表も裏も、楽じゃない

比較的読みやすい一冊ですな…

みんなのおしごとシリーズ第2弾。
草下シンヤ「裏のハローワーク」 。ISBN:4883924335
本屋さんで「世にも奇妙な職業案内」ISBN:4860200942
と一緒に購入したんだが、ようやく読み終えた。
まずはざっと職業を一覧。

ちなみに買った本は第6刷。
新聞拡張員の「女性の家に上がり込んで、××しちゃう」と
「空き巣する拡張員も…」という部分に、
事実無根との抗議があったとの記述とともにお詫びが添えてある。
その割に本文直ってないのが、なかなか微妙な気もするが…
まあ、オビには「裏の職安にようこそ!」。そしてこのラインナップ。
一部の方が、抗議する気持ちも分からないではない。「一緒にするな」と。


インタビュー中心の構成、それも取材対象は各職業1人。
裏稼業の人を捕まえる苦労を考えれば、仕方ないんだが、
その分情報が偏っている部分もあるんだとは予想できる。
しかし、それをさて置いても、なかなか興味深い本だ。


「マグロ漁船」と「臓器売買」は、いずれも借金がらみで、
脅しの言葉に使われる、と思われている代表的なフレーズだろう。
実際はどうなんだか分からないが、よく小説とかマンガでは使ってる。
マグロ漁船は確か昔、北杜夫が「どくとるマンボウ漂流記」かなんかで乗ってた気がする。
マグロ食べ放題、大トロ、中トロ、赤身、何でも食べ放題。
というか、ひたすらマグロ。それは、かなりイヤかも知れない。
1年で600万、使うアテがないから、ほとんど全部残るとか。
そう聞くと、切羽詰まった時の手段としては悪くないのかも。
実際、借金のカタに、というのは少ないみたいだが。


治験バイトの話は、よく耳にはする。
これも実際のところはよく分からないが、
どのくらい危険な薬を飲まされるのか考えると、ブキミかも知れない。
何しろ、報酬の高さがイコール危険度の高さ、といっても差し支えないだろうから。
これまた、よほど食い詰めないと、やろうとは思わない。


飛田の遊女、というのは初めて知った。
いわゆる昔の赤線、というのと同じなんだろうが、強烈だ。
ほかの風俗はよく知らないが、これを読む限り、趣もへったくれもない。
ただただ行為、最短15分。時間あたりいくら、というシステムだそうだ。
以前、菜摘ひかるの「依存姫」というのを読んだ時も依存姫
胃のあたりに、かなりズーンと重いモノを感じた。
風俗嬢=「満たされない」という、読者にとって受け入れやすい図式については、
あくまで小説、という娯楽を成立させるための創作もあるとは思うが、
何か人生の深淵を見せられるような、ヘビーなものは伝わってきた。
しかし、この飛田の遊郭には、それ以上にどぎついリアリズムを感じる。
何がリアリズムか、って言われると言葉に詰まるが、
こういうシステムが成立する、その文化的背景には、
ひたすら驚きを感じずにはいられない。
「そんなんで、楽しいの?」と。


しかし、完全な違法商売以外、どれを見てもあんまり割がよくない。
いや、違法のものですら、そこまでぼろい商売とは言い難い。
ある意味「労多くして…」の典型。
なかなか、世の中甘い話は転がっていないものだな、と思い知る。
いまやってる仕事の楽さも、ちょっとありがたく感じたりして…
でも、自分がすんごく困り果てて、選ぶ仕事は何だろう?
示談屋? 口八丁手八丁の商売だな…
それはちょっとはまりすぎの気がして、イヤな気がする。