梅田ブルク7で「マダガスカル」

mike-cat2005-08-17



ロボッツ」といい、夏休みとあって、こういう映画が続いてる…
いや、好きは好きなんで、観るのは楽しいんだが、
公開カレンダーには超大作とアニメばかり、
という状況を目の当たりにすると、東京にいないことの悲哀をひしひしと感じる。
やっぱり、ミニシアター系があまりにも少なすぎる…


それはともかく、お楽しみの「マダガスカル」。
主役はニューヨークのセントラルパーク・ズーに住む動物たち。
明るい人気者のライオン、アレックスに、好奇心旺盛なシマウマのマーティー
軽く神経症気味なキリンのメルマン、そして肝っ玉姉御のカバ、グロリア…
彼らは、ニューヨーカーとしての暮らしを満喫していた。
しかしある日、南極行きを目指し、動物園脱出を狙うペンギンたちの言葉に、
触発されたマーティーは、野生の王国への憧れを抱く。
朝までには帰るつもりで、ためしに動物園からでかけたマーティーだったが、
これが、とんだ騒動に発展。アフリカに送り返されるハメになった。
だが、その船にも例のペンギンたちが乗り込んでいたのだった…


シュレック」「シャーク・テイル」に続くドリームワークス製作のCGアニメだ。
つまり、実際の観客層はともかく、使われるネタは意外にアダルト向け。
オトナの鑑賞に耐えうる、というのではなく、
いい歳こいたオトナでも、素直に楽しめるレベルの作品に仕上がっている。
声のメンツも、もちろん豪華そのものだ。
まずは主演級の4人(匹?)組。
アレックス→ベン・スティラー(「ドッジボール」「ズーランダー」)
マーティークリス・ロック(「リーサル・ウェポン4」「9デイズ」)
メルマン→デーヴィッド・シュワイマー(「6デイズ7ナイツ」TV「フレンズ」)
グロリア→ジェイダ・ピンケット=スミス(「マトリックス・リローデッド」「アリ」)


スティラーの名前が出ると、
どうしてもいつものアホ映画のイメージがつきまとうが、今回は意外と控えめ。
あくまでも役者スティラーとして、生粋のニューヨーカー・ライオンの役に徹している。
普通の役者として「僕たちのアナ・バナナ」や「リアリティ・バイツ」を思い出したりして、
これはこれで悪くなかったりする。


じゃあ、何でスティラーが抑えめかというと、理由はここにぶち当たる。
クリス・ロック、だ。
あの調子、といっても知らないヒトはわからないだろうが、とにかくずっとしゃべってる。
シュレック」のドンキー=エディ・マーフィーより、
さらに騒がしくしゃべってる、といえばイメージが湧きやすくなるだろうか。
もちろん、クリス・ロック本人出演の映画より、しゃべっている内容はずいぶんマトモだけど、
その凄まじいマシンガントークは、しゃべっているのがシマウマであることを忘れるほど。
つまり、かなりクドいぐらいに、〝クリス・ロック〟してる。
そんなこんなでロックの全開モードを考えると、
スティラーがそのまんまバカキャラやったら収拾がつかなくなるのは明白だろう。
おとなしめスティラー×全開ロックだからこそ、この映画に味が出るのだ。
ほかの二人、シュワイマー、ピンケット=スミスも、
ロックのとんでもなく高いトーンをうまいことカバーしていて、またいい組み合わせ。
ただただ豪華キャストを連ねるだけじゃない、ドリームワークスのうまさを感じさせる。


しかし、この4匹だけでは〝当たり前〟のファミリー向けコメディに終わりかねない。
そこを強烈にカバーしてしまうのが、まずは先にも触れたペンギンたち。
〝Skipper〟〝Rico〟〝 Kowalski〟〝 Private〟の4匹がまことに香ばしいのだ。
見た目はもちろん、かわいいペンペンたちにしか見えない。
だが、すべての騒動の発端になるこの鳥たちの〝邪さ〟たるや、
もうひたすら笑ってしまうしかないレベルにまで、到達している。
名前からもわかるように、ちょっとした特殊部隊のような特技と団結で、
状況をたくみにコントロールしていく。


あのヒレが時に手刀のように、敵をなぎ倒したり、
本来のペンギンのかわいい仕種が、まるで作戦行動のようになってみたり…
映画全体を通しても、笑う場面には事欠かないが、このペンギンたちが出ている時は格別だ。
とにかくかわいいし、その悪どさが、とにかく笑える。
そういえば「ファインディング・ニモ」でも僕の一番のお気に入りはカモメたちだったっけ。
映画の本筋よりも、そういう枝葉末節に目が行ってしまう、
集中力のなさには、自分でも笑ってしまうしかないんだが…


それはともかく、このペンギンたち、だ。
短編でも長編でもいいから、ぜひにスピンオフを作って欲しい!
と、思っていたら、やっぱりもう作っているんだとか。
DVDの特典にプラスしてくれたりしたら、絶対に買うんだけどな…


香ばしいサブキャラはペンギンたちだけではない。
マダガスカルで出会う、キツネザルたちだって、負けてはいない。
もちろん、姿形は(アメリカっぽい)かわいさが光るんだけど、
いかにも小動物的な、中途半端なずるがしこさと、間抜けぶりが、こちらも笑いを誘う。
踊り好きでお調子者の王様、キング・ジュリアの声を演じるのが、
イギリスの人気コメディアンで「Da Ali G Show」のホストで〝アリG〟を演じる、サシャ・バロン・コーエンだ。
何の訛りだか、よくわからないようなしゃべりで笑わせまくり、
いい話、になりそうな映画を、ぐにゃりと間抜けな世界に引きずり込む。


そのキング・ジュリアにちょっと批判的なお付きの者、モーリスを、セドリック・ジ・エンターティナーが演じる。
あちらでは大ヒットした「バーバーショップ」を始め、
「ビッグ・ママズ・ハウス」「ディボース・ショウ」などで存在感を発揮するコメディアン。
コーエンとの掛け合いは、
ストーリーに縛られるスティラー×マーティーのそれより、さらにおふざけ全開で炸裂している。
たぶん、完全にこの二人を意識して作ったようなキャラクターだが、
映画に欠かせない存在として、ひたすら笑いをもたらしてくれる。


ストーリー全体を見回しても、いかにもな説教クササもないのは好感が持てる。
キャスト・アウェイ」「アメリカン・ビューティー」などのパロディも挿入はされているが、
過剰なパロディでストーリーが分断される、という〝やり過ぎ〟もない。
CGの技術とかも、たぶんとんでもなくすごいレベルで作っているはずだが、
その部分を強調しすぎるような、嫌らしさもない。
86分間、笑って楽しんで、という部分を大事に、徹底して作り込んだエンタテイメントだ。
僕がよく使う言葉だと〝ウェルメイド〟な娯楽大作。
でも、この映画ほどその〝ウェルメイド〟がふさわしい作品も、そう多くない。
もともと期待も大きかったが、実際の出来は、はっきりいってそれ以上。
もっともっと拡大公開して、大ヒットして欲しい映画だと思う。
やけに続編を意識したようなラストが、やや気になる部分もあるが、
それはそれパート2を楽しみにすればいいだけ、と考えてみるのも悪くない、かも。