十三・第七藝術劇場「ふたりにクギづけ」

こちらはまあまあ、だけどね



十三の劇場は初めて行ったけど、なかなかすごい。
風俗街までいかないけど、風俗店含有率かなり高い、雑多な場所にある。
東京だと、池袋のロサ会館とか、あそこらへんのイメージかな。
劇場自体は古いけど清潔。しかし、やっぱり二の足を踏む劇場かも。


まずは「ふたりにクギづけ」(原題:STUCK ON YOU)。
メリーに首ったけ [DVD]」「愛しのローズマリー [DVD]」でおなじみ、ファレリー兄弟のコメディだ。
メリーに首ったけ [DVD] 愛しのローズマリー [DVD]
個人的には「キングピン/ストライクへの道」もお気に入りなんだが、
この兄弟といえば、まずはベタで下品なギャグ満載のコメディが特徴。
で、身体障害者などハンディキャップを持つ人々をタブーにしないことで有名だ。
まあ、必要以上に取り上げすぎ、の感もあるが、
身体障害者の人たちを、ヘンに特別扱いしない姿勢は、
「ホントにだいじょぶ?」と、やや微妙な感触を残しつつも、好感を抱かせる。


何しろ、初監督作品の「ジム・キャリーはMr.ダマー」の頃から、
目の見えない子供に死んだ鳥を売りつけたりする、やばいギャグ満載。
ハンディキャップを持つ人でも、おかしかったら笑う、というのは当然かもしれないが、
そのキワどさ、は見ているこっちがちょいとヒヤヒヤしたりする。
それが今回は結合双生児(以前はシャム双生児とかいってましたね)だったりするのだから、
メインストリームでの公開は、さぞかし難しかったことだろう。
アメリカではFOXがそのまま配給してるみたいで、
ある意味アメリカ映画界の懐の広さを見た気もするんだが。
当然、日本では銀座シネパトス公開(東京の地域ネタっぽいけど)はやむなし、なのかも。


で、映画の出来。
面白かったとは思うが、ファレリー兄弟らしさが薄れた印象を覚えた。
今回もベタで下品なギャグは、もちろんあるんだけど、立て続けじゃない。
一応、ストーリーやメッセージの方が映画全体を支配している感が強い。
俳優を夢見る兄=グレッグ・キニアと、
内気な弟=マット・デイモンを主役にしたドタバタコメディ。
でも、ふたりのアイデンティティはどうなの? みたいなメッセージは常に横たわる。
よく言えばある意味で洗練された印象だ。
キニアとデイモンの年齢差を、
弟の体の部分にしか肝臓がないから、みたいな設定にするなど、
やばい感じのギャグは相変わらずだが、微妙にバランスへの配慮が強まった。


だから、何となく毒がない。
コメディを見に行ったのに、いい話を見せられた感じだから、何だか物足りない。
主役の二人もいい役者だし、いい演技をしてる。
それにシェールとか、メリル・ストリープ(カメオですが…)とかも出てるし…
と、好条件は整っているんだが、何となくいい話すぎるのだ。
エンドクレジットで、ある出演者の語りがあったりして、
それはそれで感動的なんだが、何となくそこまでやられるとしらけるのだ。
ファレリー兄弟も、人並みに評価されたいのかな、なんて。
もちろん、根っこには身体障害者差別との戦いがあるのだろうけど、
それを前面に押し出されるのは、別の機会にして欲しい感じだ。
ファレリー兄弟には最低映画賞のラジー賞(ゴルデン・ラズベリー賞)
を獲るような作品を撮り続けて欲しいな、というのが一ファンとしての僕の希望。
もちろん、メッセージ性の高い映画もいいけど、
それならそれで、観る前からそれがわかる映画にして欲しいな、と。