美浜7プレックスにて「君に読む物語」

mike-cat2005-02-15



まだまだ沖縄滞在中…
原題は〝THE NOTEBOOK〟。
テレビスポットでは〝君読む〟とか言ってた。何だよ、それ…
もうちょっと、まともなプロモーションしてれば、
もっと早く、文句なく観てたのに、あざとさが目立って、引っかかりを感じていた。
でも、「16歳の合衆国」で謎多き少年を演じたライアン・ゴズリングだしな。
やはり、観なきゃ、と思って、重くなりかけてた腰を上げてみた。



前回も〝少年はなぜ、殺人を犯したのか〟という役柄を、
物憂げな表情で演じていたゴズリングだが、
今回もなかなか奧の深げな表情で、貧乏だけど魅力的な青年ノアを演じる。
ドニー・ダーコ」のジェイク・ギレンホールと張る、若手演技派かも。
ある時は突き抜けた明るさを見せるし、ある時は鬱屈した感じも見せる。
いかにも金持ちのお嬢さまがはまりそうな、輝きを放っている。


相手役のアリー=レイチェル・マクアダムズも、なかなかいい。
世間知らずで、でも純粋で、みたいなわかりやすいお嬢さまを、そつなく演じてる。
こちらも合格。ゴズリングとのマッチングもいいと思う。
ただ、けっこうオールドファッションな感じもあるので、
今後の活躍って観点で見ると、役柄的には限られるのかも。


まあ、そんな2人の輝きが眩しいこの作品のプロットは、
かつて燃え上がった身分違いの恋の顚末と、
その話を痴呆症の老女に話して聞かせる老人たちの愛の物語。
かなりベーシックな感じのラブストーリーだ。
もう観る前から展開は分かりきってるストーリーだから、
腕の見せどころは、むしろ細かい演出にある。
で、そこらへん、どうかというと
引き裂かれた2人の365通の手紙とか、
手帳に綴られた、2人の物語を読んで聞かせるトコとか、
小道具はなかなかイケてる方じゃないかと思う。


でも、トータルでは何だか〝ただのいい話〟どまりなのだ。
若い2人の熱い恋もいいし、老いても枯れることのない、不変の愛もいい。
でも、ただただ、それだけだ。
ベタな話を、なぞっているだけだから、「いいなあ」以上にこころを揺さぶらない。
小道具は悪くない、と前述したが、それすらもただ使っているだけで、
効果的に、までいかない。
小さなサプライズで感動を増幅するでもなし、
うまくじらして、ストーリーに引き込むでもなし。
ひたすら平坦に時間が過ぎていくから、むしろ、細かいアラの方が気になる。


まずはジーナ・ローランズがどうもいけない。
名女優をクサすのも何だが、どう見てもオーバーアクトでしょ…
痴呆老人を演じるのは難しいのだろうけど、
それをこれ見よがしに演じているのを見ると、かなり興ざめした。
相手役のジェームズ・ガーナーが抑えた演技でうまくやってるだけに、
よけいローランズの素っ頓狂ぶりが目立つ。


そして、若い二人の恋愛模様も、ちょいと見方を変えると、
どうにも感情移入できない部分が目立つ。
老人は〝命を懸けて愛した〟とか振り返っているが、
命を懸けるいる割には、どうにも中途半端な行動ばかりが目立つ。
舞台は、南部の田舎町なんだが、
NYの大学に進学が決まったアリーに対し、
ノアは煮え切らない態度を示す。
残って欲しいともいうわけではないし、
自分がNYに行く、という提案に対しても、反応は鈍い。
身分違いの恋、に対する覚悟もなく、
何度も同じ失敗を繰り返す。
強い態度を待ち望み、ウズウズとしているアリーを平気で裏切る。


いや、そういう煮え切らない愛とかを描く映画ならそれもいい。
しかし、この映画の趣旨は違うでしょ。
アリーと別れた後、未亡人と付き合いを深めるノアは、
アリーが戻ってくると、ためらいもなく未亡人を捨てる。
「お前がはっきりしないから、いろいろな人を不幸にしてるんだろ!」
といいたくなる。これでは、序盤のゴズリングの好演もぶちこわしだ。


はた迷惑なのは、アリーも同じく。
両親に別れるようにいわれると、本人に聞こえるところで
「貧乏だし、教養もないし、洗練されていないけど、好きなの!」と叫ぶ。
おい、それはあくまでお前の階級の観点からで、
本当の意味での教養とか、洗練とかと違うだろ? 無神経なオンナ。
で、結局ふらふらと富豪のナイスガイと婚約するんだけど、
自分の気持ちすら全然整理できないから、周囲を巻き込んで大騒ぎ。


だいたい、かつての恋人と一夜を過ごす間も、
婚約指輪外さない、ってどういうこと?
婚約者のもとに戻るか、ノアのもとに残るか、どちらへ行くか聞かれる場面。
ノアから〝WHAT DO YOU WANT?〟の問いに、
土壇場になっても〝I HAVE TO GO〟とか答えてる。
もう、何をかいわんや、って感じになってしまった。
いや、もしかしたら、ここで泣いてる人もいるのかもしれないけど。


そんな、こんなで二人もいつの間にか、輝きを失い、
恋の顚末に興味も失せてきたころ、
現代の老いた恋に、大きなクライマックスが訪れる。
一部は美しさもあるんだが、最後の切れが悪い。
愛の奇跡をこれでもか、としつこく繰り出していくうちに、
もう、涙はすっかりと止まってしまった。
映画が終わると、鬱陶しい日本のアーティストのイメージビデオ。
それもやめて下さい。関係ないし。


と悪口書きまくったが、もちろん印象的なシーンもあった。
まずはオープニング。
川面に映える夕陽、そして飛び立つ白鳥。
日がしずみゆく中、ボートをこぐ姿が映し出される。
ストーリーのカギを握る建物の中で、ジーナ・ローランズがたたずむ。
たぶん、人生の散り際の美しさ、とかをイメージして撮ったのだろうけど、
ここらへんの導入はナイス。ひたすら美しく、魅入ってしまう。


そして、ジョアン・アレン演じる、アリーの母だ。
娘の恋路を邪魔する一番手だったりするのだが、
実は同じように、貧しい青年との恋をぶちこわされた過去を持つ。
途中まで再三の邪魔をするし、
金持ちとの結婚が決まった娘を心から祝福するんだが、
娘の気持ちが再三揺れるのを見るや、ついに動く。
過去のオトコのもとを訪れ、娘にその姿を見せる。
そして、言うのだ。
「彼を見て、わたしはいま、幸せだ、と感じる。
 夫はわたしには過ぎた人よ」。
だが、顔は涙でくしゃくしゃだ。
娘の本当の幸せがどこにあるのか、迷い続ける母の苦悩が見える。
ひとつ間違えば、何じゃこりゃ、のシーンが、
アレンの好演で、深い味わいを醸し出していたと思う。


あとは最初にも書いた通り、
若い二人の〝ひと夏の恋〟は、魅力たっぷり。
だが、ここらへんをうまく使い切れなかった〝いい話〟に、
格別の感慨を抱くことはできなかった。
得点をつけるなら、78点。
僕的には、可もなく、不可もなく。
結局、「もう少し、何とかなるはずなのになぁ」という、
いつも通りの感想に終わってしまった。