なんば千日前・敷島シネポップで「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」

mike-cat2005-06-26



前夜、というか未明というか…、先々行オールナイトに行ってきた。午前2時の上映にも関わらず、異様な雰囲気が漂う。
何か鼻息荒いヒトが多い。
シリーズへの想いとか語らせたら、ずっとしゃべってそうなヒトがたくさん。
いや、つくづくとんでもないイベントムービーだと感心する。
って、自分もイベントに丸乗りしているくせに、思ってみる。


しかし、やっぱりすごいぞ。
映画始まって1秒でヒトを泣かせる映画もなかなかない。
〝A long time ago in a galaxy far,faraway…〟
「ジャーン♪」という大音響ともに、画面に広がる「STAR WARS」。
「ああ、やっと…」。
こどもの頃、エピソードⅣを見た時の衝撃がふたたび体を走り、
何度となく味わい続けてきた一大サーガの
最後のミッシング・ピースが、ついに目の前に差し出される。
〝特別な映画〟だけが醸し出すことのできる、漲るような期待感。
その瞬間、あの圧倒的な衝撃にふたたび浸り始めるのだ。


映画はエピソードⅡのクローン大戦から3年後。
ドゥークー伯爵に誘拐された元老院パルパティーン最高議長のもとに、
オビ=ワン・ケノービユアン・マクレガーと、アナキン・スカイウォーカーヘイデン・クリステンセン
が、救出に向かうところから始まる。
そしてアナキンは、ジェダイの掟を破り、パドメ=ナタリー・ポートマンと結婚、
パドメの妊娠を知らされたアナキンは、ある日を境に予知夢とも思える悪夢に悩まされる。
加えてジェダイ評議会での冷遇、オビ・ワンへの反発などがアナキンをいら立たせる。
そんな時にかけられる、パルパティーンの甘言。
アナキンのこころは、次第に暗黒面(ダークサイド)に引き込まれていくのだった。


考えてみれば、
もうエピソードⅣ(「スター・ウォーズ」)、Ⅴ(「帝国の逆襲」)、Ⅵ(「ジェダイの復讐」)と、
その後の話は全部わかっているわけで、
アナキンがその後どうなっていくか、がわかりきった上での〝つなぎ〟の映画でもある。
わかりきった中で、どう新しい要素を加え、これ1本としての完成度を高めた上で、
従来のファンを満足させるような形で、スムーズに「Ⅳ」につなげるか。
かなり難しい命題だと思う。
〝完結編〟とあって、観る方の期待は、すさまじく高い。
酷評にさらされた「エピソードⅠ ファントム・メナス」の時より、さらに難しい状況だたったと思う。


だが、健闘したんじゃないだろうか。
少なくとも、映画はとても楽しかった。理由は二つ。
映画の大半を占めるのが、果てしなく続く「戦闘シーン」だったこと。
それも、そのレベルが半端じゃなくすごい。
たぶん、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」でやりたかったことの、
集大成といってもいいのじゃないだろうか。
物語上のメインとなる各対決部分に関しては、期待していたのに、呆気ない印象は強い。
たとえば、ドゥークー×オビ=ワン&アナキン、ダース・シディアス×メイス・ウィンドゥ、
ダース・シディアス×ヨーダ、そしてクライマックスのアナキン×オビ=ワン…


しかし、ほかが凄い。戦艦とか戦闘機による宇宙艦隊戦、
チューバッカ登場に心躍るウーキー軍団と、ドロイドたちの白兵戦、
この作品の個人的一押しキャラクター、グリーバスとオビ・ワンの対決などなど、
ダイナミックな動きに、細かいギミックが散りばめられ、
普通の映画ならそれだけでクライマックスに転用できるような、極上の場面だらけ。
そして、この大量に並べられた高カロリーの各シーンを、
惜しげもなく短いシークエンスに刈り込み、テンポよくまとめているる。
ある意味、至高の贅沢といっていい。


そして面白かった理由もう一つ。
やっぱり話が暗いから、だろう。
このシリーズ、最高傑作と評価が高いのが、ルークが腕切られるわ、衝撃の告白を聞いちゃうわ、
ハン・ソロハリソン・フォードが炭素冷凍されちゃうわ、と最高にダークな「帝国の逆襲」。
「エピソードⅣ」はともかく、どこか悲劇チックな雰囲気こそが、マッチするシリーズだ。
この映画も暗い。
だって、端的に言えば、主人公がこころの闇の底に引きずり込まれるまでの過程を描いているだけ、だ。
しかし、こういうダークストーリーこそ、ヒトを惹きつける由縁だよな、とあらためて思う。
観終わって、こころに残る釈然としない暗い気分。
これこそが、世のこだわりだからか。
こういう映画には、つくづく中途半端なハッピーエンドは似合わない。
ダース・ベイダー誕生にまつわる悲劇。
これこそが、やはりこの映画に期待されている人間ドラマだからだ。


もちろん、不満は挙げればないわけではない。
まず、アナキンのこころの葛藤とか、はかなり甘い。
「パドメへの愛のため」とかでこころを乱しているつもりらしいが、
基本的にはすべてアナキンの、アナキンによる、アナキンのための自己愛だ。
ダークサイドに引き込まれていく宿命的なものは、あんまり感じない。
つけあがったガキのたわ言と、身勝手な行動が周囲を不幸に陥れていくだけだ。
「すべてを得ようとして、すべてを失った男の悲劇」ではあるけど、
あまりに人間的にスケールの小さいオトコなんで、悲劇的要素が薄いのだ。
これを演じるのが、ヘイデン・クリステンセンの学芸会演技だから、よけに始末が悪い。
「いや、おまえ間違ってるだろ」という突っ込みどころが満載過ぎて、
むしろ喜劇チックな印象すら覚えてしまうのだ。


それと、ジェダイって、あんまりにもショボくないか、というのも…。
パルパティーンの陰謀を全然止められない、政治的な無能さだけじゃない。
ある意味見どころのひとつであるはずのジェダイ虐殺シーンがあまりにあっけない。
何か、雰囲気を察するとか、とっさに機転を利かせるとかないのか?
よくもこんなユルいヒトたちが、銀河の平和に貢献できたモノだ、と呆れる。
もしかしたら、そのジェダイの慢心まで描きたかったのかもしれないけど。
胸に宿る教訓、というかジェダイに送りたいメッセージがひとつ。
「トドメを刺せる時は、きっちり刺せ!」。


で、そのジェダイの〝選ばれし者〟アナキンの件だ。
ジェダイの復讐」までの長いスパンで見ればともかく、
アナキンを見出したクワイ=ガン・ジンの責任は、かなり重い気がする。
それと、明らかに性格の合わないオビ=ワンを師匠につけ、
見るからに辛抱の足りないアナキンを、単純に冷遇し、さらに拗ねさせる評議会…
どう考えても、ジェダイの配慮不足が、この事態を招いたのではないだろうか。


とまあ、気付くと不満がいくつも出てきたりはするんだが、
ここらへんは作品そのものに期待される本筋から見れば、あくまで瑣末な問題だ。
そりゃ、深みのあるドラマとか展開されれば、より満足度は上がるかも知れないが、
ジョージ・ルーカスにそこまで期待するのは、酷というモノだと思う。
この人は壮大なスペース・ファンタジーという〝たたき台〟を提供してくれればいいのだ。
人間ドラマなんて、観た人がいくらでも後付けしてくれる。
事実、そうやってこのシリーズは、膨大な数の熱狂的なファンを獲得してきたのだから。
だから、頑張ってドラマづくりして、ちょっと失敗しちゃったことには、
寛大な視点で対応したい。「ま、それぐらい、構わないや」って感じで。


まあ、それでも贅沢をいうと、
エピソードⅣにつながる、最後の部分がちょいと駆け足過ぎたのも少し残念。
もちろん、一本の映画として考えれば、あれでいいのだとは思うのだが、
映画の余韻ともいえる、その部分でこそ、
ファンはこのサーガへの想いに馳せるわけだったりして、
だからこそねちっこく濃厚に描くのも、ひとつのテだったんじゃないかな、とも感じた。


ここらへんで、収拾がつかなくなってきたので、無理矢理結論。
映画史を大きく塗り替えた、記念碑的シリーズの完結編、として、
まず文句のない出来といっていい、〝特別な作品〟に仕上がっていると思う。
一本の映画として出来も、はっきりいってかなりの高レベルだ。
とても素直に「面白かった」といえる作品。
午前5時、白々と明けたなんばの街から、自転車で自宅へ向かう。
ものすごい満足感。そして、醒めやらぬ興奮。
観せてくれるなら、いますぐにでも、「Ⅰ」〜「Ⅵ」一気だって、全然平気だ。
近い将来のコンプリートBOX発売に向け、DVDも買い控えてきたが、
あとはBOX発売を待つばかり。
ああ、早く観たい、観たい。
「ゴッド・ファーザー特別完全版+パートⅢ」より長そうだけど、
これなしに、個人的には「スター・ウォーズ」サーガに別れは告げられない。