本日のご本はトニー・ウォルターズの「よろこびのレッスン (ハヤカワ・ノヴェルス)」

よろこびのレッスン (ハヤカワ・ノヴェルス)
フランス書院文庫じゃないけど(笑)、内容はだいたいご想像の通り。


少年の頃の事故で、いとこ、そして親友のピーディを失ったバーデンは、緩やかな自殺志願。
死ぬ勇気もないので、人妻を間男し、それを発見され、
怒りに打ち震えるダンナに殺されるべく、人妻あさりを続ける。
何だよ、これ、と思いつつ、あまりに馬鹿馬鹿しいんで、読んでみた。
いや、もちろん興味があるんだけど(笑)


バーデンは、殺されるためにわざわざ町の人妻リストを作製する。するなよ…
年齢、ダンナの職業、ダンナが激高しやすいタイプか、などなど。
じゃあ、その優先順位に基づいて、誘惑するかというと、けっこう関係なくふらふらと。
まあ、若いオトコはこんなもんだろ、というとほほ加減はけっこう笑える。


だが、このバーデン、ピーディへの後ろめたさが捨てきれないので、
いまいち官能におぼれきらない。むしろ、醒めた感じだったりする。
やな奴。って、心の傷が癒えてないんだった。ごめん、ごめん、忘れてた。
しかし、やっぱり楽しいことすんだから、楽しくやれよ、とは思う。
あんまり理由つけて、ぐだぐだいうんだったら、
最初からこういう手段を取ること自体、100%間違ってるんだから。


恋人のジョー(ちゃんと、女のコ。誤解なく)ですら、
自殺志願のバーデンとしては、大事にしてはいられない。
死ぬ勇気がなくなるから、とのとこ。わからないでもないけどね。
だから、煮え切らない態度をとり続け、気まずくなる。
ああ、ホントに鬱陶しいオトコだ。
いつまででも、勝手に「傷ついた僕」でも演じてな、と冷たい気持ちを持ってしまうが、
まあ、その傷が癒えていく過程と、ピーディへの贖罪がもう一つのテーマでもあるから、
しかたないのかも。でも、その描写の方は、いまいち平凡。
読んでて、乗り切れないな、と思うのはそこらへんが原因だったかも知れない。


印象的なのは、誘惑されちゃった、奥さまたちだ。
単に「お好き」なのもあるんだろうが、
身勝手なバーデンを包み込む(ヘンな想像はしないでね)優しさには、ちょいとほろり。
しかし、そのシーンの描写のヘンなリアルさは、かえって笑ってしまう。
この作家、実体験もとに書いてるんじゃないの? なんて。
そんなわけで、切ないけど笑える、贖罪の官能ロマンス、というワケのわからないこの小説。
ぜひ、そのうちお読みになることを勧めるが、あくまで、文庫になってから、で。


そうそう、オビに「ミラマックスで映画化」とあったので、
とりあえずIMDBで調べてみた。
http://us.imdb.com/
監督はCatherine Hardwicke。知らない。
プロダクション・デザイナーで、監督は初みたい。まさに未知数。
出演は、プロデューサーも兼ねたアーロン・エッカートしか、まだクレジットされてない。
「コア」(主役)とか、「ペイチェック」の俳優。
好きな俳優だけど、まあ主役は年齢的に無理だから、寝取られオトコ役かな?
それはそれで面白そうだ。
関係ないが、寝取られオトコといえば、一時期ビル・プルマンが得意としてた。
「ジャック・サマーズビー」とか「めぐり逢えたら」とか…
プロデューサーを兼ねてまで、やる役なのか、とも思うが、
プルマンだってその後、大統領(「ID4」)にまで出世したからな、いいのかも。