骨太そのもの「13階段」

本は、講談社で文庫化された、江戸川乱歩賞受賞作「13階段」。
13階段
文庫判ISBN:406274838X
高野和明は、最新作「幽霊人命救助隊」ISBN:4163228403 を読んで、
ちょっと不満が残っていた。いや、面白いんだが、何か物足りないのだ。
たぶん、コメディ・タッチで描いているのに、
そのタッチと相性が悪かったからなのか、
全体の論調が、けっこう説教くさかったからなのか…


だが、この「13階段」は違う。
タイトルが示す通り、死刑を題材に扱った作品だ。
登場人物は、
無実の罪で、死刑執行を待つばかりの樹原亮、
傷害致死による服役を終えた三上純一
死刑制度の是非で、悩みを抱える刑務官、南郷正二。
三上と南郷は、樹原の冤罪を証明すべく、
10年前の事件の謎に挑む。


作品の中には、つねに死刑という問題がちらつく。
だが、たぶん取材も相当綿密だったんだろう。
死刑そのものの説明が、正確で、フェアな立場から語られるため、
小説のテンポや、醍醐味を削いでしまうようなことがない。
これ、相当難しいことだと思う。
ふつう、これだけ重い問題をテーマに使うと、
中途半端に著者の思想が反映し、
ストーリーが読者の興味とは違う次元に走ってしまうことも多々ある。
そのバランスを保つことができたのは、この小説の成功の秘訣だろう。


こんな、骨太の小説を書く人と思っていなかったので、
高野和明を大きく見直す。って、1冊読んで、勝手に低く評価していただけだが。
しかし「グレイヴディッガー」ISBN:4062113562ージだからな。
こちらも、ちょっと手を出しそびれてきてる。どうしようか…