このモナリザで、微笑みは…

キャストはすごいのに…

日比谷みゆき座で「モナリザ・スマイル」。
前評判はいまいちだし、このキャストでこの公開規模。
不安をぬぐえず、きょうまで先延ばしにしてきた。


結論からいうと不安的中だが、思ってたほどは悪くない。
あくまで、思ってたほどには、だ。
まあ、これだけ豪華なキャストを使って、できた映画がこれでは、
監督の腕だけでなく、もともとの脚本にも相当の問題があると思うが…


話は単純だ。
時は1950年代。舞台は、東部ニューイングランドの名門女子大学。
超エリートのお嬢さまたちを、〝お嫁さん〟として養成する学校のやり方に、
ジュリア・ロバーツ演じる美術講師ワトスンが、反旗を翻す。
押しつけられた価値観ではない、自分の生き方を見つけて欲しい。
ワトスンは、学校側の方針と対立しつつも、次第に学生の心をつかんでいく。
はい、そうです。皆さんが、何度も観てきたような映画です。


素人のわれわれが考えただけでも、
ふたつみっつは、泣かせるシーンを想定できる、定番のストーリー。
これをどう、いい映画にするかは、もうほとんどが作り手のセンスにかかってくる。
大筋のストーリーを盛り上げるための、
ちょっとしたエピソード、気の利いた状況設定、キャラクターの人物造型…
定番のストーリーには、その工夫にこそ、製作側のやりがいがあるはずなんだが、
あいにく、今回のマイク・ニューウェル監督は、そう感じていなかったようだ。


まず、ジュリア・ロバーツ演じる美術講師に魅力が足りない。
独善的過ぎるのだ。
この映画の設定に置かれた教師が、できること、するべきことの最大公約数は、
−画一的な価値観を植え付けられた学生に、
  様々な視点で世の中を見ることを教える。
−そこから、自分なりの価値観を選択し、見出す能力を育てる。
だと思うのだが、彼女がすることは、〝自分の価値観〟を押しつけることだ。
後半、それに対する疑問符も投げかけられるが、あまり効果的な描写ではない。


第一、教える方も、教わる方も、花嫁さん学校と了解しているトコに出向き、
エキセントリックに「女性の生きる道はそうじゃない!」というのも、どうだろう。
収入を得てくる人間が片方だけ、という結婚の形において、
選択や希望の入る余地なく、女性が主婦(主夫)を押しつけられる、
という風潮は間違っているが、
主婦(主夫)そのものの否定に結びつくような描写は不愉快の限りだ。


冒頭ワトスン講師は「ここで教鞭を取るのが夢だった」と話す。
こちらとしては、「何で?」としか思えないのだ。
何がしたくて、この学校に来たのか。
世界を変えたいのか? そうでもないらしい。
動機が見えてこないから、実際学生をどう変えたいのか、もよく見えない。


弁護士の夫と学生結婚し、良妻賢母の道に邁進する、
ベティを演じるのはキルステン・ダンスト
これが、ジュリアのライバル的存在として、いちいち突っかかってくるのだが、
意外に的を射た意見が多く、むしろジュリアが間違っている、とも思えてくる。
それでも、ベティの家庭が不安定になると、コロリと意見が変わる。
何だ、相手の身になって考えてないだけじゃない。
周囲に色々、つまらない意地悪をしまくるし…


結婚を目前にしながら、イエールのロースクール進学にも気持ちが揺れる、
ジョーンを演じるのは、ジュリア・スタイルズ
こちらは、いまいち人柄が見えてこない。
だから、何でジュリアを慕うのか、よくわからない。


欠点の羅列が、少々じゃなく長くなってしまったので、本題に戻る。
これだけ、けなした映画のどこが「意外と悪くない」のか。
それが、奔放な恋多きジゼルを演じるマギー・ギレンホールの存在だ。

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「セクレタリー」で、ジェームズ・スペイダーと、
倒錯の愛におぼれる自傷癖のある秘書を演じた、あの女優だ。
弟は「ドニー・ダーコ」「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホール
このジゼルがいい。
元恋人の講師を、ジュリアに寝取られたり、
キルステン=ベティにオトコ癖をなじられたり…
もう、つらい目には事欠かないのだが、その、にじみ出るような愛情が、
この映画に唯一、オリジナルな優しさを味付けしていた。


もちろん、ほかの数多くの欠点を、覆い隠すほどではない。
だが、哀しみに明け暮れ、ジゼルをなじり続けるベティを、
しっかりと抱き締めるシーンには、思わず涙がこぼれた。
映画のテーマからは外れるが、いいシーンだったと思う。
以上、これが〝意外と悪くない〟の秘密。秘密でも何でもないが。


この夏、観るべきか?と聞かれたら、
「先に観る映画は間違いなく5、6本ある」と言わざるを得ないだろうな。
マイク・ニューウェル、もう気持ちは「ハリー・ポッター」最新作に向かってしまったのか?
フォー・ウェディング」とか、いい映画だったのに…
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蛇足だが、戸田奈津子さん。
ロースクールは「法学部」じゃなく、「法科の大学院」。
それに、ロースクールは訳さない方がかえって、自然でしょ。
ほかにも「あれ?」が相変わらずだくさん。
どんなにバッシング受けても、まだ誤訳が治らない。
分からないのは、〝いま〟の英語だけかと思ったら、50年代でもこれじゃ…
もう、いいかげん、やめたら?


そんなことはともかく、予告はまず「ガーフィールド」。
何も実写で作らなくても…
いや、全然かわいくない。
それ通り越してブスかわいい、ともいえなくもないが。
オーディも全然原作に似てない、って言うかただの普通の犬。
ガーフィールドも、ストーリーつけると、
あのだらしなさが何か曖昧になりそうで不安。
しかし「スクービー・ドゥー」の例もあるし、観てみないことには…


ヴァン・ヘルシング」がようやく公開近づいた。
ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンゼールに、
監督が「ハムナプトラ」のスティーヴン・ソマーズ
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僕的には、すんごく期待度高い。高すぎて、かえって不安。
でも、ヒューヒューは「ソードフィッシュ」以来ハズシがないから、
大丈夫と信じよう。
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しかし、41カ国同時ナンバー1はいいけど、
日本も同時公開してくれよ。プロモーション上の事情はわかるけど…


市川拓司の傑作「いま、会いにゆきます」もティーザー予告。
いま、会いにゆきます
母親役の竹内結子もいまいち年齢的に微妙だし、
父親役の中村獅童はキャスティングの意図がつかめない。
何かなぁ、すごくいい小説なんだから、
地味でもいいから、ちゃんとしたキャストでやって欲しい。
こういう安直なやり方、原作を貶めるだけなのに…