天王寺アポロシネマ8で「バットマン・ビギンズ」

mike-cat2005-07-04



各方面で評判がよかったので、満を持して観に行く。
バットマン」といえば、カルト的趣味に走りつつ、
なおかつ興行面でも大成功したティム・バートン版はともかく、
〝ミスター無難〟ジョエル・シュマッカーが撮るようになってからは、
その独特のダークな世界観と、娯楽性の狭間で、苦しんできた印象が強い。
正直いって、鑑賞に耐えるのは「バットマン・リターンズ」まで。
それ以降は、「バットマン・フォーエバー」や「バットマン&ロビン」と
どれを観ても、豪華キャストによる空回りを続けるばかりだった。
ま、もっと単純な問題として、作りすぎ、というのもあるのだが。


それが、キャストも監督も一新し、バットマン誕生の原点に帰るという。
それも、監督が「メメント」「インソムニア」のクリストファー・ノーラン
期待をせずにはいられなかったけど、一抹の不安もあった。
バットマン役が「マシニスト」「アメリカン・サイコ」のクリスチャン・ベイル
何か顔が間延びしてないかなぁ、と微妙な感覚だった。
まあ、初代バットマンだって意外や意外、
マイケル・キートンがハマってたことを考えれば、大丈夫かもしれないし、とも思ったが。
いわゆる客寄せパンダ的な豪華スターはいないけど、
渋いベテラン俳優陣が、あまりにも豪華に配してあるのも、引っ掛かった。
こんな凄いヒトたち、使い切れるの?、という単純な疑問。
顔見せ的な感じで出られても困るし、存在感ありすぎでも困る。
バランス的に、難しいんじゃないかな、というのが予想だった。


しかし、そういったもろもろの不安は、けっこうあっさり払拭される。
ま、クリスチャン・ベイルについては、賛否両論あるかも知れないけど、及第点。
バットマンのマスクともども、地肌が見えてる口部分が微妙にカッコ悪いんだけど、
ヴァル・キルマーより全然いいし、ジョージ・クルーニーみたいに濃すぎない。
マイケル・キートンほどじゃないが、決して悪くはない。
まあ、いつ名刺の出来をめぐって、隣のヤツを殺してしまう(「アメリカン・サイコ」)のか、
そんな妄想が頭をよぎらなかったか、といえば、よぎったんだけど。


豪華なベテラン勢も、うまく使えていたと思う。
リーアム・ニーソンマイケル・ケインモーガン・フリーマンに、
ゲイリー・オールドマントム・ウィルキンソンルトガー・ハウアー
リーアム・ニーソンは、「スター・ウォーズ」のアナキン・スカイウォーカーに続いて、
バットマンまで見出していたとは! という笑いは抜きにして、やっぱり貫録十分。
ルフレッド役のマイケル・ケインは、コメディ・センスも含め、
〝先代〟アルフレッドのマイケル・ガフに匹敵するいい感じの雰囲気を醸し出している。
モーガン・フリーマンは出ているだけでだいぶ反則ではあるけど、
これはこれで、まだ未熟なバットマンをカバーする意味でも、絶妙のスパイス。
ゲイリー・オールドマンといえば、「レオン」「蜘蛛女」と悪徳刑事の代名詞で、
何か善玉刑事がムチャクチャ似合わないけど、今回は脱力した刑事役が、妙に面白い。
イン・ザ・ベッドルームトム・ウィルキンソンも、
ちょいと無駄遣い感あるけど、映画全体のバランスを考えるといい使い方だと思う。
ルトガー・ハウアーは、途中まで気付かなかった。歳取ったのね。
でも、にじみ出るヒトの悪さが、これまたいい味を出していたんじゃないだろうか。
ああ、渡辺謙? あれはあくまでチョイ役。
ま、ハリウッドではまだまだ新人だし、しかたない。


で、肝心の映画そのものの出来だ。
完成度の高さではバートン版「バットマン」には及ばないけど、
バットマンというキャラクターへの思い入れを脇に置いて、
単純に娯楽大作として見たら、満足度は正直なトコ上回っているかもしれない。
弱点は確かにある。
たとえば、スケアクロウキリアン・マーフィー(「28日後」)は、ちょっと印象が薄いし、
ヒロインのケイティー・ホルムズも、実生活はともかく、
女優として、美しさの方は旬は過ぎてる感が強い。(昔かわいかったのに…)
だが、こういうとこを差っ引いても、率直に面白い。
序盤から見どころ満載だし、ドラマ的な部分もまずまずきっちり描いてる。
ストーリーも、いい感じにひとひねりあって、大人の鑑賞に耐えうるレベルになっている。
そうそう、バットマンといえば、バットモービルだが、こちらもなかなか凄い。
バートン版のアメ車っぽいノリのも好きだった。
あの、高速で曲がる時は、ワイヤーをどっかに引っかけて曲がる、究極のムダ車。
今作のタンクっぽいのは、実用性一辺倒のフォルムに、
最初はちょっと引っ掛かったが、実際のカーアクションを観て納得した。超クールだ。


最後のヒキも、なかなかうまかったと思う。
あれならファンは、次回作への期待でワクワクしながら、
エンドクレジットを見つめることができる。
ちなみに、http://www.allcinema.net/によれば、
バートン版で演じた〝ジョーカー〟が再登場とのこと。
どうも、前作まではチャラにして、全部作り直し、ということらしい。
ノーラン監督は、ショーン・ペンを希望しているとの情報だけど、
かなり期待と不安が入り交じる。たぶん、ペンが受けないだろうけどね。


バートン版「バットマン」の時みたいな、スペシャル感には欠けるけど、
夏の大作として、見逃せない一本には仕上がっている。
少なくとも「宇宙戦争」よりは全然上だし、
これまでの5作品(もしくは2作品)を観ていないヒトには「スター・ウォーズ」とも互角かも。
140分という長尺も、さほど気にならなかった。
次回作への期待も込めて、Two Thumbs Up! の作品だった。