ベスト本2004!

これがマイベスト♪

昨日の日記で宣言した、ことしのマイベスト選び♪
まずは本に限ってやってみることにした。
一応、手帳に読んだ本の書名、作者、評価だけ書き付けてるんだが、
数えてみるとことしの合計は277冊。
1月とか35冊とか読んでるが、11月以降は一気にペースダウンした。
いや、理由がいい方の理由なんで、むしろ望ましいんだが。


で、眺めてみると意外にことしの新刊ってそこまで多くない。
だいたい半分程度。昨年の話題本をことしになって読む、というパターンも多いので、
ランク付けもちょいと難しいのだが、一応ことしの新刊本に限って、選んでみた。


まずは国内作家。
平安寿子の2冊がやはり抜群に面白かった。
もっと、わたしをもっと、わたしをなんにもうまくいかないわなんにもうまくいかないわ
しかし、あえて選ぶなら「もっと、わたしを」なんだろうな、とは思う。
〝ペーソス〟とか書いちゃうと、けっこう安っぽく聞こえるけど、
味わいのある登場人物たちが織りなす、けっこう過激なんだけど、笑えて泣ける、あの世界。
やはり、平安寿子ならでは、の味わいはたまらない。


直木賞も獲っちゃった奥田英朗空中ブランコ空中ブランコはやはり文句なし。
前作「イン・ザ・プール」のテイストを活かした、
ドクター伊良部のさらなる暴走ぶりはとにかく笑えた。
こういう小説にありがちな、ヘンに説教臭さがないのもいい。
今後はマンネリ化も懸念されるけど、やっぱり読み続けたいシリーズだ。


絲山秋子は「海の仙人海の仙人袋小路の男袋小路の男
がともに、シビれる作品だった。
ただ、どちらか選ぶなら「海の仙人」だろうか。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20040903にも書いたが、
すごくテキトーな神様「ファンタジー」と、
敦賀の海辺で、まるで仙人のように暮らす河野と、
歳上のキャリアウーマン(こう書くと、微妙な響きだが)かりん、
そして河野に想いを寄せる、片桐の淡い恋模様は、読んでいるだけでうっとりとくる。


三浦しをん乙女なげやり乙女なげやりももちろん面白かった。
僕はここ最近になっての読者だけど、やはりこの人のエッセイは抜群。
その妄想の暴走ぶりには、ただただ爆笑するしかない。
いつまでも、妄想バリバリの〝しをんちゃん〟でいて欲しい。


あとは瀬尾まいこ天国はまだ遠く天国はまだ遠くも捨てがたい。
自殺を志願し、寒村に出向いた千鶴だが、
山奥の民宿で見つけた生きる喜びと、そこで出会ったぶっきらぼうなオトコに、
自然と心が癒やされていく、というお話。こう書くとクサいな。でも、いいお話なのは保証付き。
確かに、昨年12月刊の「図書館の神様図書館の神様と比べると、
説教っぽさも匂わないわけではない。
でも、ヘンな自然賛歌、カントリー賛歌とは一線を画す、
絶妙なバランス感覚は光るので、そんなには気にならない。
今後の期待も含めて、見逃せない一冊だと思う。


ミステリー系だと、雫井脩介ISBN:4575234990:title」犯人に告ぐだろうか。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20040822では、留保をつけてたけど、
やっぱりことし(僕が読んだ中では)ピカイチの面白さだったと思う。
題材が、もう物珍しくない、というのは、ちょっと言い過ぎだったかも、と反省。


続いて海外作家。
まずは定番。ジェフリー・ディーヴァーの「魔術師 (イリュージョニスト)魔術師 (イリュージョニスト)
それにダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コード〈上〉」「ダ・ヴィンチ・コード〈下〉
ダ・ヴィンチ・コード〈上〉 ダ・ヴィンチ・コード〈下〉
読みやすさ、面白さはとにかく最高だ。シリーズものならでは、の安定感もある。
ただ、その安定感がくせ者で、読み終わっての余韻、で考えると微妙に不満も残る。
ま、それはシリーズものの宿命ではあるけど、ベスト1に選ぶ、となると一瞬考える面もあるかな…


アニー・プルーオールド・エースオールド・エースも記憶に新しい。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20041111で触れた本だが、
オクラホマ州パンハンドルの厳しい自然と、そこに暮らす人々。
そして、この地に養豚場を誘致すべく、用地買収に走る冴えないオトコ。
グローバル企業による地域開発を描きながら、ヒステリックなエコ路線に走らない、
そのバランス感覚の巧みさもさることながら、
タイトル・ロールの〝エース・クラウチ〟ら登場人物たちの人間くささもたまらない。
名作「シッピング・ニュース」にも迫るいい作品だったと思う。


アンドレイ・クルコフペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)も印象深い作品だった。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20041025でも触れたが、
不条理でシュールなストーリーは、もう抜群に面白い。
憂鬱なペンギン、ミーシャと暮らす売れない作家ヴィクトルが、
まだ〝生きている人物の死亡記事〟を書く中で巻き込まれていく事件には、
不安を抱きつつも、ぐいぐいと引き込まれていってしまう。


ジェフリー・ユージェニデスミドルセックスミドルセックスも、忘れがたい一冊だ。
ピューリッツァ賞受賞作を、えらそうに語るのもナンだが、
女の子として育った両性具有のカリオペの数奇な人生と、
その一族である、ギリシャ系移民の歴史を描いた大河ドラマは、深い味わいを残す。
アンドロギュヌス版「ゴッドファーザー」ってトコかも。えっ、違う?


あとはノンフィクションものでマイケル・ルイスマネー・ボール 奇跡のチームをつくった男マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
独特の手法でアスレチックスをメジャー・リーグの強豪に再生させた、
GMビリー・ビーンの半生を描いたドキュメンタリー風の作品だ。
まあ、ビジネス本のカテゴリーにも入るし、
こういう本の常で、いいことしか書いていない、というのもあるから、
面白さも、多少割り引いて考えるべき類の本だとは思う。
選手をモノのように扱う姿勢を見てると、
ビジネス屋ばかりが跋扈する野球界への不安もよぎるけど、
読んでいて面白い本であることは請け合いだ。


で、以上を無理やりランキングにすると、こんな感じ。
これが僕の2004年マイベスト10だ。
1 絲山秋子海の仙人
2 平安寿子もっと、わたしを」 
3 アニー・プルーオールド・エース
4 ジェフリー・ディーヴァー魔術師 (イリュージョニスト)
5 奥田英朗空中ブランコ
6 アンドレイ・クルコフペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)
7 ダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コード〈上〉」「ダ・ヴィンチ・コード〈下〉
8 絲山秋子袋小路の男
9 ジェフリー・ユージェニデスミドルセックス
10 瀬尾まいこ天国はまだ遠く
次点 マイケル・ルイスマネー・ボール 奇跡のチームをつくった男


いや、順番決めるのって、ホント難しい。
まさに苦心のベスト10。それでも、読み逃してる作品は数限りなくあるんだろうから…
こういうの作ってるヒト、みんな苦労してるんだろうな、と思い、
じゃ、雑誌とかのランキングはどんなだったろうか、と眺めてみることにしてみる。


本の雑誌」のノンジャンル・ベスト10は
1 夜のピクニック 恩田陸
2 真夜中の五分前 本田孝好
3 本棚探偵の回想 喜国雅彦
4 黄金旅風 飯嶋和一
5 ぼくのキャノン 池永永一
6 家守綺譚 梨木香歩
7 蛍火 蜂谷涼
8 ふたりジャネット テリー・ビッスン中村融
9 ぼくは悪党になりたい 佐生陽子
10 ハイスクール1968


ほとんど、読んでないな…
夜のピクニック」は気にはなっていたけど、何となく手を出してなかった。
ベスト10の解説とか読むと、かなり僕好みみたい。
今年中に必読、というのは無理かな、やること山積みだし。
「家守綺譚」は、パラパラめくって何となく読みづらそう、と思ってた一冊。
とりあえず読んでたのは「ふたりジャネット (奇想コレクション)」と「ぼくは悪党になりたい」だけど、
「ぼくは…」はそこまで琴線に触れず。ま、それはひとそれぞれということで。


で、週刊文春はこんな感じ。
■ 2004年国内
1 犯人に告ぐ 雫井脩介 双葉社
2 生首に聞いてみろ 法月綸太郎 角川書店
3 暗黒館の殺人 綾辻行人 講談社ノベルス
4 アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎 東京創元社
5 チルドレン 伊坂幸太郎 講談社
6 残虐記 桐野夏生 新潮社
7 幻夜 東野圭吾 集英社
8 THE WRONG GOODBYE
ロング・グッドバイ 矢作俊彦 角川書店
9 修善寺・紅葉の誘拐ライン 若桜木虔 ジョイ・ノベルス
10 紅楼夢の殺人 芦辺拓 文藝春秋
次点 硝子のハンマー 貴志祐介 角川書店
■ 2004年海外
1 ダ・ヴィンチ・コード ダン・ブラウン 角川書店
2 荊の城 サラ・ウォーターズ 創元推理文庫
3 魔術師(イリュージョニスト) ジェフリ・ワイルズ・ディーヴァー 文藝春秋
4 犬は勘定に入れません
あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 コニ・ウィリス 早川書房
5 奇術師 クリストファー・プリースト ハヤカワ文庫
5 誰でもない男の裁判 A.H.Z.カー 晶文社
7 蛇の形 ミネット・ウォルターズ 創元推理文庫
8 ダンテ・クラブ マシュー・パール 新潮社
9 イデアの洞窟 ホセ・カルロス・ソモサ 文藝春秋
10 赤い霧 ポール・アルテ ハヤカワ・ポケット・ミステリ
次点 ダーク・レディ リチャード・ノース・パターソン 新潮文庫


こちらも国内は「犯人に告ぐ」「残虐記」「幻夜」のみ。
犯人に告ぐ」は前述の通り。「残虐記」は、僕にはいまいち伝わってこなかった。
幻夜」は昨年末に読んだような…
ことしの分に入れるなら、確かに僕もベスト10候補。
しかし名作「白夜行 (集英社文庫)」と比べると、弱冠落ちる感じもするから、微妙かも。


海外編になると、半分がた読んでた。
ダ・ヴィンチ・コード」は確かに出版界の〝事件〟だし、
ものすごく面白かったし、読みやすかったけど、
前述の通り、余韻まで含めると、意外と印象薄かったのも確か。
それはディーヴァーの「魔術師−イリュージョニスト−」にも同じ。
「荊の城」のサラ・ウォーターズは、昨年も好評を博した「半身」がちょっと性に合わず、敬遠。
やっぱり、読んだ方がいいんだろうか…
犬は勘定に入れません…」とか、「イデアの洞窟」とか、けっこう読むのに苦労する作品も目立つ。
まあその分、読んだ後の満足感ってやつもあるんだろうけど。


「このミステリーがすごい」だと、こうなる。
■ 国内編
1 生首に聞いてみろ 法月綸太郎
2 アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎
3 天城一の密室犯罪学教程 天城一
4 THE WRONG GOODBYE 矢作俊彦
5 銀輪の覇者 斉藤純
6 硝子のハンマー 貴志祐介
7 暗黒館の殺人 綾辻行人
8 犯人に告ぐ 雫井脩介
9 臨場 横山秀夫
10 紅楼夢の殺人

■海外編
1 荊の城 サラ・ウォーターズ
2 魔術師(イリュージョニスト) ジェフリー・ディーヴァー
3 ワイオミングの惨劇 トレヴェニアン
4 ダ・ヴィンチ・コード ダン・ブラウン
4 ファイナル・カントリー ジェイムズ・クライムリ
6 誰でもない男の裁判 A・H・Z・カ−
7 ダーク・レデイ リチャード・ノース・パタースン
8 蛇の形 ミネット・ウォルターズ
9 犬は勘定にいれません コニー・ウィリス
10 奇術師 クリストファー・プリースト


こちらも国内編は「犯人に告ぐ」と「臨場」のみ。
上位ランクインが目立つ本格ミステリーっぽいのは苦手なので、あまり語ることなし。
伊坂幸太郎は、「重力ピエロ」のオビコピー、「小説まだまだいけるじゃん」が嫌いで、
読まないでいたら、どんどん作品が刊行されていく。完全に乗り遅れた。
かといって、なかなかきっかけも見つからないので、そのままにしてる。
来年になったら、何か読んでみようかな、と適当にまとめておく。


海外編はきゃあ、「荊の城」。ううん、やっぱり…
「ワイオミングの惨劇」トレヴェニアンも「夢果つる街」がいまいち苦手だったので読まず。
「ダーク・レディ」の7位がちょっと意外。
悪くなかったけど、この作家にしては…、の感は強かったからなぁ。
しかし、国内編はほとんど「週刊文春」と変わらない。
何年か前にも話題になってたけど、脱「権威主義」を謳ってスタートした
「このミステリーがすごい」もすっかり権威化してしまって、
何となく独自性が見えなくなってるのかも。


しかし、こうして眺めると、異彩を放つのがやっぱり「本の雑誌」。
ある意味、編集部の極私的ランキングをそのまま適当に並べた、って感じだから、
独自性には満ちあふれている。
もちろん、究極の本読みたちのまとめたランクだから、水準は非常に高い。
ただ、「文春」、「このミス」のような普遍性のあるランキングもやはり欲しいのは確か。
人気投票と、専門家の目。どちらがいいのか、どんな話題でもそうだが、ホント難しい。


ま、でも、自分にとって何が楽しいか、というのは別。
ランキングは、見逃した傑作を見つけるのには大事だけど、
それにとらわれる必要は全然ない。
とはいっても、自分の愛する作品が1位になると、うれしいのも確かだし。
なんて書いていると、またまとまらなくなる。
困ったものだ、って、このブログでずっと書き続けてる結論に、また行き着いてしまった。
あーあ、困ったモンだ。あ、また同じこと繰り返してしまった…