旅行9日目♪ ケルンからパリに戻る。

mike-cat2005-11-20



大聖堂は朝も壮観そのもの。名残を惜しみつつ、横を通りすぎる。
目に入るのは、やはりクリスマスツリーに、出店準備を終えた屋台の数々。
たぶんきょうがお祭りの日のはず。
惜しいことをしたな、と後ろ髪を引かれつつ駅に向かう。


その悔しさは、朝ごはんにぶつけることにする。
まずは前日も行った駅構内のMeister Bockで、Curry Wurstをいただく。
専用の機械(!)でぶつ切りにしたソーセージにトマトソースとカレー粉をかける。
はっきりいって、とっても俗なお味。しかし、たまらんお味だ。
食べ出したらもう、止まらない。
まだ客の少ない店の軒先で、ガツガツをむさぼる。

続いて別のお店で、いわゆる〝ジャーマン・ポテト〟
以前訪れた天津には、天津飯も天津甘栗もなかったのと同様、
「もしかして〝ジャーマン・ポテト〟というのも本当はないの?」
などと思っていた矢先、発見してちょいと安心しつつこれまたむさぼる。


胸焼けしそうなので、キウィアップルのジュースを飲んだら、
あとは列車の中用のスナックを買い込むのみだ。
まずはサンドイッチを数種と、ドーナツを少々。
多いって? だって、4時間近く乗るのだもの…


パリ行きのタリス、今回は1等車で予約していた。
列車での移動も最後だし、何しろ4時間弱。
少しでも快適な旅を、ということなのだが、やはりタリスは1等車もどこか薄汚い。
もう、国民性の問題なのだと思う。
街並み同様、遠目に見ればきれいでも、近くに寄ると、メンテナンスの粗さが目立つ。
その上、ヘンなインド人風の男が大荷物を抱えて入り口で立ち往生、
カートを放り出したあげく、荷物置き場を占領する傍若無人のふるまいを見せる。
まったくもう、と思いつつ、荷物を置くスペースを探して右往左往。
全然道を譲らないフランス人のおかげで、重たい荷物を上げ下ろしするハメとなり、
結局この疲れが翌日の偏頭痛につながる。まったく、インド人め…
まあ、それでも1等車は座席は広いし、飲み物も出してくれる。
ゆったりとしつつ、車窓を眺め、買い込んだサンドイッチなどをつまむ。


そうこうして、腹一杯になってひと眠りすると、食事のサービスがやってくる。
ああ、そうだった、食事付きだった、と気づくのはもう数時間も遅すぎ。
腹一杯なので、とりあえず奥さまと1人分だけミールをもらう。
だが、どうせ車内食だから… と見くびっていると、これが意外といける。
冷たいローストビーフに野菜、パンにはひとくちサイズのブリーチーズ付。
バターもなかなか風味があったりして、「何だよ始めから言えよ」という感じだ。
食事があることを忘れていたのは、自分が悪い、というのは考えないことにする。


しばらくすると、Paris Nordに到着。
1週間ぶりのパリは、相も変わらず寒い。
まあどこも寒いのだが、パリの寒さはまたどこか痛みを感じる寒さだ。
やっぱり、乾燥が原因なのだろうか。
いきなり肌がキシキシと音を立てているような気がしてくる。


メトロ4号線 St.Germain Des Presへ。
日曜日のためか、清掃不十分でくっっっさい臭い漂う駅構内を抜け、ホテルへ向かう。
最後のホテルはAu Manoir Saint-Germain Des Prés。
サンジェルマン・デ・プレ教会のはす向かいに位置するプチ・ホテルだ。
まずはチェックイン。アラブ系っぽいフロントマンは対応もていねいで好感度◎。
パリで最初に泊まったルーブル・サントノーレとは、格段に違う対応だ。
やっぱり、プチ・ホテルにもいろいろあるということか。


ホテルに荷物を置き、サンジェルマン・デ・プレをしげしげと眺める。
すると、左からローラーブレードの一団が現れる。
警察による交通規制の中、一団はゆうゆうと滑っていく。
近くの警察官に「これ、何?」と訊いたら、答えてくれたのだがよくわからず。
つくづく、自分のヒアリング能力の低さを呪ってみる。


ここから、散策がてら、セーヌ川方面に向かう。
途中、大好きな紅茶のお店、マリアージュ Mariage Freresをのぞく。
サロンがあるので、ちょいとお茶でも、と思ったが大混雑…。
あきらめて再び、歩き始めると気になる看板がある。
掲げられているのは、学校のような施設の前。
ピカソが「ゲルニカ」を描いたアトリエとか、そういうことが書いてあるらしい。
ほかにもバルザックの「Le chef-d’oeuvre inconnu」にも縁がある、
とか書いてあるが、詳細はわからず。だってフランス語わからないもの…


そうこうしている間にポン・ヌフに到着。
ああ、レオス・カラックスだ、ジュリエット・ビノシュだ、などと思い浮かべ、橋を渡る。
しかし「ポンヌフの恋人」、観たのだが話は全然覚えていなかったりもする。
まったく僕というヤツは…、という反省もそこそこに、シテ島の先っちょの公園へ。
ポン・ヌフを眺めうっとり、対岸に見えるルーブル美術館を眺めうっとり。

晩秋にも関わらず、花なんかも咲いていて、まことに気持ちがいい。
ここから発着の遊覧船の時刻表だけチェックして、シテ島散策に向かう。


最高裁を横目に、ノートルダム寺院の方向へ。
川沿いの道を歩いていくと、見えてきた、見えてきた。
「おお、あれが有名な」と思いきや、どこか違和感が漂う。
写真とかで見たのとだいぶ違うような…

疑問を感じつつ、近づいていく。
「ああ、やっぱり立派な建物で…」なんて思いながら、すぐ手前の橋を渡る。
ここでノートルダム寺院を横から見て、ようやく「なるほど」と気づく。

有名な絵柄は、横から見た寺院だったらしい。
なるほど、あの尖塔が見えないから、全然違う建物に見えたのか、と納得する。


で、それはそれとして、
ノートルダム対岸のアイスクリームショップ、Dammann's Glacierへ。
寺院には申し訳ないが、当初の目的は実はこちらだったりする。罰当たり…
看板がやったらとかわいかったり、
ガラス扉のドアノブが、アイスクリームを象った真鍮だったり…
とにかく、美味しそうな雰囲気がプンプンと漂ってくる。

イチ押しらしい、塩バターキャラメルにミントティー、マンゴーをいただく。
これはもう、絶品としかいいようがない。
塩バターキャラメルといえば、吉祥寺のパティスリー、ア・テスウェイが好きだった。
ブルターニュ産の塩を使い、かすかな塩っ気で甘さと深い味わいを引き出す。
あの感覚を、そのまんまアイスクリームに閉じ込めた感じだ。
濃厚だけど、しつこくない、という矛盾あふれる味は、お口に至福の時をもたらす。
ミントティー、マンゴーも風味豊かで、これまたたまらない。
ノートルダム寺院のことすら、一瞬忘れてしまうぐらいの感激を胸に、店を後にする。


次に向かうはサンルイ島だ。
雑貨だの、カフェだの、楽しくなるようなお店が並ぶこの島、
日曜日でも開いている店も多いため、人出はやたらと多い。
夕陽に照らされる島の様子が、やけにきれいだな、と思って振り向くと、
そこには夕焼けの中に浮かぶノートルダム寺院が!

一瞬でも忘れてごめんなさい、というくらいの素敵な光景にまた感激。
でも、それも結局すぐに忘れ、クレープリー Au Lys d'Argentへ入店する。
「銀の百合」を意味するこのお店はもちろん、数十種類のクレープがウリだ。
はちみつのクレープと、リンゴ&レーズン&キャラメルのクレープを注文。

さっそく、ひとくちいただく。すごい… これがまた、すごいのだ。
甘くとろける舌触り、そして柔らかな香りと、何をとっても文句なし。
紅茶も丁寧に入れてくれているようで、こちらも香り豊かだ。
いいかげん冷えきっていた身体も(そりゃ、アイスとか食ってるし…)、
急速に回復の兆しを見せ、落ち着きを取り戻す。


またも満足感をお口に残し、こんどは化粧品のL'Occitaneへ。
もう、日本でもすっかりお馴染みのお店で、僕も数年来愛用中だ。
値段も日本とさほど変わらないので、ポイントカードもあるし、
日本で買った方がお得とはわかっているのだが、旅行中にボディミルクが品切れ。
この乾燥の中で身体を守るには不可欠なので、ここで購入する。
これまでのマグノリア木蓮)から、こんどは7種類の花の香りのやつにチェンジ。
マグノリアより匂いは鮮烈というか、だいぶ強い感じなのだが、
ヨーロッパにいるとまあ、そういうのもアリかな、という気になってくる。
髪が傷み始めた奥さまにはヘアクリームも購入。
こまごまとしたことを訊いても、店員さんが英語できちんと対応してくれる。


お次は、スパイスや塩、各種ジャムなどを扱うL'Epicerieへ。
ここも雰囲気がとても気持ちのよい店だ。
特にずらりと並んだジャムの数々には、ひたすらため息がもれそうになる。
定番のベリー類だけでも数十種類、ほかにもバナナ&ラムやら、何やら目移りしまくる。
最近お気に入りのメゾン・フェルベール(伊勢丹ならWebでも購入可)みたいな感じで、
時間を忘れて「ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪」と、うきうきと選ぶ。
結局は重さに負け、ルバーブとバナナの2つのみに終わる。
どちらも名前の後にいろいろ書いてあるのだが、
まあ、たぶん産地だろう、とたかをくくって無視する。後で泣きを見たりして…


続いて、Cacao et Chocoratで、マカロンなどを購入する。
こちらも先ほどのアイスの乗りで、塩バターキャラメルなどなど数個。
本当に食べきれるのか、だいぶ不安はあるのだが、
ここで食べないで、いつ食べるのさ、と自分を言い聞かせ、財布を開く。
サン・ルイ島最後のお目当ては、またもアイスクリーム。

チョコレートアイスで有名な老舗Berthillonだ。
チョコレート・シャーベットのカカオ・エクストラ・ビター、ペッシュ(桃)をいただく。
カカオ〜は、口の中がカカオで満たされる濃厚さなのだが、後味さわやか。
雑誌「Title」の特集に書いてあった通り、と妙な感心をしつつ、ガツガツ食べる。
ジャン=ポール・エヴァンのチョコレートアイスも好きでよく食べるのだが、
どちらかひとつ、と言われたら、かなり悩むかもしれない。
滑らかさ、という意味ではエヴァンだが、カカオの鮮烈さではこちらベルティヨンだ。
どちらも甲乙つけがたいが、少なくともピエール・マルコリーニよりは上だと思う。
ペッシュも柔らかい桃の味と香りが、また違う感激をもたらしてくれる。
極上のベリーニを飲んでいるような、そんな体験だった。


で、ここらへんで自然が僕を呼ぶのだ、何しろ寒いし。
だらだらと歩いてよさげなお店を探すのだが、どうもピンとこない。
結局、サンジェルマン大通りのスターバックスへ。
最近パリでも増えているらしいが、理由はすぐにわかる。流行ってるし、大混雑。
トイレも当然ちょいと並ばされるハメになる。
久しぶりにガマンの憂き目を見るが、幸い自然はNo.1だったのでよかった。
No.2のガマンばっかりは、本当につらいし、情けないので、ね…。


いったんホテルに戻り、Marche St.Germain横を通り抜け、高級惣菜店Gerard Mulotへ。
サンドイッチ、トマトとモッツァレラ、にんじんサラダ、キッシュなどなどを買い込む。
改装中とあって、外見はともかく、中の雰囲気はまずまず。
しかし、ちょっと店員の感じは悪いかも。
その後知ったのだが、日本のデパートにもずいぶん出店してるらしい。
お味はどれもまずまずだったが、印象的には、マイナスかも。


ここからRue de Buciを抜け、Rue de Seineからサンジェルマン大通りへ戻る。
お目当ては高級食材店のDa Rosa。
まずはイベリコ豚の生ハムや、かぐわしい香りのサラミを購入。
かわいらしいパッケージのチョコレートをざくざくと買い込む。
雑誌によると、
ワイン漬けの白葡萄をチョコレートで包んだレザン・オ・ソーテルヌが有名とか。
しかし、現在品切れ中、とのことらしく、店内には見当たらず。


その時、後から訪れた日本人カップルが、大きな声でぎゃあぎゃあわめき散らす。
まずはアーモンドチョコレートを買おうとしたらしく、レジへ向い、
その後、それがお目当てのレザン〜でないことに気づいたらしい。
まずは包みかけた商品を無理矢理払い戻し、
さらにフランス語どころか、英語すら使わず、ひたすら日本語でぐいぐい店員に攻め込む。
「ないの? レーズンのが欲しいの。ないの?」
海外に出て、日本人としてもっとも恥ずかしい光景…
欲しい気持ちはわかるが、その振る舞いは本当にみっともない。
一応、3日後に入荷らしい、という店員の言葉が漏れ聞こえる。
それでようやく理解したらしい。ようやくあきらめて出て行った。
お願いです。あなた方は日本にとどまってて下さい。恥ずかしいから…


まあ、そういう事件は忘れ、戦利品を手にホテルへ戻る。
移動の疲れもあって、これでディナーをすませることに。
しかし、イベリコ豚の生ハムは、たまらないよ。
口の中で脂肪がとろける感触といったら、上物の大トロにも負けず劣らず。
ドングリがどうやってこの脂肪に化けるのか、つくづく生命の神秘だ。
なんて考えていると、もう眠気に襲われ、ダウン。
こうして、9日目を終えたのだった。