シネリーブル梅田で「さよなら、さよならハリウッド」

mike-cat2005-05-24



帰ってきました、大阪へ。
東京では2本観てきたけど、積み残し映画は、まだまだたくさん。
クローサー」「炎のメモリアル」「デンジャラス・ビューティー2」…
ああ、どうしようと迷った挙げ句、この作品。



梅田の駅から、長い長い長い長い道のりを経て、スカイビル3階の劇場へ。
しかし、本当に遠い。遠すぎる。何とかしてくれ。
それはともかく、劇場に着くと、おば、おば、おばの嵐…。
何じゃこりゃ、ウディ・アレンのファン層って、こんなだった?
そう思ったのもつかの間、ポスターを見て納得する。
韓流映画大特集… もう、いいんじゃないですか…
優れた映画が多いのも事実だけど、過剰供給も甚だしい。
一過性のブームで終わらせたくないなら、
小金目当てにこういうの、やめた方がいいと思う。
というか、マナーの悪いおばが劇場でのさばっているのは耐えかねる…


という話はともかく、ウディ・アレンはガラガラでした。
東京ではともかく、地方ではこんなもの?
というか、今回あらためて感じたのは「ウディ・アレンって実際どうなの?」だ。
いや、基本的には好きだ。
かといって、かつての黄金時代の映画はろくに観てないので、
ウディ・アレン信者の皆様には、「語る資格すらなし」と、斬り捨てられてしまうかも。
ただ、ここ十年くらいの作品はそこそこ観てる。
「ギター弾きの恋」は大好きだし「おいしい生活」も、かなり好き。
「スコルピオンの恋まじない」もけっこう楽しめたクチだと思う。
だから、何とかちょびっと語らせて欲しいな、と。


で、本題に戻るが、ウディ・アレンだ。
何か、ウディ・アレンの映画って「面白い」と言わないと、
映画ファンとして許されないような雰囲気を、常々感じる。
ウディ・アレンがわからないなんて…」
「あの上質のセリフ回しがわからないなんて…」
「あの、音楽のセンスがわからないなんて…」
こんな無言の圧力(幻想?)が、いまひとつの作品に対しても、
批判を許さないような雰囲気を醸し出している気がする。気のせいかもしれないが。
実際、ウディ・アレンの映画に描かれるニューヨークの風景は絶品だし、
音楽だって、確かにサントラ買いたくなるような作品ばかりだ。
セリフ回しに関しては、字幕なしで理解できるほどの語学力がないので、
偉そうなことは言えないが、やっぱり独特の味わいはあると思う。


だけど、だ。
過去の作品はともかく、いま巷でありがたがられるほど、ウディ・アレンが特別か、
と言われると、どうなんだろうか。少なくとも僕は、疑問を感じる。
僕が思っている、「ウディ・アレンの一般的評価」自体が間違っているかもしれない。
ウディ・アレンの黄金時代の作品を、
同時代に観ていなければ、本当の意味で評価はできないかもしれない。
でも、やっぱり感じるのは「ウディ・アレンって過去の人だな」なのだ。


今回の「さよなら、さよならハリウッド」は、
落ちぶれたかつての巨匠映画監督、ヴァル・ワックスマンが主人公。
不倫で自分のもとを去った、もと妻の推薦で、
ハリウッドのメジャースタジオの大作映画をてがけることになる。
トラブルメーカーで知られたヴァルだが、復活を狙った今作でもトラブルに見舞われる。
何と、心因性の盲目になってしまったのだ。
目が見えないのを隠して、撮影に臨むヴァルだが…


いかにも、ウディ・アレン印のコメディだ。
手慣れた設定、手慣れた構図、手慣れた音楽、手慣れたジョーク、
そして手慣れたドタバタ劇…
確かに面白いけど、まるで吉本新喜劇か、欽ちゃんのテレビ番組。
ドタバタだって、けっこう楽しいけど、これはウディ・アレンの専売特許じゃない。
少なくとも、ありがたがるほどのものじゃない。
で、これを言ったらもうおしまいかもしれないが、
ウディ・アレンの主演というのも、いいかげん考え直してもいいんじゃないだろうか?
せめて、ほかの役者でやっていたら、もっと楽しめるような気もするのだが…



もちろん、ウディ・アレンのセルフ・パロディ的な要素も入っていると思うし、
ラスト・ショー」のピーター・ボグダノヴィッチのジョークとかも、面白いとは思う。
スタジオ主導の映画製作模様や、目が見えなくても撮れてしまう映画など、
そこらへんが何気ないハリウッド批判になっている部分も感じる。
原題の〝HOLLYWOOD ENDING 〟そのままのエンディングも、まあ彼一流の皮肉なんだろう。
たぶん人種的なジョークは、ワックスマン、というユダヤ人(だと思うが…)名前も含めて、
それなりに盛り込まれていたと思う。
中国人がミャーミャー(名古屋人じゃないけど)うるさいのとかも、その一環だろう。
たぶん、ウディ・アレンの信奉者なら、ウンチクたれたくなるようなシーンは、
100では足らないくらい、詰め込まれているんだろうと思う。
だけど、観ていてけっこう退屈なのも、正直なところだ。
「それはきみに面白さを理解するだけの素養がない」と言われてしまうと、
堂々巡りにはなると思うのだが、自分の主観はごまかせない。


あくまで僕の結論。
ハリウッド映画を皮肉ろうとしてはみたものの、
なまくらの刀切り損なった上、折れた刃の欠片が、自分の方にも飛んできた、という感じ。
どう? と訊かれたら、それなりには面白いけど、観なくても何の損もない、と答える。
「最高傑作」とか書いてあるレビューには、とてもじゃないが、賛同できない。
こんなところか。
雑誌やパンフレットが、べた褒めレビューしか載せないのは当たり前だけど、
それがあまりに過剰な気がしたので、ついつい過激になってしまった。
まあ、こうして僕が書いている批評だって、自分にはね返ってくることもあるんだから、
そこらへんは自分でも立ち返ってみないといけないのだが…