「4年間」で終わって欲しい

町山智浩「底抜け合衆国―アメリカが最もバカだった4年間」底抜け合衆国―アメリカが最もバカだった4年間
8月23日の日記でも、ちょっと紹介した映画ライターの最新作だ。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20040823


世界にとっての悪夢、ブッシュ当選からの4年間を、
オークランド在住の著者がその時折々につづったコラムが、
時系列に沿ってまとめてある。
もちろん、中心は9/11やイラク戦争
だが、筆者独特の視点と、切り口で、凡百のアメリカ情勢本とはまったく違う、
リアルなアメリカの姿が見えてくる。いや、偏っている面はあるかもしれないが。


アメリカ一下品なラジオDJ、ハワード・スターンや、
http://www.howardstern.com/
ブッシュ批判でつるし上げをくらったディクシー・チックスと、
アメリカにおけるメディア統制。
おとぎの国「ディズニー」を支配する品性下劣オトコ、マイケル・アイズナーと、
アメリカ映画界の内幕。
全米一の注目を集める、スーパーボウルでのオンエアCMから見た、
アメリカ経済の行方。
作られた英雄ジェシカ・リンチに見えるイラク派遣兵士たちの出自と、
アメリカの階層的断絶。
30日間マクドナルドだけで過ごす実験映画「スーパーサイズ・ミー」が暴き出す、
グローバリゼーションと、巨大企業による社会支配。
http://www.supersizeme.com/


もちろん、2次情報も多いんだが、日本の新聞やテレビだって、
ほとんどは米メディアの転電ばっかりなんで、そんなに気にする必要はない。
それでころか、お高くとまった、
もしくは、大衆文化に通じていない、新聞やテレビの特派員では書くことのできない、
アメリカに生活するものの視点から、いまの危険な状況が描かれる。
それが前述した、〝リアルなアメリカの姿〟として浮かび上がる。
とはいいつつも、お笑いの視点を忘れることはないので、楽しく読める一冊でもある。
もちろん、状況のやばさ、を考えると笑ってばかりいられないのが、つらいところだが。


こうした、アメリカの、そして世界の危機的な状況で思い浮かぶのは、
当然マイケル・ムーアの「華氏911」だろう。
映像の力で見せられると、戦慄すら覚えてしまう、リアル・テラーだ。
それは8月17日のレビューでも書いたっけ。
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20040817
この本、その「華氏911」のサブテキストとして考えると、
映画と本で3倍以上、楽しめる。いや、〝楽しく〟はないな…、印象深いモノになる。
むしろ、絶望感にうちひしがれる、かもしれないのだが。


この本のサブタイトルは−アメリカが最もバカだった4年間−
しかし、本当に4年間で終わるのか。
ブッシュはバカでも、
ブッシュを取り巻くコングロマリット陣営の厚顔無恥さは、驚くほどだ。
バカなアメリカは、4年間で終わって欲しい。心から祈りたい。
だが、正念場はこれからなんだろうな、と、
対岸の家事ながら、心配を覚えずにいられない。