素材だけでは映画にならない
ユナイテッドシネマズとしまえんで、早起き映画劇場「テイキング・ライブス」。
「早起きは三文の得」なんて、誰が言ったんだ、
って、八つ当たりしちゃいけないんだが、ちょっとそんな気分。
豪華なキャストに騙されてはいけない。
もう何度も思い知らされていたことを、またも頭にたたき込まれた。
しかし、期待するのも無理はない、はずだと思う。
だって、アンジェリーナ・ジョリー、イーサン・ホーク、キーファー・サザーランド、
ジャン=ユーグ・アングラード、チェッキー・カリョ、そしてジーナ・ローランズ。
プロットだって、悪くないはずだ。
〝テイキング・ライブス〟被害者の人生乗っ取りを繰り返すシリアル・キラーと、
それを追う、プロファイリングの天才捜査官の、戦いを描いたサイコ・スリラー。
舞台となったモントリオールの雰囲気だって、すごくいい。
しかし、このテの映画に不可欠な、
サスペンスフルな展開、ゾッとする恐怖が感じられない。
豪華キャストの存在感こそあるものの、ワクワク、ドキドキがまーったくないのだ。
料理に喩えれば、豪華素材を切って並べただけ。味のハーモニーとか、スパイスはなし。
料理として体裁を整えただけのレベルで終わってしまった、不完全な一皿だ。
一番の欠点は、スリラーなのに先々までストーリーが読めてしまう脚本にあると思う。
ああ、こういう展開になって、この人が犯人で、
こういうどんでん返し(っぽいのが)があって…
僕は比較的簡単にだまされるタイプだし、
雰囲気がいい映画なら、喜んで騙されモードに入るタイプだが、
このひねりのなさでは、いくらなんでも無理。
監督はD.J.カルーソ。もともとはプロデューサー畑の人みたい。
ジェニー・デップの「ニック・オブ・タイム」とか面白かったけど、
あくまで製作じゃ、関係ないしな。
脚本はジョン・ボーケンキャンプ。映画は初脚本らしい。
だからだろうか、ホントにストーリーを追うだけの筋立てになっている。
「おいおい」と言いたくなるような無理やりの力技も気になる。
ネタバレにならないよう、極力気をつけて書くが、
冒頭、この犯人が最初の殺人を犯し、他人になりすます場面が描かれる。
しかし、これだと、犯人が死んだ、という〝既成事実〟が作られる根拠がかなり難しい。
この力技が終始、映画世界に入っていけない「おいおい」ムードを醸し出す。
あとはアンジェリーナ・ジョリーのキャラクターに魅力がない。
プロファイリングとか持ち出さず、普通の捜査官にしとけばよかったものを、
ヘンに天才捜査官みたいにしてしまうから、人物造型が中途半端になる。
スーパーマンでなく、普通の人間としての捜査官にしとけばよかったのに。
というか、アンジェリーナ・ジョリーの配役自体、合ってないのかな。
個人的には「ボーン・コレクター」でも、思ったことだが、
アンジー=刑事はあまり、相性よくないんじゃないの?
原作での魅力が全然感じられなかったし。
じゃあ、誰がやるの、といわれるととっさに思いつかないので、
申し訳ない限りだが、ファムケ・ヤンセンとかどう? 色っぽすぎ?
蛇足だが、FBIの捜査官がカナダにまで出張って応援に行くっていうのは、
ホントにあるんだろうか? これもやや疑問。どなたかご存じないかしら…
いちゃもんばっかりつけてしまったが、
豪華素材に期待を膨らましすぎた自分も悪かったのかな…
次は、地味な素材をていねいに作った、こころの一皿、みたいな映画を観に行こうっと。
候補? 「CODE46」。全然地味じゃないな、
じゃ「フォッグ・オブ・ウォー」か「愛の落日」。
こういう時、公開映画盛りだくさんの週は困らない。
メニューがたくさん♪ 選択肢が多い、ってホント幸せだ。