恵比寿ガーデンシネマで「ビフォア・サンセット」


恵比寿に慌ただしく移動して
恋人までの距離−ディスタンス−」〝Before Sunrise〟の続編。
だから、前作もそのまんまの原題通りにしておけばよかったのに、と勝手に憤る。


でもまずは観る前にヴェス・アンダーソンの
〝The Life Aquatic with Steve Zissou 〟の予告。
ビル・マーレイオーウェン・ウィルソンと相変わらずの布陣だけど、
やっぱり面白そう。ケイト・ブランシェットが出るのが、すごく楽しみだ。
http://www.lifeaquatic.com/


で、ビフォア・サンセットに戻る。
前作は大好きな作品だった。
列車の中で出会った、アメリカ人青年とフランス人女性が、ウィーンで一夜を過ごす。
ロマンティックな一夜を終えた二人は、
名前も、連絡先も交換しないまま、半年後ウィーンでの再会を約束して別れた…
切なくって、もどかしくって、でも素敵な恋愛模様だった。
イーサン・ホークジュリー・デルピーも光り輝いていた。
監督のリチャード・リンクレイター
その後「スクール・オブ・ロック」を撮るなど、いい感じで活躍してるし、
イーサン・ホーク
ガタカ」「トレーニング・デイ」などに出演と、キャリアを築いてきた。
ほとんど同年代なもんで、すごく思い入れがある。


そんな、思い出の映画の続編、だったのだが、意外と…だったりしてしまった。
リアルタイムで進行する80数分。
会話は前作同様、けっこう軽妙で楽しい。
ずうっとしゃべり続け、まさに会話劇。だが、それがくせ者だ。
ずううううううううううううっと、しゃべってるから、
内容を十分に味わい切らないうちに、次の話題に移る。
おしゃべりな二人の会話をただただ聞かされ続きでは、ちょっとたまらない。
プラス、脚本にも二人が加わっているせいか、
ご高説を賜ってみてるみたいで、何となく鼻につく。
だから、のめり込めないのだ。


で、ストーリー自体にも何となく…な点は残る。
確かに、あれから9年経った後の後日談としては悪くない。
でも、悪くない、程度で終わっているのだ。
前作の熱烈なファンが、特別編として見るくらいならいいけど、
一本の映画としては、やや物足りない。
前作から持ち込んだストーリーの魅力を、
消化するだけで、膨らますまでいたらないのだ。
もちろん、面白いといえば十分面白いんで、
文句いうほどでもないのかもしれないけど、
傑作であるとか、思い出に残る一本である、とか、
そういう褒め言葉は使いたくない、使えない。


パリの街角とかに思い出がある人はもっと楽しめるかもしれないし、
もっともっと、きっちりと前作を復習していったら、
楽しめる要素ははるかに多いのかも…
でも、それってあまりにも、偏った楽しみ方だ。
少なくともこの映画は、ふらっと観に行っても楽しめる、
そんな作品にして欲しかったな、と欲張りながらにも思ってしまった。


ちなみに、映画の中でのイーサン・ホークの態度に関しても、
僕はあまり好きになれない。
もう結婚して、子どももいるのだが、平気で口説く。
それも奥さんとの生活を〝最悪〟と言い切ってまで…
別に不倫ドラマ(あくまでドラマ、だが)を全面否定するつもりはないが、
前作の映画のファンとしては、
ああ、こんな人間になっちゃったか、と、どうにも気分が悪い。
イーサン・ホーク自体、何となく痩せすぎで貧相になって、
一種独特の嫌らしさが出てしまってるから、余計に強くそれを感じる。


うまくぼかした感じのエンディングも、
まあうまいといえばうまいけど、煮え切らない感もあり。
前作での、鑑賞者それぞれの結論に委ねたのとは、ちょっと一線を画する感じだ。
とか書いていたら、いつの間にか、悪口のオンパレードになってる。まずい…
いや、期待の裏返しで、ギャーギャー言ってるだけで、
映画としてのレベルは、そこまで低くないのだ。
あくまで〝あの映画〟の続編としては…、というだけで。


前作のファンには一応観た方がいいとも思うし、
観ないでいい思い出だけにしておく方が、とも思う。
人によっては、もっと思い出膨らむ人もいるだろうから、微妙な面もある。
ただ、僕はやっぱり不満が残った。
恵比寿駅までのガーデンウォーク。
映画に満足できないと、いつも長く感じる。
きょうも何だか、動く歩道は長かった…