日曜書評、気になった本

たぶん、買わないでしょう…


現在アニー・プルーオールド・エース」に夢中、になりつつも、
脳細胞が活字渇望モードに入っていないので、進行はやや遅め。
でも、それに構わず、日曜のお楽しみ、書評欄をのぞく。
きょうは定番の朝日と日経。
もちろん、目的は朝日・三浦しをんと、日経・川上弘美の連載だけど。


まずは日経、本は先日読んだ「ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)」が出てたけど、
本そのものではあまり目立ったものなし。
文化部の記者のコラムで大型書店の出店ラッシュに対し、懸念をあらわにしている。
最初に出てくるのが、丸の内の丸善と、新宿のジュンク堂
「本好きから評価されている」と紹介する神田の東京堂とか、神保町の書泉と対比する形で、
まるで本好きの敵のごとく、「メガ書店」を言外に否定している。


伝わってくるのは、この人、自分で本屋に行って本を買う人じゃないのだろうな、ということだ。
日経の読書欄担当なら、黙っていても出版社からどんどん本が送られてくるはずだ。
実際に書店に足を運んで、本を選ぶという作業は必要がないのだろう。


確かに、紀伊国屋はより普遍性に重きを置いた書店ではあるけど、
少なくとも、ジュンク堂は本当の〝本好き〝が足を運びたくなる本屋のひとつだ。
それを〝店舗が大きい〟と十把ひとからげに「メガ書店」として攻撃する。
このセンス、まさにおエライ新聞記者さま、って感じでかなり感じ悪い。


コラム中には「町の書店」の苦しい経営状況などにも触れられているが、
こちらはあまりほかの内容とリンクしない、ちょっと蛇足の部分にも感じた。
たぶん、日販かトーハンのデータとか、人づてで聞いた話を紹介しただけなんだろう。
「町の書店」の苦戦ぶりに心を痛めている、
〝視野の広い自分〟を演じるだめのテクニックにしか感じられない。
少なくとも、もっと実際の書店に足を運んでから、こういうことは書いてね、と思ってしまった。


しかし、コラムとはともかく、堀江敏幸のクローズアップは面白かった。
川端康成文学賞を受賞した「雪沼とその周辺」収録の「スタンス・ドット」は、
僕も大好きな小説のひとつ。
さびれたボウリング場を舞台にした、何ともいえない味わいの小説が、
文芸誌の新年号向けに「正月といえばスポーツ」という軽いノリで
書かれたものであった、と紹介されている。ふむふむ、だった。

雪沼とその周辺

雪沼とその周辺

あとは川上弘美のコラム。
誰にでもいくつも名前がある、をテーマに、かつての恋人たちに、
人によって「ひろみ」とか「ヒロリン」だとか呼ばれた話が紹介されている。
しかし、恋多き人だな、と感心していると、
大手町の地下道で、
取引先の人に対し「ワタクシ」と話していたくたびれたサラリーマンが、
その後携帯で「おれ」に切り替わった瞬間、ちょっと恋してしまった話を披露する。
この、〝一人称の切り替わり〟もすごく興味深いテーマだが、
この川上弘美の〝ほれっぽさ〟も興味深い。
つくづく、おもしろい作家さんだな、とまたもや感心してしまった。


朝日は渡部千春著「これ、誰がデザインしたの?」が気になった。
カールやヤクルトなど定番商品の、デザインの秘密に迫っているとか。
定価2000円だから、写真多そうだし、面白そう。買いたい本リストに追加。
ただ、書評子は「百貨店の包装紙」に伊勢丹がない、と書き加えている。
ぼくも気になるな。確かに全国区じゃないけど、伊勢丹抜きはやっぱり問題では。

これ、誰がデザインしたの?

これ、誰がデザインしたの?

三浦しをんのコラム「三四郎はそれから門を出た」では、
イジマカオル「最後に見た風景」を紹介している。
冨永愛中島美嘉夏木マリ小池栄子・UA・長谷川京子
11人の女優が自分の「死にざま」を表現してみた写真集。
面白そうな題材だが、女優のチョイスが甘くないだろか?
僕的には、3150円出して買いたい顔触れじゃないな。
女優ですらない人まで混ざってるし。
もう少し、女優のチョイスが洗練されていれば、買うかも。


一方で、自分の死にざま、どう表現したいかを考える。
あくまで、いまの年齢で、ということになるだろうけど、
それならやっぱり、たんぽぽとか咲いている一面の野原、とかがいいかな。
できれば、たくさんのにゃんこに囲まれて。いや、何となくだけど。
考え始めると、意外と深いテーマかも知れない。
泥沼に入り込む前に、サラッと思考を停止する。
こういうテキトーな人間には、粋な〝死にざま〟はあんまり必要ないかも。