梅田ブルク7で「Mr.インクレディブル」

もう一回、観に行きたい♪


というわけで、ようやく観てきた
大阪に引っ越し後、記念すべき初映画。
家の近所でもやってるんだが、道頓堀の劇場はちょっと…。


この映画も初めて予告観ただけで、シビれた作品だった。
スーパーヒーローの救助活動すら訴訟の対象になる、世知辛い世の中。
過去の栄光に未練を残しつつ、そのスーパーパワーを封印し、
普通の暮らしを送る〝インクレディブル〟。
このプロットを端的に説明した予告は、それだけでも十分鑑賞に値した。
腹が出て、ヒーロースーツを着られなくなったスーパーヒーロー。
ダイエットのため、食事制限しなきゃいけないけど、
お夕飯におモチ食べちゃったりして、なかなかかわいかった。


こういう予告のいい映画ってのは、けっこう外れることが多いんだけど、
やはり、そこはピクサー印の保証付きだ。
ストーリーはある程度、というかほとんど予想通りだが、
基のプロットの味わいを、とことん追求した、良質のエンタテイメントに仕上げている。
「家族みんなで戦えば」みたいな、クサい手口も、
アニメだと不思議にすんなり受け止められるのでは?、という部分は否定はしないが、
〝どうやったら面白い映画を作れるか〟の想いが込められた、ていねいな作りが、
そんな疑問符を一気に吹き飛ばしてくれていると思う。


スラップスティックなノリと、骨太のストーリーのバランスもいいし、
何より、アクション場面の迫力、スピード感は、
アニメだとか、実写だとかの分類の枠を越えたレベルに達してる。
ま、CGを使っている以上、いまはアニメと実写の区分けは難しい面もあるけど。


あとは、ホリー・ハンターの〝イラスティ・ガール〟最高♪
いや、いい雰囲気出てた。いい感じにがらっぱちで、ほほ笑ましい。
サミュエル・L・ジャクソンのフロゾンももちろん、カッコいいし、
クレイグ・T・ネルソン演じるインクレディブルのトホホな感じも絶妙だった。


切り絵といういか、影絵というか、オールドファッションなイラストを使った、
凝りに凝ったエンドクレジットも、また想いひとしお。
子供のころに東京12チャンネルで観た、
アメリカのTVマンガ(アニメ、という言葉も知らなかった…)を思い出した。
そんな古きよき雰囲気を醸し出しつつも、
クレジット自体は立体感持たせてたりして、偉くカッコいい。
つくづく、クリエーターのセンスを感じさせる作りだった。


とまあ、大絶賛の嵐を贈ってしまうくらい、面白かったんだが、気になった点ひとつ。
悪役シンドロームが、インクレディブルに対して、
〝スーパーパワーを持ってなくても、ヒーローになれるんだ〟という感じで訴えかける場面だ。
お話の最後は、シンドロームの邪な部分が強調されるから、
退治されちゃっても別にいいんだけど、この訴えかけ自体は、無視するには重いひと言だった。
悪の道に走ってしまったシンドロームだが、原点にはスーパーヒーローへの憧れがある。
善悪の観点を除いて考えた場合、
なりたいものになるべく、全力を捧げたシンドロームが、
天賦の才能を持つインクレディブル一家に打ち破られるのって、どうなんだろか…


僕は別段、努力至上主義でもないし(努力、ぜんぜんしないし)
この世の中、持って生まれた才能は、もっと評価されてしかるべきと思う。
だけど、〝生まれ〟とか〝血〟のレベルでの議論に転化されそうな、
この描き方には、正直、微妙な不満も覚えた。
インクレディブルの対応とかが、もっとちゃんとしていれば、シンドロームだって、
仮面ライダー」のライダーマン(古いですな)くらいにはなれたんじゃないか、と。


ここらへん、アメリカのアニメとかにありがちな、
隠された社会的価値観も、微妙に影響してるんじゃないか、ってうがった見方。
僕の見当違いなら、むしろ喜ばしいし、そうでないことを祈るのみだけど。


でも、映画全体の印象としては文句なしにことしのベスト5に入る出来。
あしたか、あさってくらいにことしのベスト映画を検討するつもりだけど、
候補にしてみたいな、と思う、面白い映画だったと思う。