渋谷シネマライズ「恋の門」

松田龍平、いい味出してる



映画の予告で初めて知ったこの作品。原作はかなり面白かった。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20040815
で、監督の松尾スズキって、よく名前は見てたけど、実際何の人かは知らなかった。
そうなのか、こういう人だったのか、とまずは感心。


映画のあらましは、前回ブログのをそのまんま使う。手抜き…
男の名は蒼木門。石を使って表現する自称・漫画芸術家。
もちろん貧乏まるだし。自分勝手。
女の名は証恋乃。一生コスプレ宣言のOL。
親の代から、筋金入りのオタク。けっこう打算的。
二人は出逢い、恋に落ちる。だが、前途には、常に障害がつきまとう。
恋の門」は、開けるのか。恋の、そして漫画のバトルが幕を開く。


松田龍平が門、酒井若菜が恋乃を演じているのだが、
これがかなりいい。想像以上の当たり役といっていい。
僕の想像力が、足りなかっただけかもしれないけど。


まずは松田龍平。門の身勝手な感じが、にじみ出ている。
目つきはいつもの拗ねた目つきなんだが、バカを喜々として演じているところがいい。
いままでのスカしたイメージが、うまく中和されている。
出演作を全部観ていないので、恐縮ではあるが、
僕の見る限りでは、一皮むけたな、というのが一番の印象だった。


そして酒井若菜。すごく厳密な意味で、〝いい演技〟だったか、といわれると、
留保をつけざるを得ないけど、雰囲気はすごく出ていたと思う。
何より、恋乃の魅力的なキャラクター性が、うまく表現されていた。
漫画そのもののキャラクターの恋乃が引き立つ一方で、
生きている女性としての、みっともないまでのリアルさも醸し出されてた。
巨乳グラビアアイドル、としてはちょっと旬を過ぎた印象があるけど、
意外とこの世界で長生きするのかも知れない。


映画の出来としても悪くなかった、と思う。
全5巻のボリュームを、うまいこと2時間弱にまとめ上げてたし、
笑えるシーンも、かなりあった。


ただ、気になった点が2つ。
まずは、漫画的表現にこだわり過ぎてるかな、という点。
原作が漫画だから、別にいいのかな、とは思うのだが、
あんまり漫画チックな画像が使われていると、違和感も感じる。
先日の「オーバードライヴ」もそうだし、「下妻物語」でも思ったことだ。
アニメーションを交えたり、漫画みたいな背景をつけたり。
見た目も派手だし、楽しいのは確かなのだが、どこか安易に感じる。楽してるな、と。
映画としての表現力の不足を、派手な画像効果で補っている感はぬぐえなかった。


もう1点がタイトルにも挙げた豪華キャスト。
これも楽しいのは確かなんだが、やはりそれに大きく頼るのはいただけない。
ロバート・アルトマンの作品なんかも確かに好きだが、
豪華キャストの方にばかり目が向くと、どうしてもストーリーの印象が散漫になる。
この前は「花とアリス」でもそう思った。
広末涼子だとか、阿部寛だとか、どう考えても蛇足でしかなかった。
この映画、メインキャストだけでも、
平泉成大竹しのぶ小島聖忌野清志郎あたりが怪演を見せまくってるのに、
さらに松尾スズキの「大人計画」の役者や、
市川染五郎田辺誠一尾美としのり三輪ひとみ三池崇史
コミケのシーンにはしりあがり寿内田春菊山本直樹安野モヨコ
こうなってくると、豪華なカメオ出演も、どこか人脈自慢のようで鼻についてくる。


豪華キャスト、派手なエフェクト。
映画の本筋部分が、なかなかの出来だっただけに、
余分な厚化粧の感は否めない。
初監督作品としてのこだわりが、そうさせたんだろうか。
素人ふぜいが、えらそうにいうのもなんだが、かえって裏目だったと思う。
もったいないなぁ…。観終わっての感想は正直、そんな感じだった。