渋谷シネマライズで「Ray」

とまあ、昼から絶好調になって、渋谷に向かう。
狙いは話題のレイ・チャールズの伝記映画「Ray」 at渋谷シネマライズ
いや、初めてポスター観た時に、とにかく驚いた。
ジェイミー・フォックス、ムチャクチャ似てるのだ。
血縁関係とかあるんじゃないのか、と思う。
見た目だけでも、アカデミーの主演男優賞候補ってのも納得しちゃうほどだ。


で、まずは映画の結論から。かなりの傑作だ。満足度かなり高い。
まずは当たり前だが、レイ・チャールズのナンバーからして最高だ。
〝What'd I Say〟
Georgia On My Mind〟
〝Hit The Road Jack〟
Unchain My Heart〟…
僕程度のファンでもこころからシビれるぐらいだから、
レイ・チャールズに心酔してる同時代の人とか、もうたまらないんだろうと思う。


そして、見た目だけでなく入魂の演技も最高のジェイミー・フォックス
オリヴァー・ストーンの「ドアーズ」で、
ジム・モリソンを演じたヴァル・キルマーもすごかったが、けた違いだ。
凄い、というしかない。いや、ホントに。
一部ではけっこう歌ったりもしてるんだが、これがまたうまい♪
レイ・チャールズの霊が憑依してんじゃないの、と思いたくなる。
さすがにピアノは御大ご自身のプレイを乗っけてるようだが、
違和感とか感じるスキなど、一切ない。


で、それだけでは終わらない。
テイラー・ハックフォード(「愛と青春の旅だち [DVD]」「ディアボロス [DVD]」)の演出もなかなかだ。
弟の事故死や、失明という辛い時期を過ごした子ども時代のトラウマと、
騙され続けた駆け出し時代の記憶などをからめて、
ヘロインにおぼれ、周囲の人間を冷徹に切っていく、
レイ・チャールズの激しく、ドラマティックな人生を綴っていく。
僕がリアルタイムで見ていた、ちょっと〝悪戯っぽい好々爺〟が、
音楽界の頂点を極め、レジェンドとして君臨するまでが、
すごくリアルに伝わってくる。
だらだらとサクセスを描くだけでなく、
人間レイ・チャールズの弱さも描いているから、とてもフェアだ。


〝泣かせ〟も、なかなかツボをついてくる。
視力を失っていく子ども時代のレイに対し、
涙をこらえながら厳しく接する母の姿がたまらなく切ない。
〝だれも憐れんでなんかくれない。自立するんだ〟
〝だれにも盲目なんていわせるな〟
(たぶん、俗語で〝め×ら〟ぐらい言ってるんだろうと思う)
痛いほどのメッセージをこころに刻み込み、
音楽の世界で生きていく決心を固めるレイの姿には、ただただ感動だ。


2時間32分の長尺だなんて、まったく気にならない。
テンポがとにかくいい。
駆け抜けるようなレイの一生を、あっという間に味わうことができる。


難をいえば、
ヘロイン中毒を克服した後のレイ・チャールズの軌跡が、駆け足で描かれるトコか。
確かにハイライトは、中毒の克服と、
差別をめぐって追放処分を受けたジョージア州からの謝罪なんだろうけど、
その後ももうちょいと時間を割いて欲しかったな、というのが個人的な感想だ。
もうどうせ長いんだから、最後にもう5分、10分長くてもよかったのに、って感じ。
こちらのこころの準備もあったのだけど、ちょいと物足りなかった。


しかし、必見であることには間違いない。
レイ・チャールズのファンはもちろんのこと、
むしろ、レイ・チャールズをよく知らない人にも僕は強くお勧めしたい。
ああ、この音楽もこの人のだったのか、と、新しい発見があるはずだと思う。
ハズレ続きだったことしの映画観賞に初めての光♪
よし、流れは変わった。これから傑作続きの毎日となるはずだ。


おいしいランチに、いい映画。いや、ホントに満足の一日だった。