心斎橋・パラダイスシネマで「おまけつき新婚生活」

mike-cat2005-09-20



東京公開はたしか7月。大阪ではいつになったら公開するのやら…、
と思っていたら唐突にレイトショー公開となったベン・スティラー〝最新作〟。
アメリカでは2003年公開映画が、どうしてこれだけ塩漬けにされるんだね?
と、ひとしきりブツブツ文句を垂れつつ、心斎橋アメリカ村に向かう。


ニューヨークで、手ごろな住宅を探していた、
中堅作家のアレックス=ベン・スティラーと、雑誌編集者のナンシー=ドリュー・バリモア
の新婚カップルはある日、ブルックリンに、値段も手ごろで年代物の洒落たメゾネットに遭遇する。
ただひとつ、問題はお安い固定賃金で暮らす間借り人がいる、デュプレックス(二世帯住宅)であること。
100歳近い、との触れ込みのミセス・コネリーとあって〝あと少し〟を見込んで購入を決めた夫妻。
しかし、このミセス・コネリー、何ととんでもない婆さんだった…


どんな塩梅でとんでもないか、といえば、もう見るに耐えないレベルといっていい。
ネバーランド」では、ジョニー・デップ演ずるジェームズ・バリを激励する老婦人役で、
温かい涙を誘ったアイリーン・エセルが、もう歯ぎしりしたくなるような〝ヤな婆ァ〟を熱演する。
というか、表現が不適切を承知でいうと「息の根を止めたくなる」ぐらいの婆さんを演じるのだ。
一見弱々しく、しかし巧妙に相手を操る、というやり手ぶりだけではない。
果てしない嫌みの数々に、悪意たっぷりの嫌がらせ。
以前話題になった、騒音バアさんを思い出させるような、嫌悪感すら抱かせる。
正直、やり過ぎだ。あまりのやり過ぎぶりに、引いてしまうほどだ。


しかし、この映画の凄いところは、それを受け止めるいじめられキャラが存在するということ。
そう、われらがベン・スティラーが、徹底的にその嫌がらせを受け止める。
つまり、嫌悪感を抱くぐらいの嫌がらせをされても、スティラー演じるアレックスの姿は笑えるのだ。
微妙に小利口で、微妙にずるいことも考えてる、というバランスがとてもいい。
いじめられている姿は可哀相なのだが、その中にも一種スラップスティックな構図が出来上がる。
それは、土流親方ことドリュー・バリモアも同じ。
現実世界では絶対にシャレにならない嫌がらせを受けても、
映画の世界のドリューって、どこか大丈夫そうに見えてしまうのだから、不思議だ。
その姿は、まるでシルベスターであり、コヨーテであり、トムであったりするのだ。
だから、悲惨なのに不思議なぐらい笑えてしまう。「まあ、いいか」ってな具合だ。


もちろん、それでも「ちょっと…」と思う場面は、決して少なくない。
やっぱり、現実世界でもよくある、隣人とのトラブルを思い起こさせて、イヤな気分になることもあった。
で、さらにいわゆるアメリカン・コメディではあるから、ギャグはベタだ。
くだらない、と言い切る向きもあるだろう。
これまでにベン・スティラーの映画を見て「こんなもの…」と思ったヒトには、まあお勧めはできない。


それでも、だ。
まことに微妙な余韻を残すラストも含め、いかにもベン・スティラーっぽい、ヘンな映画ではある。
ついでにいえば、ドリューのテーマことスパンダー・バレエ「トゥルー」がかかるシーンなんて、
もういかにも、ドリュー映画っぽさが醸し出されている。
そう考えると、問題点の多い映画ではあるけど、ファンなら楽しめる部分も多い。
ベン・スティラーのベストどころか、ベスト5にも入らない作品ではあるけど、
何だか捨てがたい魅力をどこか兼ね備えた作品ではあると思う。
「DVDで十分」。そう言われると、ムキになって反論もできないのだが、
どこか気になる、そして何となく捨てがたい魅力のある作品ではあるのだった。