道頓堀東映パラスで「デンジャラス・ビューティー2」

mike-cat2005-05-30



場末感たっぷりの、老朽化劇場で観てしまった。
だって近いし、格安チケットがあったんだもの…
しかし、1800円出して、ここでは観ないな。
ま、銀座シネパトスのように、独占公開されたら、手も足も出ないんだが。


まあ、そんなことはともかく、
あのサンドラ・ブロックの「デンジャラス・ビューティー」続編だ。
ビューティー・コンテストに、出場者として潜入して爆破未遂事件を解決、
それどころか〝miss congeniality(原題=ミス・ベストフレンド、らしい)〟
にまで選ばれた、FBI捜査官、グレイシーサンドラ・ブロック
しかし、新たな〝セレブ〟となったグレイシーは、潜入捜査はおろか、
ふつうの捜査にも加われないほど、面が割れてしまった。
おまけに、恋人になったと思ったエリック=ベンジャミン・ブラッド(今回出演せず)とは破局
そんな落ち込みモードのグレイシーに下された指令は、
FBIの顔として、バービー人形よろしく、お飾りとなることだった。
粗暴さから孤立した捜査官サム・フラー=レジーナ・キングと組んだコンビも、最悪のムード。
だが、ある日、ミス・アメリカに選ばれた親友シェリルが誘拐の一方が届いた…


はじめにいっておくと、目新しさはまったくない。
オリジナリティもない。それも大ヒット映画の続編コメディ。
こういうのが嫌いな人は、はじめから無視する映画ではあると思う。
でも、僕は好き。
で、この作品はたぶん、お好きなヒトには十分楽しんでもらえる水準だ。
こういうのも嫌いじゃない、程度の人でも、十分に楽しめるんじゃないかと思う。
確かに、映画史をひもとけば、たぶん500回以上も作られた部類の作品ではある。
手慣れた設定、手慣れたギャグ、手慣れたアクションシーン…
でも、この作品は、そのそれぞれのレベルが、なかなか悪くない。
映画全体のテンポでいえば、むしろかなり軽快だ。
世の中の映画が全部こういうのだったら、そりゃ困るが、
こういう映画もなかったら、もっと困る。
よぶんな思考を止めて、単純に楽しむ110分間。これも映画の楽しみだ。


で、何が面白かったって、サンドラの暴走ぶりにますます磨きがかかったところ。
失恋のショックを振り払うため、〝FBIの顔〟になったグレイシーは、
ふだんのお下劣おネエちゃん(髪の毛グチャグチャ、鼻をフガフガ…)から一転、
ルイ・ヴィトンいわく」だの、「ドルチェ&ガッバーナいわく…」だの、
寝言をほざく、とんだ傲慢ちゃんになってみせたりする。
そのグレイシーと対立するフラー捜査官の性格設定も含めた、
ここらへんの感情設定のさじ加減が、微妙に甘いな、という感じは否めないが、
エスカレートする一方の暴走ぶりを観ているうちに、まあ、いいかな、と。


おてもやんよろしく、白塗りのヘンなメイクはしてみせるわ、
真っ黄色のロングコートに、真っ白なシャネルのバッグで登場するわ、
典型的な、遅咲きデビューの暴走っぷりで、笑わせてくれる。
何しろ、FBIがつけた専属スタイリストが、ベタベタのゲイ。
女装はしないけど、こころは完全にオネエ系のジョエル=ディートリッヒ・ベイダーだ。
だから、自然とサンドラは(もともとゴツいこともあって)だんだんオカマちゃんに見えてくる。
ちなみに、この〝ゲイはおしゃれで皮肉屋だけど、いいヒト〟的なタイプキャストも、
もう使い古されてはいるんだけど、このジョエルのキャラはなかなか笑える。
温かい目で観てやってくだされば、笑えること請け合いだ。


ポスターとか、予告ですでにおおっぴらになってるので書いちゃうが、
クライマックスでは、
ビッグバードティナ・ターナーに扮したグレイシーたちが大活躍もしてみせる。
もうお約束の世界。
でも、ドラァグ・クイーンに扮したサンドラ&レジーナにはもう笑うしかない。
それも舞台はラスベガス。
トゥー・マッチなゴージャスそのものの雰囲気がまた、その笑いを盛り上げる。
もちろん、音楽も最高にいい。
パティ・ラベルを出してみたり、ライザ・ミネリを出してみたり、サービスも抜け目なし。
映画スタッフの「観客を楽しませよう」という本気度が、あらゆるところから伝わってくる。


監督はジョン・パスキン。
あのマイケル・J・フォックスのTVシリーズ「ファミリー・タイズ」で、初期の監督を務めたほか
「リーマン・ジョー」「サンタクローズ」などティム・アレン映画の監督をこなしているそうだ。
どちらも観てないので、僕にとってはお初の監督。
まあ、手堅いといえば手堅い演出なのかもしれないけど、けっこう気に入ったかも。
これからも〝こういう映画〟を、高い水準で送り出してきて欲しいな、と切に願う。


サンドラ・ブロック映画としては、「あなたが寝てる間に…」「スピード」
トゥー・ウィークス・ノーティス」などの傑作にはもちろん及ばないが、
その次のグループ、ぐらいにはランクしてもいいんじゃないかな、と。
映画の冒頭は、前作から3週間後という割に、
サンドラがずいぶん歳を取っていたりするのはご愛敬だが、
ファンならやっぱり見逃せない作品だとは思う。
年々香ばしさが増すウィリアム・シャトナーも出てるし、
若いヘボ捜査官を演じるエンリケマルシアノも、今後が楽しみな存在。
「何かおもしろい映画ない?」と聞かれたら、ついつい勧めたくなる。
そんな映画だったと思う。
劇場を出る時、気分は何だかハッピーな感じになっている。
まあ、それは僕が単純な人間であることの、証明でもあったりするのだが…