有楽町は日劇で「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」

主役はこのヒトじゃありません



ウェブで初めて予告観た時は、期待値いきなり〝超高値〟だった。
重厚なモノクローム画面の中には、懐かしいデザインのメカたち。
ビジュアルだけでもしびれるのに、
キャストに名を連ねるのはジュード・ロウ、そしてアンジェリーナ・ジョリー
グウィネス・パルトロウがナンかなぁ、と思ったけど、
魅力あふれる材料にあふれてることには間違いなかった。


しかし、その後の事前情報は、ネガティブなものばかりだった。
アンジーの出番は10分くらい、だとか、
日本版ポスターのダサさ、とか。完全に万人向けのB級映画、の感覚。
アンジーなんて、向こうのポスター主役級の扱いなのに、
おいしいトコ取りの特別出演なんだもの。あれはないよ、ホント。


で、そんなわけで、実際観に行く時の期待値は「あんまり…」。
「とりあえず、抑えておくか」まではいかないけど、過剰な期待は禁物、みたいな。
しかし、だった。冒頭、モノクローム場面に浮かび上がるヒンデンブルク号
そして、空を埋め尽くすロボット軍団といったあたりは、かなりくる。
ああ、このオールドファッションなテイスト。しびれるかも。


だが、そんな陶酔感をそぐのが、グウィネスのにぶい動き。
アクションすんなよ、このお気取りオンナ、なんてひどいこといいたくなる。
オールドファッションには向いてる人材だと思うけど、
やり手のジャーナリスト役ってのは、どうかね。
野望に燃える、ってトコは、ゴシップニュースで伝え聞くイメージそのままだけど。


そうかと思うと、ジュード・ロウはやっぱりいいのだ。
この人はやっぱり、こういう役やらせると風格がある。
というか、やっぱりこの人は遅れてきた〝スター〟だな、と思う。
端正な顔立ち(巨顔だけどね)、エレガントな風格、そして演技力。
違う時代に生まれていれば、もっと適役に恵まれていたろうけど、
いまの時代には、まっとうすぎて、はまる役が少ない。
だけど、この〝スカイキャプテン〟はけっこうハマリ役。
正統派冒険活劇のスター、って感じで、いい味わいを醸し出してる。


カニック担当のジョバンニ・リビシもいい。
昔ながらの定番役を喜々として演じてるのが伝わってくる。
昔の「宇宙家族ロビンソン」に出てきそうな光線銃とか、
うれしそうに構えてるのを見ると、こっちまでニヤリとしてしまう。
その上、故サー・ローレンス・オリヴィエも出ちゃったりしてる。
いいの、これ? 遺族の了解は得てるらしいけど。


出番の少ないアンジーも、おいしいトコはばっちり奪っていく。
カッコよすぎ。確かにこのキャラがずっと出てたら、
スカイキャプテンの存在がかなりかすむかも。
もしかして、スピンオフに備えて、露出を抑えたの?


しかし、肝心のビジュアルの方は、
時間が経つにつれて微妙に輝きを失っていったりする。
ブルースクリーンに、手書き風CGアニメって感じが、
僕の好みではないだけだったりするけど、何か安いのだ、微妙に。
平たく言うと、飽きるって言うのだろか。難しいな。


じゃあ、ダメかというと、ストーリーはそこそこ持ち直す。
序盤のもたつきを乗り越え、グウィネスはそこそこいい味出してくるし、
ジュード・ロウの減らずグチも、いい感じにはまる。
で、よし、と思い始めると、
かつての名作たちへのオマージュがやり過ぎで、また醒めたりする。
スターウォーズ」とか、「マトリックス」とか、やりすぎはダメよ。
わかる人にだけわかるように、そうっと散りばめるのが粋なのに。


こうつらつらと書いてるときりがないんで、このくらいにしとくが、
こんな感じで終始評価が揺れ動く映画観賞になってしまった。
面白い点も多々あったけど、
途中眠くなるほど退屈なシーンもいくつかあったし、滑ったギャグもちらほら。
ビジュアルは前述の通り、奇抜だけど、最後まで保たせるだけのインパクトには欠ける。
じゃあ、駄作か、というと、それなりには面白い。
ううむ、どっちなんだよ、と悩む作品ではあったかな。
結局、結論はお好きなヒトは、どうぞ、だったりする。
ああ、平凡。こういう工夫のないレビューこそ、
批判の対象だな、と自分で突っ込んでみる。
あーあ、また独り相撲。もう11月も終わるのに、困ったモンで…