なんば千日前・敷島シネポップで「ステルス」

mike-cat2005-10-11



時は近未来、米海軍は対テロ対策チームを設立した。
集められたのはトップガン中のトップガン3人組。
ベン=ジョシュ・ルーカス(「メラニーは行く!」)
カーラ=ジェシカ・ビール(「テキサス・チェーンソー」)
ヘンリー=ジェイミー・フォックス(「RAY/レイ」「コラテラル」)
そして、人工知能が操縦する無人ステルス戦闘機「EDI」だった。
驚異的な能力で作戦を実行する「EDI」。
だが、「EDI」はある日、命令無視の暴走を始めるのだった−


「ウォーゲーム」+「トップガン」+「エネミーライン」だろうか。
これにやや「ターミネーター2」の風味が加わる。
まあ、これまで百回ぐらい作られたプロットを適当に組み合わせた感じ。
取り立てて新しいこともないし、取り立てて優れた趣向もない。
で、その内容に至っては、ひとことで言ってムチャクチャだ。


別に軍マニアでも、戦闘機マニアでもないので、
もしかしたら僕のほうが間違っているのかも知れないが、
対テロ部隊の命令系統はどう見ても軍にそぐわないし、
携帯でお気軽に機密指令とか出してしまうし、
ステルス戦闘機の編隊もどう見ても近づきすぎだし、
超低空を音速で飛んだら、地面に反射した衝撃波で飛行機壊れるはずだし、
コンバットシーンもかなりムチャな反転とかしてしまうし、
ジェット燃料の給油口をバルカンで撃っても引火しないし、
対テロを名目に、世界中を吹き飛ばしまくるし(あ、それは現実にやってるか…)、
北朝鮮とか平気で侵入して、戦争まがいの戦闘を繰り広げちゃうし、
カーラ役のジェシカ・ビールのお色気映像のために、無理矢理なシーンを作るし…
と、まあ突っ込みどころは満載の上に満載だったりする。


これに、ストーリー上の矛盾を指摘していったら、もう収拾がつかない。
「あれがこうなって、こうなるのに何で?」みたいなことを、
まじめに考え始めたら、こんな単純なストーリーすら追い切れなくなる。


ただ、だ。
監督が「ワイルド・スピード」「トリプルX」のロブ・コーエンなのだ。
変わった趣向なんて、実は最初から期待していない。
とりあえず120分、ムチャクチャでもいいから楽しめればいいや、みたいな…
だから、対テロ部隊がそこら中をぶっ飛ばしても、
戦闘機がどう考えてもムチャな動きをして見せても、
〝近未来だから、何でも可能なのだ、これでいいのだ〟と、
バカボンパパのように、受け流してしまえば、これはこれで楽しめるのだ。
さすれば、ストーリー上の矛盾すら、見逃すだけの余裕ができる。


そうやってみると、この映画もなかなか悪くないのだ。
まあ、とりあえずスピード感あふれる、迫力ある映像はなかなかだ。
緊迫感、という意味ではやや物足りなさもあるが、面白い、の範疇には入るはずだ。
ジェシカ・ビールのお色気サービスもまずまず。
ビキニに、胸元強調ドレス、タンクトップ、と一応一通り、オトコの要望に応える。
まあ、濡れたタンクトップで逃げまどい、
おっぱいプルプルやってた「テキサス・チェーンソー」には及ばないが…


ストーリーのひねりも別にまったくないわけでもない。
「本当に暴走したのは、〝誰〟だったのか」
「コンピューターは人間に取って代わることができるのか」という、
お馴染みの命題も、それなりに扱ってみせるし、
「EDI」のキャラクター設定が、これまたなかなか悪くないのだ。


この「EDI」、いかにも人工知能らしく、学習するのだ。
で、学習するお手本が、はみ出し者のトップガン、ベンだったりする。
時にルールを無視したり、時に上官の命令を聞かなかったり…
で、それを見て取った「EDI」が、
「だってパパだってやってんじゃん!」とばかりに暴走する。
なるほど、その後の展開でも、
「EDI」の学習効果が、いい感じでストーリーのカギとなる。
何せ、ハイパーはみ出し者、なので、いろいろと機転も利くわけだ。
それがご都合主義になっている点も否めないけど、それなりに面白かったりするのだ。
感情を持った「EDI」が全世界の音楽をダウンロードしてしまい、
ハードロックを外部スピーカーでかき鳴らしながら、爆撃をかますあたりなんかは、
地獄の黙示録」のキルゴア中佐ノリで、ちょっと笑えたりもする。


映画の冒頭で予告される、「エンドクレジット後の映像」はまあ定番中の定番。
むしろ、そうなった場合、
ターミネーター2」的な展開も見えたりして、やややり過ぎ感も漂う。
わざわざ予告しないでもいいし、
もっとシャレのきついラストでもよかったのでは、とも思った。
しかし、そこまでの映画のノリを考えれば、それもあまり違和感を感じない。
徹底的なトホホアクションとして、これも許してあげたくなるのが不思議だ。


もちろん、1800円払って、期待に胸を膨らませて観に行ったら、
よっぽどのジェシカ・ビール・ファン以外は、怒りに打ち震えるに違いない。
しかし、すべてを了解の上で、割引料金で行くなら、けっこう楽しめる。
褒めてるんだか、けなしてるんだが、けっこう微妙なのだが、
ある意味とても限定的な楽しみ方を強いられる作品であることは、間違いないのだ。