読書に最適「三都物語」

東京、千葉、埼玉。「三都物語」の一日。
こう書くと、なかなか風情が…。いや、ちっともうれしくない。
というか、映画との共通項、かなり強引かも知れない。反省。
しかし、電車も長い時間乗ってると、本を読んだり、眠ったり、
それなりに有意義な時間が使えたりする。あくまで空いてる時に限るけど。


というわけで、本は2冊読めた。うれしい♪
簡単に喜ぶ自分の単純さには、われながら、あきれてしまうが、許してくれ。
紫紺のつばめ―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
まずは、読みかけだった宇江佐真理、髪結い伊三次捕物余話の第2弾「紫紺のつばめ」。
廻り髪結いのかたわら、同心の手下でもある伊達男、伊三次を描いた連作シリーズだ。
今回は恋人の深川芸者、お文との間に生じた亀裂が、テーマにもなっている。
芸者の粋を保つために、以前から言い寄ってきていた旦那に、
家の改築や、衣装代の世話になることにしたお文。
だが、伊三次の男の意地は、それを許せない。
ある殺人事件をめぐっては、下手人の疑いをかけられる伊三次、
お文との、揺れる関係が、時系列に沿って、語られていく。


感情の擦れ違いの原因は、そのもの「お金」だ。男の甲斐性、というやつ。
そんなもので男の価値は決まらない。もちろん、正論だ。
じゃ、同じくらいの男っぷりなら、お金ある方がいいじゃん、というのも正論だ。
「じゃん」じゃねえよ、とは、いま書きながら思った。
いや、お金に振り回されたら意味ないが、
お金なんて、あったら有効に使えばいいだけだ。
別に全部使わなくていい。でも、あればあるだけ選択肢が増える。
食事でいえば、お金がなければ牛丼(いまは豚丼ね)しか食べられない。
それはそれで、価値あるものだし、おいしい♪けど、
お金があったら、時には最高級フレンチ、時には豚丼、時にはお寿司、時には場末の焼き鳥…
それぞれの意味とか、価値がわかっていれば、こんなに楽しいことはない。
だから、お金で価値は決まらない、というのは、ある一面で正しいが、
ある一面では、正しくなかったりする、と思ってる。あくまで持論。


ま、それはともかく、お文はあくまで、好いたどうこうで、援助を受けるわけではないのだが、
伊三次にしてみれば、屈辱であり、敗北感を味わわされる出来事だ。
もともと、裕福なわけではない。
その上、前作では店を構えるための資金を根こそぎ泥棒されている。
芸者の間夫、として揶揄されるのがいやなわけではない。
でも、伊三次の意地が、それをどうしても受け入れられないのだ。


もちろん、意地張っておしまい、というわけではない。
再び、三たびの事件が起こっていく中で、二人の仲が再生していく。
その過程は、ほろ苦かったり、切なかったり、むむむと考えさせられたり。
以前も書いたが、江戸時代、という設定のもとでこその価値観に浸り、泣かされる。
面白かった、と思いつつ、本を閉じた。