きな見ものになっている。
しかし、デニーロ&ホフマンという二大俳優が共演のコメディなんて、
ひと昔前なら、絶対にありえないような組み合わせかもしれない。
それも、風刺を訊かせた洒落たコメディというならまだ想像できる。
しかし、この作品はおバカ映画というジャンルをメインストリームに導いた
オースティン・パワーズ」で知られるジェイ・ローチ監督による、おバカ映画の定番。
ドッジボール」「ズーランダー」みたいなベン・スティラー製作のアホ映画よりは、
いくらか偏差値は高めではあるけど、それとて40から50に上がった程度だ。


お笑いも、相も変わらずベタだ。
ある意味、予測がつくというか、見えているギャグが多い。
「くるぞ、くるぞ」と期待し、「あーあ、やっぱり!」とバカ笑いする類のやつ。
〝志村、後ろ後ろ〟みたいなお約束のギャグが満載になっている。
しかし、それもデニーロ、ホフマン、ストライザントとアカデミー俳優、女優が演じると、
またちょっと違う雰囲気になってくるから不思議なモノだ。
何だか、「この人たちも、こういうのやりたかったんだなあ」としみじみ思ってしまう。


ホフマンなんて、「ハッカビーズ」に続いて(あくまで僕が観る限りで、だが…)の、
おバカまるだしのキャラクターを喜々として演じていて、また楽しい。
男性看護師のゲイロードの両親が、
セックスセラピーで生計を立てる母と、元弁護士の主夫というのもすごい。
米国では、まだまだこうした〝男性差別〟の傾向が強いのは微妙だが、
あくまでその設定に乗って、笑えるモノ、として割り切ってしまえば、そう悪くない。


で、スティラーも「ドッジボール」とかよりは抑えめだけど、アホ一直線は変わらず。
本質的には端正なのに、どこか濃すぎて笑ってしまう表情で、
ひたすらいじめ続けられるゲイロードを、陰湿な臭いを消し、うまいことカラリと演じきる。
スティラーだけで評価するなら、「ドッジボール」「ズーランダー」とかの方が好きだけど、
映画全体としてのバランスでいえば、この「ミート〜」のシリーズの方がまとまりがある。


同じスティラー主演作「メリーに首ったけ」のファレリー兄弟のごとく、
この映画でもジェイ・ローチは子ども、動物でも容赦なく笑いの対象にする。
もちろん、陰湿な笑いではないのだが、
過剰なまでの神聖視、過剰なまでの保護の対象にはしない。
子どもも動物も好き放題に悪さをかましてくれるし、
そのぶん、へこまされっぷりもまた笑えるつくりになっている。


最近、観る映画、観る映画、「傑作だ」「面白い」といいまくってしまい、
はなはだ信憑性に欠けるのだが、それでも、この映画は「面白い」と言い切りたい。
もう終了も近くなったいまごろ言うのも何だが、コメディ好きには必見の一本だ。
続編だから、ということで回避する理由も特にない。
映画が始まって5分もすれば、その世界に浸りきれるだけの受け口の広さも魅力だ。
アメリカのコメディ映画歴代興収1位というのも頷ける。
いい意味でも、悪い意味でも安心して楽しめる作品だと思う。
まずは日常を忘れ、115分間、スクリーンの前でバカ笑いして欲しい一本だ。